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切貼民話@山梨県甲州市「踊石」

切貼民話師としての活動第2回目のブログ。
今回は、山梨県甲州市にある「踊石」を訪れて創った切貼民話です。

こちらが「踊石」。石の表面に「デエラポッチ」の足跡だと言われる2つの窪みがあります。

切貼民話についての説明は、こちらのブログをご覧いただけたらと思います。

踊石について

この踊石には「デエラポッチ」という大男の足跡と言われる窪みがあるのが特徴。以前働いていた埼玉県坂戸市にもダイダラボッチ伝説があり、その足跡だとされている「足跡公園」という場所があったなぁ…。

地域の図書館で調べてカードを作りました。実際に足跡公園にも訪れましたが写真データが見当たらないため割愛させていただきます。

踊石の近くにはデエラポッチについての説明がありました。

巨石の窪みからこういった物語を想像することができる先人たちの感性と、それを大切にしていく地域の方々の思いが素敵です!

人間の業の範疇では理解できない不思議な現象に対して、こうした想像を膨らませることができた先人たちの感性が素敵だなぁと思います。

切貼民話のプロセス

そんな踊石周辺をフィールドワークし、直感的に惹かれた物たちを撮影。切貼民話の素材にしていきます。

蚕影山(こかげさん)信仰の石碑がありました。この地域でも養蚕が盛んだったのでしょうか。
こちらは道祖神。このあたりでは丸い石のタイプの道祖神のようです。
なんだか躍動感のある植物。この植物自体がデエラポッチのよう。
この切り株も、なんだか生きているような気がします。
懸命に天へと伸びる姿、なんだか可愛らしい!
フィールドワークをした時の雲。なんだか手のような形ですよね。

フィールドワーク後は写真を印刷して切り取っていきます。

素材を切り取る時には、

事前に作品の完成形を決めないこと…例えば「踊石」なら「何が踊っていたのだろう?」など大まかなコンセプトは意識することもあるけれど、具体的に「こういう作品にしよう」と前もって決めないようにしています

物の輪郭に沿って切り取ること…撮影した物の端が切れてしまった場合には自然な形になるよう調整しますが、対象となった物の形を生かし、極力輪郭に沿って切り取るようにしています。画面内に複数の物が写っている場合は、直感的に目に入ったものを切り取ります。

を意識しています。

こうして切り取られた素材たちをあれこれ並べ替え、「これだ!」と思った配置ができたら糊で貼っていきます。

個人的には、タロット占いをしている時の感覚(占うテーマがあり、それに対して事前に答えは持たないようにして、ランダムに出てくるカードの並びから直感的に湧いてくるメッセージを大切にする)に近いです。どんな閃きが生まれるか分からないからこそ面白い…。そんな感覚で切貼民話を創っています。

踊石の切貼民話

さて、こうしてできた今回の「踊石」の切貼民話は3つ。

まずはこちら。

踊石の上で踊る妖精。踊石の足跡はそこまで大きくなかったことから、デエラポッチよりも可愛らしい存在が踊っていたのかも知れません。この妖精は草花の誕生を祝うダンサー。春になると山から降りてきて草花の芽吹きを踊りながら祝福します。巨石に足跡が残ったということは、長年祝福の踊りが続いている証。この地が自然の恵みに満ちていることを表すのが、この「踊石」なのかも知れません。

思うまま並べた結果こうなったので後付けですが、坂戸市で見た「足跡公園」よりも小さな足跡だったなぁと感じたことが、この妖精の表現に繋がったのかも知れません。なお、どう並べてもA4用紙からはみ出すため、この作品だけ現時点では唯一スケッチブックに表現することとなりました(それでもはみ出していますが)。


2つ目はこちら。

「おかいこさん」が獲れるよう踊るひょっとこ的存在・トリックスター的存在の神様。手のひらをクルクルと翻しながら踊り、最終的に天に向くか地に向くかで豊作・不作が決まるという。

この切り株が、まさか顔になるとは…!
コラージュというアプローチを用いることで、本来なら操作が難しい大きな物や形を固定することができない物(雲や水など)も操作可能になり、向きや角度を変えて組み合わせることによって新たな視点が生まれるのだなぁと改めて感じました。

3つ目は、これまでの2つの作品を作った後に残った素材たちを組み合わせた切貼民話です。

「オドリーシ」。「踊り師」が訛ってこう呼ばれるようになった。祝典の踊りが行われるタイミングでどこからともなく現れ、始まりの灯を掲げて踊り手たちを呼び集める。甲州弁では命令形を和らげる表現として「〜し」と言うそうで、「おどりーし」=「踊りなさい」とも掛けている。(実際にこう表現するかは分からないけれど…)

前回の「裂石」でいうところの「オサキサマ」ポジションの「コラー獣」(コラージュで生まれた幻獣)です。切貼民話を創る中で余った素材たちをどう表現するかを考えるのが毎回結構楽しいです。

最後の甲州弁に因んだ駄洒落的な解釈は「こじつけじゃん!」と言われればそれまでです。けれど、先人たちも巨石の窪みをデエラポッチと結びつけたり、不思議な事象を地名と結びつけたりと、未知の事象と既存の事象を臆することなく混ぜ合わせ、仮説を立て、生き生きと表現していたように思います。

「今はこうだ!」「本当はこうだ!」「科学的にはこうだ!」という「正しい−誤り」という二項対立的な解釈を超えて、既存の要素も空想や幻想もごっちゃにして新たなものを生み出す…こうした先人たちの在り方を継承していくアプローチの1つとして切貼民話を実践しているつもりです。

長々と書いてしまいましたが、結構愛嬌あるでしょ?「オドリーシ」💓

まとめ

以上、「踊石」の切貼民話でした。
実際に民話が伝わる地には、なんらかの民話を生み出す要素がある…そう思いながら訪れることで、何気ない風景の中から不思議なもの・わくわくするものを見つけることができます。
引き続き各地を巡って切貼民話を制作していきたいと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました!

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