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日本橋の「道楽」で買ったDVD

「Bis階段」の支払いが終わって帰宅し、しばらく非常階段のノイズを聴きながら日記を書いていたが、ニコとジョイ・ディヴィジョンのDVDをBGMにベッドに入って「MIX」を読んでいると、いつしか寝てしまっていた。起きたのが3時過ぎである。
ニコは10代の頃から180cmという長身を生かしパリを中心に「ヴォーグ」や「エル」といったファッション誌のモデルとして活動し、その後、フェデリコ・フェリーニの「甘い生活」(1960年)等の映画に端役で出演している。ニコはこの頃にニューヨークに移り、しばらくの間、ヨーロッパとアメリカの両方で活動を行った。ニューヨークにいた頃にボブ・ディランの紹介でアンディ・ウォーホルに出会ったニコは、ウォーホルが主宰する「ファクトリー」の実験映画に参加する。ウォーホルは自らがプロデュースしていたルー・リード率いるヴェルヴェット・アンダーグラウンドにニコを参加させ、1967年3月のファースト・アルバム「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ」では4曲でニコがリード・ボーカルをとった。しかし、いわばウォーホルにゴリ押しされた形のニコは他のメンバーに受け入れられず、ニコはデビュー作への参加のみでグループを去り、その後はソロ活動をすることになる。
私が持っているDVDは1982年に製作された「Underground Experience +Heroine」というやつで、アンダーグラウンドのクラブで、淡々と、しかし情熱的に歌い上げるニコの姿を収めたライブ映像。ヴェルヴェットとのアルバムに収録された「ALL TOMORROWS PARTIES」「FEMME FATALE」などの名曲が演奏される。1885年製作の「HEROINE」は、マンチェスターのライブラリー・シアターで行われたアコースティック・ライブの模様を収録。ニコの圧倒的な歌声が、歓喜と絶望の間を彷徨うかのごとくメランコリックに響き渡り、観る者の感動を誘う。ルー・リードやアンディ・ウォーホールとの日々を語った貴重なインタビューが興味深かった。HMV&BOOKSオンラインで価格を見ると5,170円して、なかなかの値段であるが、私は大阪の日本橋の電気街にある「道楽」というレコード&CD&DVDの中古屋で300円くらいで買ったと思う。本にしろCDにしろDVDにしろ、私は新品にこだわらない。
一方のジョイ・ディヴィジョンは1976年にグレーター・マンチェスターのサルフォードで結成され、ポストパンクを代表するバンドの一つとして活躍。ヴォーカリストのイアン・カーティスの書く内省的な歌詞や特徴的なライブパフォーマンスは多くの人を惹きつけた。ところが、初のアメリカ・ツアーへの出発前日の1980年5月18日にカーティスが自殺。突然の悲劇によりバンドは解散を余儀なくされた。その後、残されたメンバーはニュー・オーダーを結成することになる。

DVDは、レディオヘッド、コールドプレイ、ブラーなど有名アーティストと数々の仕事をしてきたグラント・ジーが監督し、ニュー・オーダーの前身であり、今なお伝説として影響を与え続けるバンド、ジョイ・ディヴィジョンの真実に迫るドキュメンタリー!これまでほとんど目にすることのできなかったジョイ・ディヴィジョンの貴重な初公開ライヴ映像に加え、イアンの愛人アニーク・オノレや映画「コントロール」の監督アントン・コービンなど関係者へのインタビュー、さらに新たに発見された肉声テープなどを通して、イアン・カーティスの、そしてジョイ・ディヴィジョンの物語を解き明かしてゆく。このDVDもアマゾンで見てみると中古でも8,200円の値がついているが、私はニコの時と同じく日本橋の「道楽」で300円くらいで手に入れた。
ついでに、その後のニュー・オーダーに触れておくと、1983年のヒット曲「ブルー・マンデー」や、ヒップホップにおける代表的なプロデューサーであったアーサー・ベイカーと組んだ「コンフュージョン」などの楽曲により、現在でも最も影響力のあるダンス・アクトの一つに数えられていて、ツアー中の行動の破天荒さは、ハッピー・マンデーズのメンバーをして「正真正銘の24アワー・パーティー・ピープル」と言わしめるほどである。
4時を回ったところで、DVDの続きとしてアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのDVD「リスン・ウィズ・ペイン」を立て続きに見る。
アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンは、「崩れ落ちる新しき建築物」という意味で、ドイツの実験的バンドである。インダストリアル・ミュージックやノイズ・ミュージックの代表的存在で、1980年、西ベルリンでブリクサ・バーゲルトを中心に結成された。インダストリアルやエレクトロニカに分類されることも多いが、ノイバウテンの活動とサウンドはこういったカテゴリーと必ずしも一致しない。彼ら自身の感性で独自のスタイルを確立し、実験的音楽を作り続けているバンドと言える。自作の楽器(スクラップの金属片や建設用機材から作られることが多い)やノイズを通常の音楽機材と合わせて使うことが、このバンドのトレードマークの一つ。しかし、その自作楽器の始まりは、音楽性の追究の果てに得た物ではない。メタルパーカッション(鉄板を扱ったドラム)を使ったことが自作楽器演奏の始まりとされているが、「当時、アンドリュー(N.U. Unruh)が金が無くて勝手にドラムを売ってしまい、代わりに鉄板を扱った」という偶然から生まれた産物であるとブリクサは語っている。
DVDの方は、「リスン・ウィズ・ペイン」は日本でもカルト的人気を博すノイズロックバンド、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンの結成間もない頃から近年まで、豊富なライブ映像とインタビューで構成された、彼らの軌跡を凝縮したドキュメンタリー。
今日の午後あたりに12月26日に発送されたペヨトル工房の「夜想 13 シュルレアリスム」と「夜想15 特集「少年』」が届くはずなのだが、ただ待っているのも退屈なので、昼食を食べて、睡眠薬のフルセットを飲んで、リザードの「ロックンロール・ウォーリアーズ-LIVE'80-」やセックスピストルズの「No Future A Sex Pistols Film」、パンクのオムニバスの「THE PUNK ROCK MOVIE」を見ながら、ベッドに入って「MIX」を読みながら待つことにする。起きた頃には「夜想」は届いているだろう。
「ロックンロール・ウォーリアーズ-LIVE'80-」は、ミラーズ、フリクションなどとともに東京ロッカーズの中心として活動し、カリスマ的魅力を放ったリザードの1980年のライヴ映像がDVD化されたもので、ヴォーカリストのモモヨの言動や、次々と打ち出されるビジュアル、スキャンダラスなイメージが先行しがちなリザードだが、ニューヨーク・パンクの影響が色濃い東京ロッカーズの中にあって、ストラングラーズの血を受け継いだともいえるバンドである。リザード史の中でも人気の高い「鋼鉄都市破壊指令ツアー」時代のライヴ映像で、グラム路線だった前身バンド、紅蜥蜴からリザードへ改名後、ジャン・ジャック・バーネル(ストラングラーズ)のプロデュースによるセルフ・タイトル1stアルバム(副題「鋼鉄都市ヲ破壊セヨ」)をリリースした直後のものである。
セックスピストルズの「No Future A Sex Pistols Film」は説明は不要だろう。

「THE PUNK ROCK MOVIE」は、1977年、ロンドンでオープンしたロキシー・クラブは、パンク・ロックのために100日間の限定営業をすべて捧げた。このクラブのDJでもあったドン・レッツは、出演アーティストたちのライブだけでなく、バックステージを、踊り狂うオーディエンスたちを、各地で行われたライブを、見つめ続けた。セックス・ピストルズ「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」から、クラッシュ「白い暴動」、ジョニー・サンダース「チャイニーズ・ロックス」まで、もはや伝説となった13組のアーティストによるライブ・パフォーマンス、そして当時の空気を伝える貴重な映像が満載!監督が監修した「リマスター・サウンド」で、リアルなパンク・ムーブメントの姿が浮かび上がる。


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