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〈白い小石〉

小さな白いつぶつぶ


むかしむかし

ある島では、食べ物が硬くて硬くてそのままでは食べられなかった。人々は起きている時間の多くを、食べ物を柔らかく煮込んだり刻んで小さくすることに使っていました。お腹は空くけれど食べることはとても大変で、島中の人たちはいつもへとへとになっていました。

よその島の人々はいったいどうしているのか知りたくなりました。
「この手紙を手にした人へ。我が島の中では解決できなくてたいへん困っています。暮らしを考える専門家に島の外から来てもらい、少しでも短い時間で美味しい食事を作れる方法を探してもらいたい。食事作りから自由になりたいのです。力を貸してください。」と小鳥の足に手紙をつけて飛ばしました。

小鳥は海に落ちて死んでしまったのだろうか…
諦めかけた頃、海の向こうから赤い船がやってくるのが見えました。十人ほどの人影が見えます。彼らは暮らしの専門家で小鳥の手紙を持っていました。「私たちは食事をゆっくり楽しんでいますが暮らしの時間はたっぷりあります。さっそく調べて原因を見つけましょう。」専門家たちは到着早々手分けして島の暮らしを丁寧に調べました。

不思議なことに食事の材料は、硬い作物や、硬い肉しか無いわけではありませんでした。けれどもこの島の食事は、細かく滑らかであればあるほどもてなしの心が込められているとされていて、食べ物は全て丁寧にすり潰されるか、とてもとても小さく刻まれていました。「なるほど、これでは一食の調理時間がたくさん必要だろう」専門家たちはさらに調査を続け…

そしてついに!専門家たちからの発表がありました。

「解決策が見つかりました」専門家たちは発表しました。「まず!この国で遠い昔から続いている、口の中に生えてきた歯を全て抜いてしまう儀式をやめてください!」なんと、驚いたことにこの国の人は口の中にに白いものを見つけたらすぐに抜いて神様に捧げていたのです。昔から続いてきた儀式ですから、この白いものが歯であることも何のためな生えるのかも、誰も知らなかったのです。

専門家たちは、口を大きく開けて歯を見せ、食べ物を食べてみせました。噛むことの美味しさや楽しさを丁寧に説明し、口の中に現れる白いものの役割を島中に広めました。

驚いた島の人たちは儀式では小石を使うことにして、みんなは歯を抜かないで生やすことにしました。しばらくは指をかじっただの食べ物じゃないものをくだこうとして歯が折れただの事故も起きましたが、やがて上手に美味しく食事をし、人生を楽しむための時間も生まれました。

めでたい。めでたい。

描く行為が好物、つくることが快楽。境界線なくイラストを提供したくなる病。難しいお話をやさしく描くのも得意。生きることすべてを描きデザインする。旅をして出会って描きたいつくりたい。だからサポートは大歓迎です。 ( ・◇・)ノ