センター分け論

イマドキの大学生男子は基本的に2パターンに分類できる。マッシュヘアかセンター分けかである。大学生男子の髪型にこの2種類以外のものは存在せず、全員をこの2パターンに振り分けることが可能である。そしてセンター分けをさらに2パターンに細分化できる。「実利的なセンター分け」と「下心のセンター分け」である。

「実利的なセンター分け」とはその名の通り、実利面を追い求めた結果のセンター分けである。おじさんのセンター分けを想像してもらうのが一番早い。おじさんにセンター分けごときで個性を創出しようなんて考えているような、人生経験の浅い人など存在しない。単純に伸びた前髪が邪魔でそうしているか、癖毛でそうなっているに過ぎないのである。つまり、単純に前髪が邪魔でかきあげた結果としてセンター分けになっているような場合、こちらに分類される。

続いて、「下心のセンター分け」。あれはもう、新たな性の象徴なんじゃないか。おしゃれさや個性を追求した結果のセンター分け。しかしこの髪型が大量発生しすぎて、もはや没個性的な髪型。あるいは憧れの誰かや周りの大学生たちを真似して、その雰囲気をまとうためだけの髪型。自分も前髪を開いて額を出しているのだから、お前も股を開けと言わんばかりの髪型。その開かれた額にはただ一つ、下心が存在するのみである。というかキン肉マンさながら、もう「下心」って書いてある。私にはその文字が読める。センター分け男子の9割以上はこちらに分類される。

かくいう私も、センター分けにしていたことがある。私のセンター分けの歴史は高校3年生の頃に遡る。2019年当時、センター分けはまだ今ほど流行っておらず、センター分けで代表的な人物と言えばマカロニえんぴつ はっとりくらいなものだった。その彼も今ほどの知名度はなく、マイナーな髪型であったのだ。その時代にあって私はセンター分けを自分自身の個性として獲得し、あわよくばを目論んだ。あれはまさに「下心のセンター分け」であった。当時髪を短めにしていた私は、前髪が伸びるのを待った。そして大学に入学してすぐに私の前髪はセンター分け可能な長さに達し、さっそく計画を一歩進めた。あとはあわよくばの部分だけである。しかし計画が完遂されないまま1年が経った。どうも状況がおかしい。1年前と比べてセンター分けの人口が明らかに増えている。これはもはや個性などではない。ただ下心を晒して歩いているだけである。どうしていきり勃ったイチモツをひけらかしながら歩くことがあるだろうか。こうしてセンター分け最古参であった私はついにセンター分けをやめた。

しかし、最近では髪を切りに行くのが面倒くさかったり、そこにあまりお金を使いたくなかったりで、前髪が邪魔になるレベルまで伸びた状態が続くようになってきている。しかし正直、マッシュヘアはあり得ない。あんなのどう考えても前髪が邪魔になること間違いなしだ。どうして目にかかるくらいの長さの前髪を持ちながら、前髪をかきあげることなく生きていけるのか、私には理解できない。こうして私のセンター分けは復活した。しかし今度は「実利的なセンター分け」である。私のセンター分けは1割弱の方である。誰が何と言おうと、ここに下心は存在しない。あいつらとは違って。

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