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2023年5月25日 【最新論文紹介】日本における新型コロナ流行前・流行中のRSウイルスの流行の変化は?

■ ブログで公開した内容の深掘りです。

( 本記事は、メンバーシップ(スタンダード・アドバンス)の記事です。メンバーシップの概要は、こちらをご参照くださいm(_ _)m)


コロナ流行中に感染予防により流行が収まっていたRSウイルス感染症が2021年に大きく流行しました。

■ RSウイルスは多くの場合、2歳までにほぼすべてのひとがかかる感染症です。

■ 2歳未満の子どもがRSウイルスに感染すると、30~40%が気管支炎など、のどより下(下気道)の感染症に発展します。

■ そして、気管支より先の細気管支まで炎症が進み細気管支炎を起こすこともあります。実際に、入院する子どもの44%は生後2ヶ月未満です 。

■ すなわち、小さい子どもほど、RSウイルスに感染したときのリスクが高くなるということです。


■ 2020年はほとんど流行しませんでしたが、2021年におおきな流行が見られました。

■ この理由として、米国小児科学会の記事によると、2020年から21年にかけてRSウイルスの流行が抑えられたため、その期間にRSウイルスにさらされていなかった乳児にRSウイルスに罹患するリスクが高まったのではと述べられています。


■ 同様の現象は世界各地で見られ、感染の年齢層も変化しました。

■ 英国では、小児のRSウイルス関連の疾患をモニタリングし、研究がおこななわれています。そして最近、その一部が報告されています。

Bardsley M, Morbey RA, Hughes HE, Beck CR, Watson CH, Zhao H, et al. Epidemiology of respiratory syncytial virus in children younger than 5 years in England during the COVID-19 pandemic, measured by laboratory, clinical, and syndromic surveillance: a retrospective observational study. The Lancet Infectious Diseases 2023; 23:56-66.

https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(22)00525-4/fulltext

■ そして最近、日本でおこなわれた検討も公開されていましたので共有します。




この論文でわかったことをざっくりまとめると?

愛知県と岐阜県にある18の総合病院の小児科に、RSウイルスによる急性気道感染症で入院が必要となった6歳未満の小児を後ろ向きに登録し、新型コロナパンデミック前(2019年1月~2020年4月、1675人)とパンデミック中(2020年9月~2021年12月、1297人)の臨床的な特徴を比較したところ、

✅ RSV感染症患者の平均月齢は、COVID-19パンデミック中は以前より有意に高かった(17.4カ月 vs 13.7カ月、P < .001)。
✅ 新型コロナパンデミック中にRSVに感染した患者では、X線撮影によるconsolidation陰影の頻度が低く(26.1 vs 29.6%, P = .04)、呼吸補助(42.2 vs 48.7%, P < .001) の期間や入院期間(5.7 vs 6.0 day, P < .001 )も短かった。


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noteでは、ブログでは書いていない「まとめ記事」が中心でしたが、最近は出典に基づかない気晴らしの文も書き散らかしています(^^; この記事よかった! ちょっとサポートしてやろう! という反応があると小躍りします😊