見出し画像

16.DARCでの生活

大阪に帰ってきてからの私はしばらくDARCに通所していた。DARCとはDrug Addiction Rehabilitation Centerの略である。以前通っていたアルコールリハビリセンターと同じように午前と午後にミーティングをする。そして夜はNAである。またしても3ミーティングの生活だ。NAへの参加は義務付けられている。病院に関してはDARCに通いながら天王寺の小杉クリニックに通院することになった。DARCに通所して1ヶ月ちょっとになるがその間は不思議と飲酒欲求が起こらなかった。
NAのホームページに行くと「自分は薬物依存者か?」という問いが投げかけられる。

・薬物を使用している間ずっと、私たちは「自分は薬物を上手に使っている」と内心では思っていた。
・最初はそうであっても、今はそのような状態ではない。
・薬物が私たちを操っていたのだ。私たちは薬物を使用するために生き、生きるために使用していたのだ。
・たぶんあなたは、自分が薬物の問題を抱えていることは認めていても薬物依存者であるとは思っていない。

この文中の薬物をアルコールに変えれば立派なAAのテーゼとなる。
そして12のステップもAAと全く変わらない。ただ主語がアルコールから薬物に代わっているだけである。私は最後の一文に的をえた気持ちになったものである。

「アルコールは薬物ではないという考えは、非常に多くの薬物依存者を逆戻りに至らしめた。NAに来るまで、大方の人たちはアルコールは薬物ではないものだと思っていた。しかし、これはまちがいである。アルコールも薬物の一種なのだ。われわれは薬物依存という病気をもつ人間であり、回復のためには、いかなる薬物からも遠ざかっていなければならないのである。」

アルコールは立派な薬物である。アルコール薬物問題全国市民協会(ASK)の「こんなにある 依存性薬物の種類」を見ると、筆頭にアルコールがあげられてある。しかも大麻&マリファナよりも毒性が強い。何度も言うが医学的には、アルコールは麻薬や覚醒剤と同じドラッグの一種である。世界の歴史を見れば、ドラッグの合法・非合法の区別はまったくまちまちであるが、法律がどうあろうと、ドラッグは脳とからだを破壊する。アルコールというドラッグは、現代の日本でたまたま合法化されているに過ぎない。仮に今、アルコールというものが発明されたら非合法化されるに違いない。
ドラッグは、いったん習慣性がつくと、なかなかやめることができない。これは、脳の中にドラッグを求める回路ができてしまうからである。この回路は人をあやつり、いかなる犠牲を払ってもドラッグを取らせるようにしむける。アルコール依存症の人が酒をやめられないのは、意志や道徳の問題ではなく、脳内にできたアルコール回路の作用によるのである。だからこそ、依存「症」という病名がついているのだ。
酒を飲み続けることによって、脳のアルコール回路は強化される。同時に、アルコールというドラッグは身体も蝕んでいく。破壊されるのは肝臓だけではない。アルコールは発がん物質でもあり、特に食道や大腸のがんのおもな原因はアルコールである。そのほか、痴呆、糖尿病、膵炎など、ほとんどあらゆる病気がアルコールによって起こされたり悪化したりする。このためアルコール依存症は早死にしたり、長い期間療養生活を送ることになりがちで、自殺や事故も高率だ。
麻薬や覚醒剤の中毒者に対して、少量とか適量でなんとかやっていかせようと考える人はまずいない。完全にやめるか、さもなければ人間をやめるかしか残されていないのだ。このあたりは覚せい剤撲滅キャンペーンと変わらない。ドラッグであるアルコールも同様。酒をひかえ目に、というのは健康な人のこころがけるべきことで、アルコール依存症には適しない。アルコール依存症の治療はアルコールを完全に断つしかない。まず完全に断ち、それからは断酒を継続することが求められる。そのためには家族や社会の協力も必要だろう。
以上がドラッグとしてのアルコールだが、断酒しなければ回復はないとは思わない。それについては後ほど書きたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?