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実はよく分からない「外国籍の方と生活保護」問題。7月新刊「わたし生活保護を受けられますか」より公開

「外国籍の方と生活保護」問題

「外国籍の方と生活保護」に関してTwitterのトレンドに上がっています。
きっかけはこちらのニュース。

>外国籍を理由に生活保護の却下は違法だとして、千葉市に処分の取り消しを求める裁判を起こしているガーナ人の男性が、5月18日、市内で会見を開き、改めて生活保護の必要性を訴えました。
というもの。

生活保護に関しては、「外国籍の方への支給問題」はこれまでもたびたび話題になってきました。そのたびに、SNS上では激論が交わされるのですが、実は、生活保護制度そのものについて、知っているようでよく分かっていないことが多いのではないでしょうか(私もその一人)。

そこで、「外国籍の方と生活保護制度」について詳細に解説がある『わたし生活保護を受けられますか』よりここで先行して公開します。ペンコムより7月刊行予定です。
同書の著者は、不服申立て代理ができる特定行政書士の三木ひとみさん。
副題に、「全国10,000件申請サポートの特定行政書士が事例で解説 申請から決定まで」とあるように、生活保護を担当する士業の間では、その名を知らない人がいないほどのプロ中のプロ。
初の著書と言うことで、注目が集まっています。
ちなみに、すでに予約が始まっておりますので宜しくお願い申し上げます。

上野千鶴子氏推薦!申請に行くときにはこの本を持っていこう!

同書は、上野千鶴子先生にも推薦いただいています。

上野千鶴子氏も推薦「わたし生活保護を受けられますか」

前置きが長くなってもうしわけございません。
ぜひ、お読みください。


外国籍の方と生活保護

日本国籍を持たない外国人や、無国籍の人については、生活保護法の適用にはなりません。しかし、昭和29年5月8日社発第382号厚生省社会局長通知「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」と題する通知によって、「当分の間、生活保護法による保護等に準ずる取扱いをすること」とされました。

ただ、すべての外国人が対象になるわけではなく、適法に日本に滞在していること、日本での活動に制限を受けない永住者や定住者、入管法上の認定難民といった在留資格(いわゆるビザ)を持っている外国人だけが、生活保護と実質同等の保護を受けることができます。

日本に入国する外国人については、入国のときに在留資格が与えられます。その在留資格に基づいた範囲のみで、日本で行動ができます。

こうした在留資格の取得、変更、在留期間の延長等をする場合は、入国管理局に対して申請を行う必要がありますが、法務大臣によって認められた行政書士は、こうした入国管理局に対する申請の取次業務ができます。

私も申請取次の資格がある行政書士として、日本で暮らす外国籍の方が行うさまざまな行政手続きを支援してきました。

定住者や永住者の在留資格を持つ外国人は、もともと日本に長期滞在している人たちです。定住者や永住者には、日本で仕事に就く際の制限がないので、日本人と同じようにフルタイム勤務をしている人も大勢います。

私が行政書士として生活困窮の相談を受けて生活保護を受けられるようにサポートをした外国籍の方も、健康で働いていたときは長期間にわたり日本で納税をしていました。

平成26年7月18日最高裁判所の判決では、国内での永住権を持つ外国人は生活保護法による法的保護の対象外とされました。あくまでも、外国人は行政庁の通達等に基づく行政措置によって、事実上の保護の対象となり得るにとどまるとされました。

生活保護法に基づく生活保護受給権がないために、生活保護の申請が却下されても、日本人の生活保護申請却下と違って、外国人は不服申立てや取り消しを求める訴訟等で救済を受けることもできません。

国の最高法規である憲法で最低限度の生活を営む権利を保障されている日本人と、立法権のない行政府の行政措置として生活保護を適用されているにすぎない不安定ともいえる外国人の保護についての差は、明らかにあるといえます。

日本政府は、日本の成長につなげるため世界の人材を受け入れてグローバル化を推進するという成長戦略の名のもとに、実際的には介護や農業など人手不足の分野の安い労働力として外国人を積極的に受け入れてきた事実があります。

こうした日本政府の方針のもとで海を越えて来日した外国人の方々が、不慣れな土地で一生懸命働いて取得することが難しい永住資格を取ったのに、病気やけが、事件に巻き込まれるなど何らかの事情で生活困窮に陥っても、権利としての生活保護は保障されないのが現状です。

日本の成長、日本の利益のために積極的に呼び寄せられた外国人は、使い捨ての労働力だったのかと落胆されるようでは、今後日本に優秀な外国人人材は集まりにくいでしょう。

ただ、現在の生活保護の実施においては、たとえ外国人の権利としての生活保護法に基づく保護の受給権がないとしても、少なくとも永住者や定住者である外国人には日本人と同水準・同内容の保護が実施されているというのが実態です。

外国籍の方の生活保護申請は、外国人保護の実施責任である、入管法に基づく在留カードまたは入管特例法に基づく特別永住者証明書に記載された住居地の管轄福祉事務所にて行ってください。


法令に基づき、今困っているひとの目線で、全国での事例をベースに生活保護制度を解説した本。
『わたし生活保護を受けられますか』
ぜひ、お読みいただければと思います。

最後までおよみいただきありがとうございました。
(ヘッダーイラスト:かまぼこ)