短編小説『夢』27
グレーの羽毛に包まれた雛鳥をそっと掌にのせ、小刻みに震える身体を優しく撫でた。
「あったかい…」
雛の体温が直哉の掌に伝わり、冷えた心にポッと温もりを届けてくれる。
目を瞑り、ピーピーと弱々しく鳴いている雛を全力で守りたいと思った。菊もこんな気持ちだったのかも知れない。
緊張の連続だったが、温かいこの小さな命に直哉は癒された。雛もまた、親と離ればなれになり独りぼっちだったのだろう。この広い世界でお互い小さな身体を寄せ合って生きている。
直哉は辺りを見回した。何処かに雛鳥の巣があるのではないかと。
すると枝分かれした部分に小枝や枯草で造られた巣を発見した。
高さは4メートル位の位置にあるのだが、幹に足をかけるような凹凸が見当たらない。
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