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俺と鏡のなかの俺〜Jack Pot〜



昼間、例の副編集長に「エモポップ・パンク」を散々けなされた俺(SHIGE)


自分たちがやっていることに少し自信をなくしてしまった。


おまけに「路線変えたら?」って。


追討ちをかけられたその一言で、頭が沸騰しそうだった。



Gr.のカズキの部屋でめちゃめちゃ愚痴りまくってしまった。




「腹減ってると余計に頭に来るから飯食おう!😉」って、カズキが俺の大好きなペペロンチーノやスティックサラダを作ってくれて、ビール呑んで。



幾分気持ちが和らいだ俺。


気つけば日付が変わっている。


「俺先に寝るね。SHIGE泊まってっていいぞ」


「うん、ありがと。おやすみ」



まだ眠れそうにない俺は、壁にもたれてシトシトと降りしきる雨音をぼんやりと聴いていた。



今作ってる曲、上々の出来なんだよな。


ポン酢やまっちゃんも大絶賛してくれたし。


何が路線変えたら、だよ!

ふざけんなっっ



「だいぶん腹立ってるみたいやな😁」



え…誰?「カズキ起きてるのか?」



「ちゃう!こっちや」



部屋に立て掛けてある姿見の鏡の中で、腕を組んでニヤッと笑って立っているのは…?


ええっ!😳 俺?マジか!!



「めっちゃ凹んでるな。ちょっとそっち行くわ」


おいおい!鏡から出てくるのか!?


「ちょっ、いいから!来なくていい!

カズキが起きるから…💦」


「大丈夫や。起きひん」



鏡の木枠を「よいしょ」とまたぐもうひとりの俺。 


「はぁ〜やれやれ」

横に来てドンと座った。



…なんかでっかい双子が並んで座ってるみたいだ。



「昼間は大変やったな。

悔しくてしゃあないやろう。まあ、あの女の言い方。あれはないわな」


なんだ。事情知ってるのか。



またフツフツと悔しさがこみ上げてきた。


俺は再び思いのたけをぶちまけたのだが、話しているうちにどんどん迷いが吹っ切れて、頭の中がクリアーになっていくのを感じた。



「そうか。ほんで、お前自身はこれからどうしたいんや?まあ、もう決めてるやろけどな。」



「うん。やっぱりこのまま信じた道を行く。


路線変更はしないよ。絶対譲れない。


それに今作ってる曲、結構自信あるんだ!

明日の打ち合わせまでに仕上げようと思う。」



「確か…あの副編も来るんやろ?

なんやったら明日だけお前と入れ替わったってもエエぞ(笑)」


「い、いや!それは困る!ダメ!!ぜーーったい

無理!!」



だってさあ。


そのコッテコテの大阪弁でブワーっと捲し立てられてみろ。

全員目が点になるだろ!!



あ、でも。


副編に向かって大阪弁でボロカス言ってる俺を想像して、ちょっと吹き出してしまった。



「ハハハ!元気出てきたみたいやな。

ほんなら俺そろそろ戻るわ。」


「うん。あ、もう出てこなくていいぞ(笑)」


「ふ〜ん。ほしたら今度はスタジオの鏡から出て来たろか😁」


「おおおい!それだけは勘弁してくれー😂」



俺たちは互いにクスクス笑い合い、グータッチをかわした。



「またな!」


そうしてもうひとりの俺は鏡の中へと消えていった。




いつの間にか雨がやんで、空が明るくなっている。



よーし!

ぜ〜ってぇぇカッコいい曲にしたるからな!



うっすらと差し込んだ朝日を受け、鏡はキラキラと輝いていた。

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