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LINEの生活#29 手記

ボスの生活を、どれだけ呪ったか...
誰にもこの苦しみを言えない。だからせめて、ここに書き残しておこうと思う。私の文字生の全てを。

ある日、私が昼食を食べている時。「守」の文字(のちの私の家来)が、ゾロゾロと私の方へやってきた。私は焦っていた。誰だこの文字は?なぜ私に寄ってきた?
焦りながらも、私は椅子から立ち上がり、「守」の文字と距離をとった。だが、「守」の文字は足が早く、すぐに私に追いついた。
「な、なんなんだよ!?」すると、「守」の文字が私の腕を空に掲げて言った。
『お』、あなたは『ボス』の血を引いている。先ほど、十二代目の『ボス』がお亡くなりになった。なので、今すぐ屋敷に来て、十三代目の『ボス』となるための儀式を初めてくれないか?儀式のやり方、『ボス』の仕事の内容は、儀式の前に話す
「は?...儀式?『ボス』?なんの話だ?」
何がなんだかわからなかった。そうやって私が戸惑っていると、周りから大きな歓声が聞こえた。
わああああああああああああああ!!
「おめでとうございます!!」
「『ボス』、この世界を頼みます!!」
悪い気分ではなかった。なのでつい、
ワ、ワッハッハ!
と偉そうに笑ってしまった。すると、またもや歓声が。
わああああああああああああああ!!
自然と笑みが溢れた。

屋敷に着くと、私はエレベーターに乗せられ、七十階へ上がった。エレベーターのすぐ横に、私の部屋はあった。とても豪華な場所だった。
壁一面に並ぶ本棚。
偉い文字が座るような、フカフカの椅子。
応接間のように、きちんと並べられたソファ。
「おお...」
と、思わず簡単の声をあげた。
「で?『ボス』の儀式とは?仕事はなんですか?」
私はもう、『ボス』になる気満々だ。なので、調子に乗って、軽々しく聞いてしまった。
「それは、『ボス』担ってくださるということで間違い無いですか?」
「守」の文字の言葉遣いが急に良くなったのは少し戸惑ったが、
「はい!なんでもやります!仕事を教えてください!」
一斉処刑をしてもらいます
「え?」

仕方がなかったのだ。私は十二代目の『ボス』世代の文字を殺し、長生きすれば、十三代目世代の文字も殺さなければいけない...
一線を超えてしまった...
私は無知だった...
この世界のことも、
「ボス」のことも、
何も知らなかったのだ...
言葉というものは恐ろしい。うっかり発してしまった言葉で、ここまで苦しむことになるとは...

言葉は魔法。言葉の力は、時にすごく、時に恐ろしいものだと実感した。

十四代目の『ボス』へ。
すまなかった、こんな役目を押し付けてしまって。
本当に反省している。
私は二千二十年十二月二日に、自殺する。
どうか今までのこの世界より良い世界を造り上げてくれ。

十三代目の『ボス』 「お」より

『お』!お前、何、やってんだよっ!!
東は叫んだ。
お前、死んで償おうなんて、考えてたのか...?
「お」は答えない。冷たい体を床に置いているだけだ。
生きて償えよ...償いたいなら...
東とテンヌキの目から、涙がこぼれた。
...『ボス』...死んじゃったら、何も...何も、できないじゃ無いか......
テンヌキは、冷たくなった「お」の体にしがみついた。
すると、東が、床に落ちていた「手記」に気づいた。
「テンヌキ...これ、何かな?」
「...?」
テンヌキは涙を拭いて、東の方に歩いて行った。
その「手記」は、何十枚ものページが破り取られた、ノートだった。長い間取り出していないのか、埃をかぶっていた。
二つの文字は、ページをめくって、手記を読み始めた。

「『お』...」
東は「お」に駆け寄った。
「お前、...ほんとに...バカなことばっか...考えてんな......」
「『ボス』!『お』!!」

うわあああああああああ!!

二つの文字は、「お」にしがみつき、泣き声をあげた。天国にいる「お」に、届くくらいの音量で。

「守」の文字たちが鳴き声を聞きつけて、東とテンヌキを引っ張って行ったのは、「お」が死んでからちょうど一時間が経った頃だった...
東の手には、ボロボロになった「手記」が、強く握られていた...

続く

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