能を観たことがある

日本人として生まれたからには、日本の文化や芸能はやはりある程度は踏襲しておきたいという思いがありつつも、なかなかそれを実行に移せるだけの勇気と時間とお金がない。そんな中でも、実は私はかつて歌舞伎と能を鑑賞したことがある。

歌舞伎を鑑賞したのは中学1年生のころだったと記憶している。が、私の物心は中学2年生のときにリセットされていて、それ以前とそれ以降ではっきりと記憶の境目が存在しているので、ほとんど思い出せない記憶になっている。

能を鑑賞したのは中学3年生の修学旅行のときだった。能の実際に能楽堂で能に携わる方々のお話を伺い、その後に実際に能を鑑賞した。能に対するイメージは、確かにそれ以前は多くの人が抱いているような、難しくて自分たちの暮らしからは程遠く、眠たくなってしまうようなものというイメージを抱いていた。しかし、そのときに能を鑑賞する前に伺った話の中で、能とは神話の世界などのややスピリチュアルな話を扱うものであり、そうしたものを鑑賞するときには、実際に眠たくなって、夢うつつの状態で鑑賞するのが正しい鑑賞方法なのだ、とのお話があった。この話は個人的にすごく合点がいく話であり、そのような状態でこそしっかりと理解できるような、正確には理解できたような気になるものなのではないかと思った。そして、この解説の後の実演では実際にそのような状態で鑑賞したい、と強く思ったのであった。

解説が終わり、実際に能が始まると、それまで歌舞伎こそ一度見たことはあったものの、能といういまだ見たことのないものを見るという好奇心から胸の高鳴りが収まらず、全く眠たくはならずにはっきりと頭がさえた状態で見終えてしまったのである。

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