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閉鎖病棟 それぞれの朝

何度か寝起きを繰り返して、最終的に起きたのが4時半だった。外はまだ暗い。何となくつけたテレビではテレビショッピングをやっている。昨日の日記を書いたり、ブログに「アルコール依存症闘病記」の続きをアップしたりしていると8時前になり、風呂に入ることにする。湯船にゆっくりつかりながらオスカー・ワイルドの「サロメ・ウィンダミア卿夫人の扇」を読んでいると読み終わってしまった。風呂から出て、業務スーパーに赤ワインの「SIEMPRE」を買いに行く。
朝から何度もYから電話が入る。今日は映画の「閉鎖病棟 それぞれの朝」を見に行く日だ。映画は精神科医を務めながら、珠玉の人間ドラマを生み出し、山本周五郎賞を受賞した帚木蓬生のベストセラー小説「閉鎖病棟」を原作に、『愛を乞う人』『エヴェレスト 神々の山嶺』の平山秀幸監督自ら脚本を執筆し映画化を打診、11年越しの念願か叶って映画化が実現したのだとか。長野県のとある精神科病院にいる、それぞれの過去を背負った患者たちが主人公だ。2019年1月7日(月)、松本ロケにてクランクインした撮影はその後、独立行政法人国立病院機構が運営する精神科の専門医療施設・小諸高原病院の多大なる協力を得て2週間にわたるロケ撮影が行なわれ、ドキュメンタリーを除き日本国内で旧国立の精神科病棟を使用しての精神科病棟を舞台とした作品の映画撮影は本作が初めての試みとなった。母親や妻を殺害した罪で死刑判決を受けたものの、死刑執行に失敗し生きながらえた梶木秀丸は、陶芸をしながら暮らしている。幻聴が聴こえて暴れるようになり、妹夫婦から疎まれて強制入院させられた元サラリーマンのチュウさん。父親からのDVが原因で入院することになった女子高生の由紀。彼らは家族や世間から遠ざけられながらも、明るく生きようとしていた。そんなある日、秀丸が院内で殺人事件を起こしてしまう。笑福亭鶴瓶が秀丸役で「ディア・ドクター」以来10年ぶりの主演作で減量も含めた渾身の役作りを敢行、観る者の涙を誘う熱演を見せてくれる。秀丸と心を通わせるチュウさんを「そこのみにて光輝く」の綾野剛、女子高生・由紀を「渇き。」の小松菜奈がそれぞれ演じる。
出かける時間まで、とりあえず読んでおかなければならない文庫本を読み終わったので、ハウスのミックスCDを聴きながら「ブラックミュージックレビュー」を読んでいると14時になった。出かける時間だ。Yと一緒に地下鉄の駅に向かう。携帯電話を持ってくるのを忘れてしまったが、まあいいか。
映画は難波のパークスシネマで上映されていた。映画館に入る前に、映画館の売店で買うと高いので、ファミリーマートでビールを2本買っておく。平日の昼間だったので映画館は比較的空いていた。映画は笑福亭鶴瓶の演技が秀逸だった。ただ、閉鎖病棟と言いながらそれを感じさせたのは看護師が病棟に入る前後に施錠するところくらいで、患者たちが病棟の外に出入りしているところなどは閉鎖ではなく、開放病棟じゃないかと思わせるところが多々あった。しかも、セキュリティーは甘甘だ。しかし、映画自体は良かった。
映画を観終わったあとに調べてみると、この映画に瀬戸内寂聴や村木厚子が代表呼びかけ人になっている「若草プロジェクト」が関わっていたことを知る。若草プロジェクトは貧困、虐待、ネグレクト、DV、薬物依存などの問題で生きづらさをかかえる少女や若い女性たちと、彼女たちを支援する人たち(支援者)とをつなげ、彼女たちの心に寄添う支援を届けるために「つなぐ・まなぶ・ひろめる」の3つの事業を行っている。小松菜奈が演じた由紀のような女の子を救うのが目的だ。呼びかけ人の中には上野千鶴子もいる。若草プロジェクトのホームページを見ていたら、理事の中に瀬戸内寂聴の秘書である瀬尾まなほがいるのを発見。この瀬尾まなほという人も面白い人である。
映画の次はなんばシティの旭屋書店に行く。Yがどうしても竹宮惠子の新刊の文庫本が欲しいらしい。Yは竹宮惠子の大ファンである。欲しかった本は「少年の名はジルベール」だが、ハードカバーの本は持っている。しかし、文庫本の方も欲しいらしく、ここまで来るとコレクターだ。竹宮惠子は2000年に京都精華大学マンガ学科の教授、2008年にはマンガ学部の学部長、2014年には京都精華大学学長に就任している。京都の漫画ミュージアムで何度も個展が開かれていたので、その度に付き合わされた。
本屋の次に向かったのは画材屋の「カワチ心斎橋店」である。Yがデッサンをやりたいというのでアドバイザー的に付き合ったのである。画材屋に行くのは何年ぶりだろう?学生時代は美術大学ということもあり、学内に2つの画材屋があった。設計製図の課題作成に必要なので、しょっちゅうケント紙や画用紙、鉛筆、ロットリング、模型材料などを買いに行ったものである。
一通り買い物が済んだ我々は晩御飯を食べに道頓堀のサイゼリアに向かった。今日の仕上げの飲酒である。迷うことなく赤ワインのマグナム(1500ml)を注文する。私はここへ来るまでに既にビール3本飲んでいる。最近弱くなっているので、果たしてどれくらい飲めるだろうか?

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