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坂井さん

坂井さん。
坂井さんは私に最初会ってからしばらく、「俺はうえぞのに嫌われている」と思ってたそうな。私はいつもニヤニヤヘラヘラしているので、私にそんな印象を持つ人は珍しかった。私は坂井さんに対して人と喋るけど、あまり人と喋れない人だという印象を持った。人の顔色を伺うとかはまた別で、壁を作っているとかそうゆうんでもなくて、自分の言葉に対しての相手を、聞くとか見るとかじゃなくて、相手を待つ人だと思った。嫌な感じではない。何かを見せないなぁ、と思った。私も坂井さんを待った。

すごく仲が良いかというと、また違う。東京に住んでた頃からの付き合いだが。10回も会ったことはないんじゃないかな。
だが神戸に来てから3回は会った。1回は東京で、2回は神戸で。私が東京から神戸に住むと決まったときも、神戸に行くまでに会いたい人の中に坂井さんは居て、共通の友人も含めて会った。

坂井さんはたしか43歳で、確か15歳くらい年齢が違う。でもそれがなんだというのだろう。職種や年齢や性別がなんだというのだろう。
今日道を歩いてて、なんとなく良いなと思う看板の写真を撮ってたら坂井さんも同じところで写真を撮ってた。なんかいいねこれ、と言ってた。この人、すごく友達だー。
友達って、付き合うとか付き合わないとかそういう契約もなくて、会っても会わなくてもずっと続いていくもんで、でもその代わりお互いにその気持ちがなくなったらすぐ終わるもんで、簡単ですごく難しいんだ。なんかいいね、ね、いいよね、が続くのが友達なんだ。人は変わるからこれが中々難しい。いいよね、が変わるもんなんだ。

今日はすごく楽しそうだったな、坂井さん。私も楽しかった。待ち合わせ場所でやっと会えたね。そんな感じがした。神戸に来てからは会う頻度も減ってしまったけど、待ってる人や待っててくれた人とたくさん会えたのかな。どうかな。

元気にならなくてもいいよ、元気になれるその時まで、って曲がある。坂井さんもきっと坂井さんを待っていたんだろう。いつも誰かとの待ち合わせ場所が私の中にある。坂井さんとは1年後とか10年後でも、すぐに会えそう。時間じゃないんだ。会った時に、待っていた人と会えるかどうかなんだ。私の中には坂井さんを待つ場所がいつでもあります。


正直助かります、とても