短編小説『夢』31
の痺れと全身の筋肉疲労を覚えた時、腰を下ろすのに都合良い窪んだスペースを見つけた。
「よし、あそこで休もう…」
無我夢中で上を目指してきた。限界寸前でこの窪みは本当にありがたかった。
「疲れた…」
ゴツゴツした尖った岩肌に直哉は背中をもたれてひと息ついた。
「こんなに…」
そこで初めて登ってきた高さを思い知る事になる。そこは登り始めた地上からはビル高さで15階くらいはあった。万が一、足を滑らせて滑落したらひとたまりもない高さだ。余りの雄大さと原色に近い自然の彩りに遠近を狂わさせていた。
長い息を吐く。眼下にはブロッコリーのようなこん盛りした森林が広がる。
その向こうには吊り橋を失った崖があり、そして菊と出逢った世界がある。
岩肌から見渡せる180度の景色。それはまさに新旧・今昔そして生死が入り交じったパラレルワールドだった。
地上からは到底気が付く事が出来なかったポコポコと沸騰したピンクの沼や、毛嵐が微睡む五角形の星形をした湖。他にもピラミッド型の山やその山並をクラゲのような生物がふわりふわりと浮遊している。
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