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新生児期の保湿はオイルでも良いですか?

プロローグ1 「新生児期から保湿剤を塗る」という方法が普及してきています。

新生児期から保湿剤を定期的に使用すると、アトピー性皮膚炎や皮膚トラブル、そしておむつ皮膚炎の発症を予防するという考えかたは一般的なものになってきました。



プロローグ2 何を塗るといいのか?

しかし、「何を塗るのか」に関してはこの原稿を書いている段階では未だに結論はでていません。それぞれの効果を比較する「ランダム化比較試験」が不足しているのです。


コストを比較した報告はあります。

軽症~中等症のアトピー性皮膚炎患者39人に対し、グリチルリチンを含む保湿クリーム、セラミドを含む保湿クリーム、ワセリン系保湿剤を比較して効果に差はなく、コストはワセリン系の保湿剤が最も安価だったという報告があります。


一方、セラミドが有効かもしれないという、「理論的な」報告は少なからずあります。

Sugarman JL, Parish LC. Efficacy of a lipid-based barrier repair formulation in moderate-to-severe pediatric atopic dermatitis. J Drugs Dermatol 2009; 8:1106-11.


また、アトピー性皮膚炎の悪化を防ぐために、「保湿成分が含有されていた方が良い」というランダム化比較試験もあり、もし購入されるのであれば保湿成分が含まれた方が良いと、私は考えています。


なお、上記の報告でも言及されている「EpiCream」はAmazonでも取り扱いがありません。海外のサイトでみつけることができますが、極めて高価でした(30mlで300$以上!)ので、普通は使用できるような保湿剤ではありません。


良く尋ねられるのは、「オイルはどうでしょうか?」とういう質問です。

保湿剤がどれがいいか?に決着がついていない以上、オイルを選択肢とできるかもしれません。

そして、「天然オイル」を選択される理由として、患者さんは、「天然由来」のほうがリスクが低いと考えることが多いからです。もしオイルが有効で害がないのであれば、診療に有用でしょう。

そこで今回は、赤ちゃんに対し、オイルがどれくらい皮膚炎の発症を減らすのか、害はないのかを考えてみたいと思います。


この記事は「医療関係者向け」です。でも、ご興味がある方はだれでもOKだと思います。



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第1章 新生児に天然オイルを使用したランダム化比較試験にはどのようなものがありますか?

 1.1 オリーブオイル

オリーブオイルに関しては、ランダム化比較試験が実施されています。

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