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LINEの生活 #3 文字の仕事

「う、うーん」
起き上がった東は、スマホの中にいた。いや、これは東の意識が入った、「東」の文字、と言ったほうがいいかもしれない。そして、東の意識が入った、「東」の文字(何度も何度も東の意識が入った、「東」の文字と書くのはややこしくなるので、この後は東と書き表す)の目に映った景色は、想像を絶するものだった。
「は!?ここLINEの…」
東の目に映った景色を詳しく説明する。
そこには、私たちの世界にもあるような、5階建ての、煙突がついた大きな工場のような建物が、そこら中に、数えきれないほど並んでいた。その工場のような建物の壁には、小さな筒がついており、そこから、東のように、意識の入った文字が出て来ていた。その後、その文字たちは、さも当たり前のように大きなスマホの画面が映し出されている方に歩いて行っていた。東のいるスマホを使っている人間の指が、キーボードに触れるたび、平仮名、片仮名、漢字、英語、絵文字がスマホに向かって走っていく。
「なんだ…これ…」
今の状況をイマイチ理解できていない東のもとに、「お」の文字が駆け寄って来た。
「おい、お前、工場の近くで横たわってるけど…新人?」
今になって東は気づいた。自分は今工場の近くで横たわっているのだ。
新人?なんのこっちゃ?
混乱している東はとりあえず、
「は…?」
と答えておいた。
「ああもう!どうでもいいからとりあえず来い!!」
「お」の文字はがしっと東の腕(?)を掴んだ。
「ちょっと!何するんだよ?!」
「あ!説明すんの忘れてた!!!!!!!やっべ」
なんてことを東の話を無視してまで呟いている「お」の文字は、勝手に話を進めていく。
「説明?」
「おう。ここの世界のことをな…」
「お」の文字は、意味深なことを言って話し始めた。
東が考えてもいなかった、この世界のことを…

続く

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