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『イシャータの受難』【小説】(全37話)

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猫を愛する人たちに読んでほしい猫目線、登場人物は猫のみの小説です。読み終わったあとに決して後悔させない自信のある──そしてとても思い入れのある作品です。よろしくお願いいたします🙇
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記事一覧

第1話

 人間と同じく猫にも派閥がある。  おっと失礼。私の名はペイザンヌ。都内はN区にねぐらを…

15

第2話

 揺れる。  お尻が揺れる。  イシャータは今、草むらの中から一匹のトカゲに狙いをつけて…

7

第3話

──神様、許してください。私じゃなくて”佐藤“のためなんです。 『聞いておいてよかった』…

9

第4話

 疾風のように速く!  最近は走ることが楽しい。  イシャータはそう思っていた。彼女がノ…

7

第5話

 ジョン・レノンは名曲『GOD』の中でこう言った。「神とは概念であり、我々の痛みを計るため…

7

第6話

「ボクは大きくなったら“飼い猫”になんねん」  “佐藤”はそう言った。  佐藤とはイシャ…

8

第7話

 夢を求め旅立つ者もいれば夢に敗れ旅立つ者もいる。ならば帰ってくる者が答えを知っているかといえばそれは否だろう。  なぜなら生きている限り旅は続くのだから。  それは人間でも鳥でも、そう猫だって同じだ。  鳥といえば近頃やけに彼らがざわつくのを感じる。それが“驚き”なのか“喜び”なのか──鳥の心までわしゃに理解する術はない。  なぜならわたしはN区に住む野良猫、ペイザンヌだからだ。  ただ一点、かろうじて鳥たちがこう言っているのだけは聞き取ることができた。それはわたし

第8話

 私の名はペイザンヌ。N区の野良猫だ。  私の日課に決して欠かせない最重要項目のひとつに”…

3

第9話

 月明かりだけが照らす寝室の中で、イヌヤマのお婆さんは横になっていた。  庭ではまだ猫た…

5

第10話

 私の名はペイザンヌ。N区の野良猫だ。 『猫屋敷』の犬山の婆さんが亡くなった。  不幸中の…

7

第11話

 ヴァン=ブランは引き締まった体をのそりと起こした。 「仲間内で争うのは好かんが、おまえ…

4

第12話

『私の名はペイザンヌ、N区の野良猫だ』  皆が一斉に笑った。 『な……なんだ? なんで笑う…

4

第13話

 ミリーは昨夜からどうも様子がおかしい。佐藤はそう考えていた。 “何が”かといえばよくわ…

4

第14話

【イシャータ】 (また、彼の歌が聞こえる……)  飼い猫時代のイシャータはベッドの傍らで御主人様と一緒に眠りにつくのが常だった。  真夏の夜風が少しだけ開いた硝子戸のレースカーテンをふわりと膨らませる。イシャータは御主人様が寝静まったベッドからそっと飛び降りてそこからベランダへと出た。“飼い猫”の証である赤い首輪がチリンと揺れる。  初めて歌声が聞こえたのもこんな満月の夜だった。月はあれから二度姿を変え、みたび完璧な円を夜空に描き出している。  六十日が過ぎ、九十日