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LINEの生活 #4 文字の仕事②

文字の仕事②

「ここは見ての通りLINEというSNSの世界。ここには数え切れないほどの種類の文字がいる。人間が何か文字を打ち込んだら、打ち込まれた文字のやつが、あの大きなスマホの中に飛び込む」
「お」は、すぐ隣の大きなスマホを指した。
「あ、あの、食事は…人間に姿を見られてないんですか…?」
「え?あ、ああ、お前、もともと人間だったやつ?!食事は大丈夫。ほら、食べ物の絵文字があるだろう?あれ、俺たちにだけ食べれるんだよ。なんで人間には姿を見られていないのかっていうと、ここはあの人間が文字を打ち込むのに使うキーボードの裏側の世界なんだ。だから人間には姿を見られない。なんでお前がここにいるかっていうのはな。ここには、お前らの世界でいう大統領的な存在が…。あ、なんで俺がこんな『大統領』とかの言葉を知ってるかっていうとな。政治に関心のある奴らが、よくLINEで話すんだよ」
結構おしゃべりらしい。「お」はおしゃべりの「お」なのかな、なんていうことを東が考えていると、
「おい!お前の文字が打ち込まれてるぞ!早く行かなきゃ!」
「お」の文字は、東を引っ張って行く。
「ちょ、ちょっと、総理大臣的な奴らが何してるか教えろよ!!」
「うっせえわ!これは文字の仕事!宿命だ!そのことは昼飯んとき話すから!さあ、スマホに飛びこめ!」
「お」の文字に言われるがまま、東はスマホに飛びこんだ(飛び込んだ、と言っても、自分の意思で飛び込んだわけではなく、「お」の文字に引っ張られているので、「お」の文字のせいで飛び込んだ、と言ったほうがいいのかもしれない)。
べたっ!
「え!なんだよこれ!?」
東はスマホにべったり張り付いている状態。
そうこうしているうちにも、次々といろいろな文字がスマホに張り付いていく。
「くそっ!はがれろ〜!!」
東は力を入れてはがれようとするが、びくともしない。
するとこのスマホの持ち主が、送信ボタンを押した。
べちん!
「うわっ!」
東はフキダシに貼り付けられる!もちろん、どうやっても動かない。
「くっそお!!!!!」
ピロン!ピロン!ピロン!ピロン!
返信が来て、東の張り付いた拭き出しは、どんどん画面の上に上がって行く。
そして東は、スマホの画面からはみ出した(つまり、返信がたくさん来て、スマホの画面に収まり切らなくなり、画面からはみ出してしまったということだ)。その途端、ぺらっ!東の体はスマホの画面から離れ、あの工場が立ち並ぶ街の地面へと落ちて行った…
「どうだ?初仕事は」
「お」が東を覗き込んで話しかける(これからは『お』の文字は、『お』と表す)。
「け、結構疲れた」
「ははは!そうか!結構きついよなあ!」
「はあ…」
そして東は、この仕事をやる前から、一番聞きたかったことを尋ねた。
「なあ、もう仕事終わったんだからさ、その、ここの総理大臣的な奴のことについて、教えろよ!!」
「よし…わかった。もう昼飯だから、話してやるか」
意味深な口調で、「お」が言う。
「この世界の秘密について…」

続く

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