【クソカード診療所・再診】《スクラップ・オイルゾーン》のカルテ
これまでのあらすじ・2
制限カード《死者蘇生》はもちろん、《マジックカード「死者蘇生」》の下位互換と言われても仕方ない《スクラップ・オイルゾーン》。
「蘇生したモンスターをX素材にすれば自壊条件を免れ場に残る」特性で他カードのコストに充てるなどすれば、使い切り蘇生札である《死者蘇生》などとは一応の差別化が効きます。
しかしそれだけでは同じく場に残り素材を展開できる《スクラップ・ファクトリー》の下位互換になってしまいます。
かと言ってバウンスして再利用するために無理にバウンス専用モンスターを特殊召喚しても、元々のリターンが大きくないため割に合わない。
なので本来先攻では使われない《ギガンティック“チャンピオン”サルガス》のバウンス効果を活用することで2度の素材供給を行い、さらに《星守の騎士 プトレマイオス》経由の《アーティファクト-デュランダル》の破壊の的にする無駄のない活用を行った……はずでした。
しかし「レベル4素材を2度供給する」までは他のカードに真似できなくとも、「チャンピオンサルガスとデュランダルを並べる」を終着点にしてしまうと話は別。
ランク5とランク4の縛りなしエクシーズ召喚を行うのは《スクラップ・ファクトリー》でも可能であることにあとで気付き、記事の訂正を余儀なくされてしまったのでした。
現状の問題点
まず、オイルゾーンを1度使うだけでは「効果を無効にして蘇生」「スクラップ名称を生かした被破壊墓地効果のトリガーにする」などの奇策を含めても他カードとの差別化は出来ません。
それらのコンボ(あるいはその結果)は他のカードでも可能であり、あえてデメリットの大きいこのカードを使う必要がないからです。
次に、2度使うとしてそこから行える展開はある程度限られます。
下の画像はワイバーンからオイルゾーン(1度目)を経てチャンピオンサルガスでタリホーをサーチし、レベルを持つモンスターを最大展開したのちにオイルゾーン(2度目)を使用した盤面になります。
レベル4のモンスターが3体並んでいるので更なるエクシーズ展開に繋ぎたいところなのですが、「素材3体のランク4エクシーズ」はそもそもさほど多くなく、先攻制圧に寄与できるものとなるとほとんどいません。
そんな中《星守の騎士 プトレマイオス》は非常に希少な効果を持っていたのですが、重ねて出せるランク5というのがよりによってゴーレムのレベル数値と一致。
よって他のカードを使った場合でもゴーレムを2体並べられれば縛りの無いランク5を出す流れは再現可能、オイルゾーン固有とは言えないコンボになってしまいました。
《セイクリッド・プレアデス》のような素材縛りのあるランク5を使うことで一応「他のカードでは出来ないコンボにする」こと自体は可能です。
しかしサルガスに加え《賜炎の咎姫》あるいは《スプライト・スプリンド》などが盤面対策を構えている中、魔法罠に対応できるデュランダルをあえて盤面バウンスのプレアデスに変えるのは良案とは言えません。
エクシーズが駄目ならとリンク召喚を行うのはもっと駄目で、結局ゴーレム特殊召喚でヨシとなってしまいます。
(1度目のレベル4素材をゴーレムで蘇生したモンスター、2度目のリンク素材をゴーレムで充てればいい)
さて、デュランダル案は「素材を2度供給し、さらに場に残ったオイルゾーンを効果の的として使える」非常に無駄のない流れで気に入っていたのですが、実のところ「素材を2度供給する」部分だけで差別化は完了しています。
死者蘇生やファクトリーで2体分の素材を供給するとして、それは「ゴーレム+ゴーレムで蘇生したモンスター」であり、「下級素材2体」は基本的に不可能だからです。
(リサイクラーを使って様々な機械族を絡めることで可能になるが、今回のデッキはキマイラを起点としたランク4エクシーズが軸なので考慮外とする)
そのため、2度目の素材は必ずしもエクシーズ召喚でオイルゾーンを場に残してどうこうとは考えなくても構いません。
しかし、素材レベルを原則参照しないリンク召喚ではいけません。
そうなると残る道はひとつ……シンクロ召喚が本治療最後のピースです。
治療改案
初手想定の「ラプター+オイルゾーン(+ワイバーンで割る札)」というのは変わりません。
目指すのは《死者蘇生》の互換品、「引けると強い素引き札」です。
兎にも角にもまずはラプターを起点に展開し、オイルゾーンを使ってメリーメイカーを立てに行きます。
そこからチャンピオンサルガスを重ねタリホーによる展開を狙うのですが、その際に取り除く素材をスプリガンズ1つとし、《スプリガンズ・バンガー》を特殊召喚します。
後述しますが、ここは「1体しか出さない」のより「3つ素材を残す」のが重要です。
さらに2度目の蘇生対象はラプターやキマイラではなく、ワイバーン+ゴーレムの《スプライト・スプリンド》で落とした《スクラップ・ワーム》。
これによって8+2で万能無効《フルール・ド・バロネス》を立てられるほか、バンガーの墓地除外効果でタリホー2枚目のサーチが可能です。
タリホーは相手ターンでチャンピオンサルガスの除去効果の発動タイミングを任意にするために使いますが、その時も取り除く素材は1つのみ、出すのは《スプリガンズ・キャプテン サルガス》です。
《スプライト・スプリンド》の効果で1つ、《タリホー!スプリガンズ!》でチャンピオンサルガスのトリガーを引くために1つ、そしてキャプテンサルガスの効果のコストとして1つのエクシーズ素材が必要なので、合計3つのエクシーズ素材を残しておく必要があったんですね。
「特殊召喚をトリガーとしたモンスターバウンス」「バウンスと破壊を選べる除去」「表側カードの破壊」に加えて「万能無効」の4妨害を構える事ができるため、元の治療案と比べてもさらに強力な盤面に出来たと思います。
「スプリンドで落としたワームを蘇生し展開に使う」といったアクロバティックをやっているので、オイルゾーン無しだったり、割り札が無くてワイバーンを破壊してしまうような状態だと同じようには展開できません。
その場合はそもそもワイバーンの展開を諦めラプターキマイラでメリーメイカーから、墓地落としスプリガンズを素材化した上でタリホーを発動。
素材は2つ取り除き、展開したバンガー含む2体で《I:Pマスカレーナ》をリンク召喚しましょう。
こちらもチャンピオンサルガス、キャプテンサルガス、マスカレーナからのリトルナイトで都合4妨害を行う事ができます。
しかしこっちはタリホー発動→キャプテン特殊召喚→効果を使い終わったモンスターを素材にリトルナイト……と効果の発動順がほぼ完全に固定されており、万能(もしくは魔法罠)無効持ちもいないため全体除去魔法などを打たれると一気に想定が崩れます。
こちらでも十分戦えるものの、やはりオイルゾーンを引けた方が強力であり、ちゃんと「引けたら強い素引き札」としての価値を持てていると言えるでしょう。
追記:他展開札との差別化について(8/19)
「セルフバウンスと組み合わせ下級素材を連続供給する」という役割は《死者蘇生》《スクラップ・ファクトリー》にこそ不可能なものの、全カードプールに目を向けると流石に代案が存在します。
一例として《トイ・ボックス》を用いて同じ展開を行うと、「ワイバーンで割る札」が不要であるうえ、トイソルジャーによるサーチもついてくるなどほとんど上位互換のような動きになります。
ただしそういった「追加展開コンボ」はあくまでワイバーンによる破壊効果が回り出して初めて価値を持つのに対し、オイルゾーンはシンプルな展開札ゆえに一部スクラップと合わせて「ラプターが引けない場合の妥協初動」として振る舞うことが可能です。
よって、下記の構築例に加えて《炎舞-天キ》も採用することで、パンテラやスクラップゴブリンを手札に加えられる確率を上げれば、他の上振れコンボパーツとの差別化とすることが可能です。
(パンテラとロッキーそれぞれ1枚と差し替えて2枚採用)
「展開を伸ばせる上振れコンボパーツでありながら、展開の起点となる1枚初動(ラプター)が引けない場合でも妥協初動を行うための2枚初動の一部にもなる」というのが、このデッキにおけるオイルゾーンの価値と言えます。(追記ここまで)
構築例
特筆すべきカードについて
《スプリガンズ・ブラスト!》
元の構築で「タリホー素引き時にチャンピオンサルガスでサーチする上振れ札」として採用されていたキングレギュラスとの入れ替わりです。
墓地除外とX素材抱えの関係上新オイルゾーンコンボでは墓地に機械族が残らず、キングをサーチしても特殊召喚できないため、スプリガンズ妨害罠を代用としています。
《VS パンテラ》
このデッキは基本ラプター(9枚:74.18%)が引けないと何もできないため、疑似的な妥協初動となるカードです。
自己特殊召喚のできるレベル4なので、ゴブリンやワームと並べてワイバーン経由でラプターにアクセスしたり、ロッキーとX召喚してオイル無し側のコンボを始動したりできます。
先攻でラプター&オイルが揃っている場合でもとりあえず場に出して「割り札」になる事ができ、後攻なら「地・炎」の効果で露払いも狙えます。
《転生炎獣アルミラージ》
このカードの存在により、サーチャー・ワーム・ゴブリンを墓地に送ってオイルゾーンで蘇生するのが一応の妥協初動になります。
(サーチャーの効果も無効になるのでアルミラージと並べられます)
先述の通りラプターの素引きは絶対ではないため、全く動けない可能性は少しでも下げておきましょう。
《召命の神弓-アポロウーサ》
オイル無し側のコンボにおいて、サンダーボルトなどが飛んできた時の回答です。
先にマスカレーナの効果を発動してからチェーンでタリホーを発動し、破壊耐性持ちの4素材で食い下がりましょう。
(誘発・捲り各種)
この例では9枠ですが、パンテラやブラスト、一部スクラップなどを差し替えればさらに積むことも一応可能です。
(なおこのデッキにおけるサーチャーとゴブリンは耐性盤面に回答するための銀の弾丸がメイン採用理由、次点は上述のオイルやパンテラと合わせた低確率妥協初動であり、特別素材価値の大きいカードでもないです)
スプリガンズを削る際はデッキから枯渇するとタリホー(一応サーチがメイン効果)が発動出来なくなることに気をつけましょう。
《スクラップ・リサイクラー》関連
抜きました。
元々の展開では「バンガーを墓地に送り2枚目タリホーをサーチする」のは一工夫必要な上振れでした。
リサイクラーはその工夫のひとつとして(ジェットシンクロンと共に)入れていたカードでもあり、自然に展開に絡められるこのデッキでは役割が減るからです。
《ナチュル・ビースト》
入れていません。
ランク4を出さないと始まらないこのデッキにおいてはファクトリーを素引きしてなおレベル4+レベル1のシンクロ召喚は難しく、如何に強力でもそもそも出せないからです。
まとめ&感想
さっっっっすがに「【スクラップ】の先攻展開でレベル4素材を供給したあとにレベル2チューナーも展開する」のは《死者蘇生》にも《スクラップ・ファクトリー》にも真似できない《スクラップ・オイルゾーン》固有コンボのはずです。
公開してから2週間ほど経ち、それなりにいいね評価もされた記事に破綻が見つかった時は本当の本当にどうしようかと思いましたが、流石の流石にもう大丈夫だと思います。
もしかしたら他のカード1枚から始動するコンボで同質の素材を供給すること自体は出来るかもしれませんが、デッキスロットを鑑みてなお上位互換になることは無いでしょう。
というわけで《スクラップ・オイルゾーン》の治療でした。
スクラップクソカード四天王の一角を崩すことが出来ましたが、奴は四天王でも最弱なので他の治療は新規カードの実装がない限り云々。
新規カードと言えばマスターデュエル、先日のメンテでゴブリンライダーいい加減来るだろうと思ってたのに来ませんでしたね。
紙の方で新規登場する「天上天下」と「大収監」が来ればだいぶ【スクラップ】の水準が上がるので待ち遠しいのですが、そのころには環境デッキの水準はもっともっと上がっていそうで一体どうなることやら。
そんな感じで人鳥さんがお送りしました。
以下ちょっと長めの余談です。
余談:《スクラップ・ビースト》のカルテ?
《スクラップ・ビースト》は《スクラップ・ラプター》が登場する以前の【スクラップ】主力チューナーであり、同時に「以降」の【スクラップ】にはまず採用されないカードです。
「レベル4獣族チューナー」自体が限られるため、カードプール全体から見れば全く使い道の無いカードではないものの、【スクラップ】に限って見るならば
・単純なチューナーが欲しいだけなら《スクラップ・ラプター》
・ほぼ同様の能力を持つ特殊召喚モンスター《スクラップ・オルトロス》
・同じくサルベージ効果を持ち単体で自壊する《スクラップ・コング》
と言った選択肢が他にあり、あえて「スタンダードなスクラップチューナー」でしかないビーストを組み込む理由はまずありません。
ところで、この記事のオイルゾーン治療デッキにおいて《スクラップ・ファクトリー》はさほど強力なカードではなかったりします。
ファクトリーは、普通の展開系【スクラップ】で素引きできたなら、サーチャーを交えてナチュビ追加するくらいの事はできる強力なカードです。
しかしこのデッキにおいてはEXデッキの枠がシビアであったりレベル4チューナーを自由に使えなかったりといった事情から、明確に盤面をプラスすることがかなり難しくなっています。
とは言えこのデッキでもいわゆる「割り札」用途、先攻ワイバーン展開の際に自分のカードを破壊しなければならない時ならそれなりに便利です。
他の魔法罠であれば無意味に破壊され消費されるだけになりがちですが、ファクトリーであれば「ファクトリー自身はフィールドに残したままデッキのスクラップを割り札として使う」事ができます。
サルベージ効果持ちを「割り札」としてリクルートしてやれば、次のターンを「フィールドにファクトリー、手札にキマイラ」という理想的な状況で迎えることが狙える……のですが、実際に記事内のレシピでそれを行うと大きな問題が発生してしまいます。
手札にキマイラを戻してしまうと墓地にレベル4モンスターが存在しなくなり、メリーメイカー以降の展開が成立しなくなるのです。
「『割り札』で無駄に消耗せずマイナスを抑え、かつ手札にプラスで次弾も構えられる」という非常にアドバンテージのあるコンボなのですが、そのせいでメイン展開が止まってしまっては元も子もありません。
構築例で採用されていたゴブリンやワーム以外に、サルベージ効果を持ちながらレベル4のスクラップモンスターがいればこんなことにはならなかったのですが……。
というわけで、このデッキは《スクラップ・ビースト》を組み込む意義のある【スクラップ】です。
オルトロスは特殊召喚モンスターであるためリクルート不可、効果の異なるラプターは言わずもがな。
この場合の競合は同じレベル4・サルベージ効果持ちの《スクラップ・コング》になります。
特殊召喚前提ならコングのデメリット自壊は発生しないため、打点の高いあちらを採用するのも勿論アリではあります。
しかしこちらは当然召喚時のデメリットがないため、《VS パンテラ》と合わせて素引きした場合に妥協初動に出来るのも相対的な利点。
ファクトリー・オルトロス・オイルゾーンなどが絡む三枚コンボになるとまたそれぞれに有利不利があり、誤差レベルの相互互換と言ってもいいでしょう。
ただそれならばなぜどちらも構築例に入っていないのかという話になりますね。
結局のところこのデッキはあくまで「ラプター1枚初動」を基本とし、「オイルゾーンが素引きできればさらに強力な盤面を狙える」というのがコンセプト。
「ラプター+オイルゾーン(+割り札)」だけでも「上振れ」だというのに、「ラプター+オイルゾーン+ファクトリー」というのは「上振れ中の上振れ」だからです。
仮にそのような超上振れが訪れた時であってもファクトリー単品での「割り札としてリクルートスクラップを使えるので消耗しない」「ついでにそのスクラップを墓地に送れる」という特性で十分とも言えます。
ほぼ超上振れ専用のカードをデッキに入れる必要があるかどうかと言われてしまうと……少なくとも上記のレシピにおいては必要性は薄いという結論になるかと思われます。
とは言え、《死者蘇生》などの他の蘇生札や、キマイラ・ファクトリーの採用枚数を増やせば「ラプター+蘇生札のエクシーズ展開にファクトリーを絡める」可能性も上げられます。
また、この話の肝は「キマイラをサルベージしてラプターと並べエクシーズ召喚する事を想定すると、『リクルートにも通常召喚にも制限のない共通効果持ちのレベル4』であることが唯一無二の個性として実用出来うる」という部分です。
このデッキでは「まぁ役立つ可能性もあるけど低確率すぎる」と言う評価であっても、今後異なる構築で【スクラップ】を組む時に「やはりビーストが最適」となりうる光明が見えたのではないかと思います。
ビーストは「昔は【スクラップ】に必須級だったのに今はまず入らない」「混合構築やピンポイント需要を考えてもなお、他のマイナースクラップの皆さん以上に立場が悪い」という非常に寂しい立場にありました。
「他のマイナーの皆さん」の方が活用されやすいことに関しては、実際にこの記事で《スクラップ・ワーム》がレベル2チューナーであるというだけでコンボに使われているのを見ての通りです。
やはり下位互換上位互換の話をするとどうしても、「普通に使えるけど地味で平均的な奴」よりも「普段は使われなくても変な特長のある奴」の方が有利になってしまうものなのです。
なので私は、もうビーストは種族を生かすなどして他所のデッキで活躍するほか無いのだと思っていました。
そんな中で、たとえ限定的な状況であったとしても「『スクラップカードを生かすための【スクラップ】』でビーストが固有の価値を持つ」というのは、私にとって非常に大きな意味のある発見でした。
そういうわけで余談はここまで、改めて人鳥さんがお送りしました。
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