ベルギーで、おじいさんが降ってきた話
今まで、明確に誰かの役に立った記憶は、あまりないけれど、唯一、ベルギーでおじいさんを助けた事と小学生の頃のサッカーが役立った話。
小学校の5.6年生の頃、同じ学年に熱血な若い男の先生がいて、今だったら有り得ない話だけれど、いつもバットを持って歩いていました。(ちなみに別のクラスの先生は竹刀を常に持っていました、今から30年以上前の東京の話)その先生は、巨人ファンで、負けたら機嫌が悪いけれど、反抗期に入りかけの5.6年生の男子達をバットを持って、しっかり制御していました。その熱血先生が、体力作りと言って、学年全員を対象に朝練を始めました。朝30分間、学校が始まる前に、階段登り、逆立ち、腕立て、サッカーやバスケ。参加は自由。でも、学年の大半が参加していたと思います。運動音痴の私も、何故か参加していて、サッカーのルールを覚えたり、喘息気味だったのが解消されました。でも、階段登りのせいで、ふくらはぎが太くなったかも…。
今、考えると、毎朝30分も早く来て、自分でプログラムも考えて子供達にさせて、本当に熱心な先生でした。バット持って、ちゃんと子供達をコントロールしつつ、ポリシーを持って先生をしていたんだなと思います。
さてさて、それから何十年か過ぎ、そんな事はすっかり忘れてドイツに住んでいた頃の話。隣国のベルギーに旅行に行きました。
まずは、ブリュッセルに行きました。Grand Placeと呼ばれる美しい広場や絵画、小便小僧が有名ですが、それらをみて、粉砂糖がまぶされた熱々のワッフルを食べながら、歩いて。山盛りのムール貝と同じく山盛りのポテトを頂き、ベルギービールも飲んで。(食べてばっかり)
王宮あたりは、広々してるけれど、周辺の道路は混んでるし、入り組んでて、密度と都会さに驚いたり、ドイツに比べ、アフリカ系の方の多さに、隣国でも、違う雰囲気を感じたりしていました。
さて、ブリュッセルの観光名所の1つに、「アトリウム」という建造物があります。1950年代の万博の時にできた、近未来的なオブジェみたいな建物です。球体をいくつか繋げた大きな立体になっていて、つないだ部分はエスカレーターになっていて、最長で35mあるそうです。
一通り観光名所もみたので、そのあとアトリウムに行ってみました。
球をいくつもつないだ形の、とても変わった形の建物です。球同士はエスカレーターで繋がっていて、上下します。
いくつかの球の中をみて、エスカレーターに乗っている時の事。私はまだ小さかった娘をエルゴにいれて抱っこしていました。その時、急に上から、185センチくらいの巨体のおじいさんが降ってきました。急にバランスを失って、後ろに倒れたのだと思います。ずいぶん上から頭を下に落ちてきました。
一瞬の出来事で、何が起きたのか、全くわからなくて、でも身体が反応して、足でおじいさんを止めました。娘を抱っこしていたので、手はエスカレーターのベルト。足でしか受け止められず、太ももの内側で受け止めたのでした。おじいさんは、起き上がって、無事エスカレーター上にいたお友達に引き渡して、お礼を言ってくれました。
自分が誰かの役にたったことなんて、今までなさそうだけれど、この時のおじいさんは私の足が受け止めなかったら、頭をエスカレーターの角にぶつけて、大けがだったと思います。私と娘も、エスカレーターのベルトをしっかり持っていなければ、欧州のがたいのよいおじいさんの巻き添えになっていたかもと思うと、ちゃんと手すりを持っていて良かったと思います。
それで、小学生の頃の熱血先生の朝練と何が関係あるかといえば、おじいさんを受け止めた時、サッカーのインサイドストップの形をとっさに取ったからです。朝練で、2人組になって、ボールを片方が蹴って、ボールに対して足の角度をつけて、インサイドで止める練習を沢山しました。正にその感じでおじいさんを何も考えず、太ももの内側でキャッチできたのだと思います。身体で覚えた事は、忘れないのですね。
サッカーはその朝練以来していませんが、何十年も経って、別の時に役立った話でした。熱血先生の熱意によって、私がサッカー選手になるとかは、一切有りませんでしたが、何十年か後に、ベルギーの見知らぬおじいさんの役にたったと思います。何が何に影響するかわからないですね。という話でした。
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