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詩を読むということ

 最近短歌がブームになっているらしい。Twitterを初めとしたSNSと短詩型文学である短歌の相性が良かったことや、同じ短詩型文学でも俳句は季語を使用しなければならないのに対し、短歌が比較的自由に創作できることなどが要因だとか。

 翻って「詩」はどうだろうか。「現代詩ブーム」などという言葉は(少なくとも最近)聞いたことがない。小説を読むのが好きですという人はよく聞くが、詩を読むのが好きですという人はあまり聞いたことがない。

 でも詩もいいんですよ、これがなかなか。
 ということで「詩の読み方」と書いてしまうとおこがましいけど、普段詩を読むときに何となく意識していることを書きます。


・読むか読まないか決める

 これがまず大事。その詩を読むか読まないか決める。詩はやっぱり自由で、多種多様な作品があって、なので一篇の詩を最初から最後まで通して読んでみたけど、結局自分の好みでは無かった、ということが頻繁にあります(少なくとも自分は)。

 それをなるべく避けるために(と言っても、自分の好みでは無いと思っていた作品が後々好みになるということはままあるのですが。それは後述)、取りあえず「よし、この作品は自分の琴線に触れそうだ。試しに読んでみよう」と決断するために、まず何をするか。それが「作品全体をぼんやりと眺めてみる」です。

 書かれた言葉の意味を取ろうとせず、また作品の先頭から読んでみようとせず、取りあえず「作品全体」をパッと目に入れてみる。それだけで例えば「作品全体の長さ」「改行の数」「使われている言葉にひらがなが多いか、漢字が多いか」「散文っぽいかどうか」等々、意識せずとも何となく伝わってくる情報があります。

 小説や映画のように先頭から読む(見る)ことを強要されないのが、詩の良いところ。全体をパッと目に入れる。そして何となく「気に入る予感」がしたら、そこがスタートライン。さっそく読み始めてみましょう。

・意味を取ろうとせずに取りあえず読んでみる

 読むと決めたら、いよいよ作品の先頭から読んでみます。このとき注意するのが、「書かれた言葉の意味を無理に取ろうとしない」こと。小説だと、読んでいる流れの中で意味がよく分からない文章に遭遇したりすると、意味を理解しようと再度読み直してみたりすることがあると思いますが、詩の場合はそのような場面に遭遇しても取りあえず一度通読してみることをおすすめします。これも後述しますが、詩を読むということは「意味を取ることが目的」では無いと思うからです。取りあえず最初から最後まで読んでみる。そうしたら次のステップです。

・もう一度読んでみる(ただし今度は通読しなくてもよい)

 一旦最初から最後まで読んでみると、きっとその作品の気になる箇所が何カ所か見つかると思います。「意味がよく分からなかったところ」「表現がきれいだと思ったところ」「不愉快に感じたところ」等々。今度はそういったところに着目しながら読んでみます。その時再び通読してみるのも良いですが、その気になる箇所だけを読んでみるのも一つ手です。 

 気になる箇所だけを読むと、恐らく最初に通読した時とはまた違う印象を感じると思います。「最初に読んだときはよく分からなかったけど、もう一度読むと少し分かった気がする」「最初に読んだときは美しい表現だと思ったけど、もう一度読むとそうでもない」とか。ここまで来ると不思議なことが起こります。気になる箇所に引きずられて、他の箇所の印象が、雰囲気が、意味がどんどん変わってくるのです。

 先ほど、「詩を読むということは「意味を取ることが目的」では無いと思う」と書いたのは、「詩に一つの決まった意味や主題なんてない」、もしくは「意味を取ろうとしても、目を離した隙にまた意味がころころ変わっていく」と思うからです。読むたびに印象を変え、時に意味も変え、同じ作品のはずなのに全く違った作品に見えてくる。これが詩の最も好きな特徴です。

・日を改めて何度も読んでみる

 これは是非おすすめです。日を変えて読んでみると、今まで気付かなかった新たな発見があったり、前読んだときは好きだったけど今日はあまり好きでは無くなっていたり、逆に前読んだときは好みじゃ無かったけど今日は何故かやたらと感動してみたり。

 これは詩に限ったことでは無いと思いますが、自分のその時の気持ち、体調などによって、何ならその日の天気、温度、自分のいる場所、時間などの違いによっても、読んだ作品が全く違って見えると言うことはままあります。ただ詩は特に顕著だと思います。

 なので自分の好みでは無かった作品が後々好みになるというのは、日常茶飯事。是非一度読んだ作品を(あるいは読もうとして諦めてしまった作品を)また日を変えて何度も読んでみてください。

・好きな箇所だけ読んでみる

 これもおすすめの読み方です。例えば音楽で、「このサビの部分が好き」「間奏が好き」など、曲全体も好きだがその中でもこの部分が特に好きということはよくあると思います。詩も同じで、「この2段落が好き」「この文末が好き」など、作品全体だけでは無くその中の特定の部分が好きになるということが、(少なくとも自分は)よくあります。

 そういう「好きな箇所」が見つかったら、是非そこだけ読んでみてください。そこだけ読んでみるのを繰り返しているうちに、だんだん他の箇所も読みたくなってくるかも知れません。そうしたら作品全体を読んでみてください。きっと最初に読んだ時とは、別の作品のように感じることうけあいです。


 ということで、詩を読むということについて、自分なりに意識している「5つのステップ」を挙げてみました。

・読むか読まないか決める
・意味を取ろうとせずに取りあえず読んでみる
・もう一度読んでみる(ただし今度は通読しなくてもよい)
・日を改めて何度も読んでみる
・好きな箇所だけ読んでみる

 また日を改めて、今度は自分の好きな詩人の方の作品を紹介してみたいと思います。

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