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就労支援にVRを活用したソーシャルスキルトレーニング(FACEDUO)開発。「仕事編」で『仕事だいじょうぶの本』が参考図書に

「VRを活用したソーシャルスキルトレーニング(FACEDUO)」のデイケアでの実践事例を発表-横浜舞岡病院の加瀬昭彦院長

7月16日に名古屋で行われたSST全国経験交流ワークショップにて、横浜舞岡病院の加瀬昭彦院長から、「VRを活用したソーシャルスキルトレーニング(FACEDUO)」のデイケアでの実践事例が発表されました。

FACEDUOには患者さんの状況にあわせ、①地域生活準備編 ②日常生活編 ③仕事編があります。
各編には、「買物をする」「注文をとる」「薬の相談をする」「診察予約をとる」「相槌をうつ」など、 ソーシャルスキルを学ぶための様々な生活場面を体験できる豊富なコンテンツが用意されており、このたび「仕事編」のコンテンツに『仕事だいじょうぶの本』-職場の人と安心してコミュニケーションできるSSTレッスンBOOK-(北岡祐子・著、ペンコム・刊)が参考図書として採用されました。

以下、加瀬先生の発表から、当日の様子をご紹介いたします。

FACEDUOについて

FACEDUOとは、大塚製薬株式会社と株式会社ジョリーグッドが開発した、VRを活用した統合失調症患者さん向けのソーシャルスキルトレーニング(SST)支援プログラム。

社会生活の様々な場面をリアルに再現したVR動画を教材に、SSTの実施を支援する専門医監修のプログラムで、ソーシャルスキルを学ぶための様々な生活場面を体験できる豊富なコンテンツが用意されており、このツールの活用で支援者の負担を軽減することができる。

ソーシャルスキルトレーニング(SST)について

ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは、社会生活に困難をきたす人に向け、その特性に配慮しながら、コミュニケーションや対処技能を効果的に学習するための方法として開発されました。今や、教育や就労関係、司法分野などにも幅広く活用されている援助技法。

FACEDUO「仕事編」のデイケアでの実践の流れ

デイケアのプログラムにおいて「仕事編」を使って次のような流れで行われ、この様子が動画で紹介されました。

① 『仕事だいじょうぶの本』を1節ずつ輪読
②特に重要なトピックを選んで参加者と話し合う
③場合に応じて、 ロールプレイで再現
④適宜FACEDUOを使用し疑似体験

SSTにVRを活用するメリットについて

①当事者視点と客観視点から場面を体験できる
→ VRでは、当事者本人の視点と客観的な視点から体験を振り返ることができるので、その場の状況についてだけではなく、相手からどのように見られているかについても理解を深めることができる。

②認知負荷を軽減し、直感的に理解しやすい
→VRでは、仮想の体験ができるため、視聴に比べ、認知負荷が低く、場面の理解が容易になり、内容を自分ごと化することができ、実践に活かすことができる。

③記憶に残りやすく、行動定着率が高い
→研究データから、VRの学習速度は 講義の4倍、記憶に3倍残りやすいことが報告されている。
(Gergna Mileva et al: The effectiveness of virtual reality soft skills training in the enterprise: a study)

今後の予定について

VRを活用したソーシャルスキルトレーニング(FACEDUO)をデイケアのプログラムで実践された院長は、今後の方向性について次のように話されました。

①効果を社会的職業的機能評定尺度で評価する
②FACEDUOの使いやすさをSystem Usability Scaleで評価することで、その有用性を検証することも目的にしている

本研究については、12月に石川県で行われる一般社団法人SST普及協会の学術集会で発表予定とのことです。
なお、FACEDUO「仕事編」は今秋にリリースの予定。

『仕事だいじょうぶの本』
職場の人と安心してコミュニケーションできるSSTレッスンBOOK』

働きたいのに会話が苦手でつまずいてしまう、そんな不安をSST(ソーシャルスキルトレーニング)の技法を使って実例で解決するレッスンBook。約30年にわたり主に精神障害や発達障害がある方々の就労支援及び生活支援に携わってきた著者の北岡祐子さんが実例で紹介。あいさつや相談の方法など、日常生活に役立つ細やかで具体的な実例が紹介されており、会社にとどまらず、高校、大学などでも大いに活用されている。