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高校2年生の5月のこと。

おなかがぺこぺこだった日の体験談。おっぱいネタが半分くらいなので注意してください。


進級してお小遣いの額が増えたこともあって、ご飯我慢してお小遣いを貯めることが少なくなっていました。
そのせいか、当時気に入っていたブラジャーのキツさが無視できないものになってきていました。かなりお気に入りで、だましだまし着けてたのですが、流石に苦しくて、痛くって、「ダメだ」って認めるのがすごく辛かった記憶があります。

なので、進級してからしばらくはちゃんと一日3食食べていたけれど、おなかにぺこぺこを思い出させることにしたのです。

日曜日、ゆっくり起きてダラダラしてから、なんにも食べないままにお出かけ。
その時は特におなかも空いたりしていなくて、普通の感じでした。

特に目的地も決めていないまま電車に乗ります。休日のお昼間で空いていたので座ったところ、となりの人が手持ちの袋からパンを取り出して食べ始めました。
焼き立てなのか、いいにおいがこちらまでただよってきて、「おいしそう……」って思ったとたんにおなかがキュ〜っとしぼむ感覚!
昨日まで朝もお昼も食べていたのに、今日は朝ごはんを食べないままもうお昼ごはんの時間。おなかがこっそりと(ぼくも何か食べたいよ! 気づいてる? 朝ごはん食べてないんだよ! お昼ごはん食べよう!)って空腹感で一生懸命伝えてきます。
(おなかなりそう……っ!!)
って思いましたが、そこではならないまま、空腹感がふっと緩んで一安心。となりの人もパンを食べ終わっていたので、めでたしめでたし。

と思いきや、袋からまた出てくるパン! まだ出てくる! 次も出てくる! 次から次へとパンを取り出しては食べるとなりの人。おいしそうなにおいがこっちまでただよってきて、おなかの虫は我慢の限界! ってところで、たまにお買い物をする駅に着いたので、たまらず電車を降りました。

電車を降りて歩いているうちに、空腹感は消えていました。
でも時折出し抜けに、「ぐううううううううっ」「きゅるるるるるるるっ」ってぼくに「何か食べないの? 食べようよ」と訴えてくるので、服屋さんで店員さんに話しかけられているとき、下着屋さんで採寸してもらってるときはすっごくヒヤヒヤしていました。
採寸時におなかが空いていてなっちゃったこともありますが……この時は大丈夫でした。

採寸の結果、やっぱりサイズが増えていて、「これはまた今日からおなかいじめなきゃ!」と決意を新たにします。
その決意に気づいているのかいないのか、しばらく静かにしていて、空腹感も伝えてこなかったおなか。
でも、別のお店でなんとはなしにお洋服を見ている最中、急に

「うぐううううううううううううううううっっっ」
っておなかから大声が!!

びっくりして咄嗟に前屈みになっておなかを両腕で抑えるぼく。さっきまで全然空腹感もなかったのに、おなかが空いてるからなったのか、なったからおなかが空いたのかわからなくなるくらいの唐突さでした。おなかの音のスピードに合わせておなかが背中に吸い込まれていくような空腹感がぼくを襲います。

「ぐぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょ……」

おなかの自己主張は続きます。急に襲ってきた強烈な空腹感にまごまごするぼくじゃ腕でおなかを押さえ込んでやり過ごすのが精一杯……

「ぎょおおおおおおっぐううううううううう……」

と三連続で大声を上げたおなかがいったん収まったところでハッと顔をあげると、周りのお客さんの視線が集まっているような……!!

そのまま恥ずかしくなって足速にお店を出ました。

(ちょっとお高いおしゃれな服屋さんの中でおなかぺこぺこなのなんだか恥ずかしいな……)と思いながら外を歩いていると、さっきまで目につかなかった食べもの屋さんがやたら目に付くように……!
空腹感もまだ消えてなくて、おなかが背中に吸い込まれそう。「ぐううううううううっっ」「ぎゅうううううるるるる」と主張し続けるおなかを無視し続けるのが大変で、勝手に目が食べもの屋さんを見つけてしまいます。

そこで、大したお金を持ってきてなかったことを逆手に取って、食べもの以外のものを買っておなかをいじめてやることにしました。
でないと、思わず何か買い食いしそうです。

ちょっと悩んで、新しい下着を買うことにしました。
気に入ったものを一目惚れで買うショッピングと違って、必要に駆られて買うショッピングはあんまり楽しくないですね……ダイエットして、お気に入りのものに体のサイズを合わせよう、と決意します。
今買えそうなものの中から好きなデザインで選ぶと、結局今のブラと同じ◯カップまでしかサイズ展開がないブラが最終候補になってしまいました。キツくなったから買い替えに来たのにサイズ同じ? 馬鹿なの? でも今より大きいやつはかわいくないやつか、すごく高いものしかないよ!
ということで、アンダーを上げて買ってみることにしました。(トップサイズは言われた数字と同じだしいいよね……)フィッティングは……いまにもおなかが大声を上げそうなので省略。レジ前では
(これを買ったらご飯食べられないけど……今のブラもうキツいから、これを買わなきゃいけないんだ。ごめんね、我慢してね……それに、ここでご飯を我慢すれば今のブラもまた入るようになるから許してね)
とおなかに言い聞かせます。
おなかは空腹感を全く緩めず、いまにも大声で文句を言ってきそう……!!ですが、結局文句は言ってきませんでした。よかった、わかってくれたんだね。

家に帰って買った下着のタグを切ります。買いたての服のタグを切るのってちょっとワクワクする。仕方なく買ったブラでもそれは変わりません。(パンツもセットで買いました。念の為。)
ワクワクしながらゆっくりと手洗いして丁寧に干して……その間になぜか「ぐうう」「きゅるるるる」となるおなか。いや、下着食べないからね?
下着食べないし、お夕飯も食べるつもりはありません。お母さんがお夕飯代置いて行ってくれたのを見つけたので、ありがたく自分のお財布に入れておきました。
お夕飯代があって少し安心したからか、おなかの音が少し強めになり、ぐうぐうと声をあげてきます。「そのお金で何食べる? はやく何か食べよう!」とでも言うように。
でも無視。ゲームして過ごしているとおなかの音は次第に収まり、いつの間にか空腹感まで本当に消えてしまいました。

そのまま夜になってお風呂に入ると、おなかが久しぶりにぺったんこになっているような感じがしました。ぺったんこなおなかは諦めたのか全く静かで空腹感もありません。ただ、湯船に浸かると、おなかの辺りだけお湯が重いような気がします……おなかに力を入れて膨らませようとしても、お湯がやたらと重くておなかを膨らませられない……というか、うまく力が入らないような……
お風呂から出るともう寝る時間です。お夕飯食べないと夜の時間がたっぷりあっていいね。ゲームが捗りました。

布団に入って眠ろうとしましたが、なんだか、だんだんおなかが空いてきました……仰向けになってみるとおなかが重くて落ち込んでくるような……
次第にはっきりと空腹感を自覚します。「いつ食べるのかと思って待ってたけど、寝るの? まだ何も食べてないんだけど?」とおなかが今更ながらに怒り出したかのようです。

「ぐうう……ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐう……」

ゆっくりとした低い音がおなかから響いてきました。でも無視無視。おなかをいじめるためというより、もう食べていい時間じゃない。こんな時間に食べたら脂肪の思う壺です。

「ぐるるる……ぐぐぐぐぐぐぐうう、ぐぐうぐううううううううううん」

でもおなかはお構いなし。低くてゆっくりした音が、徐々に大きく、速くなっていきます。

(もうこんな時間だから食べられないよ。それにねむたいの。静かにして)
とおなかに言い聞かせます。ぼくもおなかのいう通りにするわけにはいかないし、おなかの聞き分けの悪さに少しイライラしてきました。
寝返りを打って横向きに。完全に寝る体勢になりますが、おなかも諦めません。

「ぎょおおおおおおおおん、ぐぐぐもももももももももも……」
「ぐうううう、ぎょおおおん、ぐぐおおおおおおおおおおおおお……」

割と容赦なくなり続けます。それでも無視し続けているといつの間にか眠っていました。


翌朝。月曜日。
昨日買ったブラジャーを着けていくことにしました。
ワイヤーをちゃんと体に当ててみると、カップの深さが足りないけれど、それは今までのブラと同じカップ数なので当たり前。でも今までのブラは胸があふれて出てくる感じだったのに、このブラはなんだか全体的に胸がつぶされて広がるような……。しかも、ワイヤーのカーブが胸の円周に対して大きいのか幅が広いのか、体の横(なんて言ったらいいのか、体幹の横の部分。おっぱいの生え際?より背中側)まで回ってきてしまってちょっと痛いのが気になります。アンダーも無理に大きいの買ったから当たり前だけれど、余ってしまって背中のところで指でつまんでいる状態。
着けてから手を放してみると、結果的に、ブラの前の部分が胴体から浮き上がって、なんだかカップがお胸さまをつぶしながら上に乗っかっているような感じになっちゃった。
(うー、全然合わない……トップは合ってるはずなのに……)
前が浮いちゃってるブラの下から、指が谷間に入るのに気が付いたので、抜き差ししながらそんなことを思ってぼやぼやしていました。すると、そろそろ時間がないことに気づきます。
(やべっ)
と急いで家を飛び出して学校に向かいました。この時点では、昨日なんにも食べてないことは全然意識していなくて、おなかも全く普通の状態でした。

小走りってほどでもなく足早に移動すると、アンダーが緩くて、胸もカップにしっかり入っていないからか、やたらと揺れる感じがします。5月も始まったばかりでまだ冬服の紺色セーラー服にベージュのカーディガンを着ていますが、ちょっと恥ずかしい。
ちょっと恥ずかしいので足を緩めてゆっくり歩きますが、そのせいか、学校最寄りの駅に着いた頃には結構ギリギリ! 学校の校門が見えた時には門を閉めるために先生が控えています。
(やばいかも!)
なりふり構わずダッシュ!
先生に「ギリギリだったなぁ」などと言われながら校門をくぐり、教室へ向かいました。

教室に着いて友人にまで「お寝坊さんか?」などと言われながらお茶を飲みます。ダッシュしてカラカラな喉に染み渡るお茶が気持ちがいい……と、飲んだお茶がおなかの中にサーっと流れ込んでいくのがやけにはっきりと感じられます。
(そうだった……昨日からなんにも食べてないけど、おなか、黙っててね……)
そっとおなかに言い聞かせますが、まだなんのリアクションも返ってきません。逆に怖いよ……

おなかの虫もお寝坊なのか、結局1時間目は全く空腹感もおなかの音もなし。
なのに、2時間目が始まってすぐくらいの頃、急におなかが誰かに握り締められるかのような感覚が……!!
(うそ……まってっ!!)
とっさに背筋をピンと伸ばして大きく息を吸いこんで内側からおなかに力を入れながら息を止める……っ!!!
10秒か20秒か、限界まで息を止めてからゆっくり息を吐いたらおなかを握り締めるような力がが少し緩んで、いったんはおなかがならずに済んだみたいです。でも、おなかが握られてしぼむかのような、キュウっとした感覚は緩んでもなくなってはいなくて、その違和感が辛くて、おなかを抑え込みたいような衝動に晒されます。そっとおなかの前で空間をつくってるカーディガンの表面だけ指先で触ってみますが、もちろんなんの意味もありません。
(だめだめ……普通にしてなきゃ……まだ2時間目も始まったばっかりなのに……)
おなかが握り締められて、のどまで引っ張られるみたいな感じが、じわじわと強くなっていきます。思わずのどがこくんと動きそう……
じっと耐えて、もうダメというときには背筋を伸ばして息を止めて……というのを何度繰り返したことか。いつのまにかおなかに伸ばされた見えない大きな手はぼくのおなかを握るのをやめてくれたようでした。すごく長く格闘していた気がしたけれど、時計を見ればまだ2時間目も半分経ってません。
(先が思いやられるなぁ……)
心の中でそっとため息。

不安が的中したのは2時間目ももう終わるころ。先生が次の授業では頭に小テストすると言っていたときでした。
急におなかが見えない大きな手に握り締められて背中の向こう側に引っ張られる感覚。
(だめ……!!!)
背筋をピンと伸ばして大きく息を吸い込む! と頭ではわかっているけれど、授業が始まってすぐの頃に握り締めてきた腕とは段違いに強い力で、しかも一気にぎゅうぎゅうと握りしめてきます。その握り締められるかのような空腹感を少しでも和らげたくて、勝手に体が前かがみになって両腕がおなかをかばうかのように巻き付いていく。

「ぐぎゅうううううううん、ぐううおおおおおおお……」

(なっちゃった……!)
しかもこの体勢!! いかにも「わたしのおなかがなりました!」と全力でアピールする姿勢!!

「ぎょぎょ、ぐるる……」
「ぐるるるるる、るるるるううううん、ぐうううううううううう……」 

あんまりにも恥ずかしくって、しかもまだまだなり続けそうで、顔があげられないし、おなかを抑え込むのをやめられない。
でも、
「以上が出題範囲だ。よく復習しておくように。以上、号令」
という先生の言葉にハッと顔を上げられたのは学生の鑑だと思います。
(テスト範囲聞き逃した……!!)
肝心なところはそれどころじゃなくて聞いていなかったのですけれど。
(誰かに聞く? でも「おなかなってて聞いてなかったから教えて」とか、言えるわけないよ……)
日直の号令で礼をしながら、すこし鼻の奥がツンとするような感覚がして自分でもちょっと引く。でもみじめな気持ちがぶわわって広がるような感じがしてきつかった思い出があります。

2時間目が終わり、どよんとした顔で一息つく間もなく友人がにやにやしながら話しかけてきました。
「よのちゃん、おなかすいちゃったの?」(こいつがちゃん付けで呼んでくるのは、たいていこういう風にからかいたがる時だ)
ちょっとイラついてしまったのでそっぽを向いたらみんな三々五々教室から出ていくのが目に入ります。えっと、次の授業は……体育だ。
「すいてないけど? 行くよ」
務めて冷静に、冷たく答えて立ち上がる。そこではたと気が付きます。
(どうしよう! 今日体育あるの忘れてた!!)
「そう? ところで次の小テスト難しそうだね~」
ここで小テストの話題を出す友人は、もしかしたらぼくがテスト範囲聞いてなかったことに気が付いてて、それはおなかを押さえるのに必死になっていたからと知っていて、このネタでもう少しいじれると踏んでのものだったのかも知れません。
(やべぇ……今日のブラぜんぜん合ってないし体育とかできる気がしない……)
でも、ぼくは全くそれどころじゃない。ロッカー室に向けて一歩二歩踏み出すたびに、胸に感じる重力がいつもの2倍にも3倍にもなったかのように感じながら、友人に生返事をするばかりでした。

着替えて体育の時間になりました。
着替えている最中はとにかくお胸の方が不安で仕方がなかったせいか、昨日からなんにも食べていないままで体育をしようとしていることに気がついていませんでした。
着替えて校庭に出て、トラックを走ります。高校の体育はまずはトラックの外周を走って、それから整列して準備体操、そのあとで授業に入るという流れだったんですよね。

走り出すと脚が重たい!! 全然動かない!! ……多分おなかが空いていて、体を動かすエネルギーが全然なかったのだと思いますが、基本的に体を動かすのが大嫌いなのであまり普段と変わらなかったかも知れません。たらたらと走っているのか歩いているのかわからない程度の速さですが、お胸もいつもよりすごく重たい!! ゆっさゆっさしている気がする……!! 恥ずかしくて腕で胸を抱え込みたいくらいですが、そんなことしたらさらに目立つのでぐっと我慢します。

と、周回遅れになっていたぼくに後ろから友人が追いついてきました。
「こら、ちゃんと走りなさい!」
「……むり」
笑いながら叱ってくる友人にそっけなく返事をしたところ、友人は笑顔を一層キラキラさせて「よのちゃんおなかぺこぺこで走れないかな〜?」と言い放ちました。
ぼくも単純なもので、恥ずかしさのせいかカチンと来てしまって、ぐっと脚に力を込めて腕を大きく振って急加速、友人から距離を取ろうとするのですが、「お、頑張るね〜」と、友人は悠々とついてくる。
「〜〜〜!!」ぼくも結構頑張って走(っているつも)り(になり)ますが、全然引き離せない。「がんばれ、がんばれ」と友人に追い立てられながら走っていました。

少し走っていると、急に胸がぎゅうっと締め付けられる感覚!! というか痛い!! 物理的に締め上げられてる!!
お胸が揺れた拍子に、胴体から浮き上がっていたブラジャーの前の部分が、カップの下のワイヤーが、お胸さまに乗り上げてしまったようです。
物理的に胸がキツくて呼吸ができなくなって、上がっていた息がさらに苦しくなる。急に体に力が入らなくなって目の前がチカチカして浅い呼吸がさらに浅く速くなる。でもくっついてくる友人に「ブラがずれて苦しくなって走れない」なんて知られたくない。
必死で脚を前に出し続けますが、空腹のせいもあるのか、目の前のチカチカが一気に広がって真っ直ぐ走るどころか立っていられなくなって……

気がついたら友人に肩を借りて息絶え絶えになっていました。
よく覚えていないけれど、木陰に座らされて、見学しているように言われます。保健室行くか聞かれて、弱々しくも断ったような気もします(おなか空いているから&ブラがきついからで保健室行くなんて恥ずかしい)

木陰には先客がいました。
脚を骨折して体育を見学していたMちゃんです。ちょっと派手目の子で、ぼくみたいな陰キャとはあまり接点がない子。ただ、必要があれば朗らかに会話するクラスメイト程度の仲でした。

「どうしたん? 大丈夫?」
気遣ってくれるMちゃんですが、ぼくはまだ呼吸がうまく整っていないし、なんなら胸が苦しくてまだはあはあしてました。なので、Mちゃんに答えられず。
「苦しいの?」と背中をさすってくれますが、呼吸の合間に「大丈夫……。ちょっと、向こう向いてて……」とまだはあはあしてるぼく。
Mちゃんは訳がわからなかっただろうけど向こうを向いてくれたので、ぼくは体操服の背中に手を入れて……

プチっ……

ブラのホックを外してしまいました。
ホックを外しただけでブラはそのまま胸の前にあると言っても、近くにクラスメイトもいるしそこはグラウンドで屋外なのに!! と後から考えると(何しているの!? そんなに苦しいなら保健室行きなさい!!)って感じなのですが、その時はもう何が限界だったのか、そうするしかないように思えていたんでしょう。
胸の重さがさらに増しますが、苦しさはなくなります。ブラジャーの締め付けから解放されて、思いっきり深呼吸……したらむせました。
「ちょっと! 大丈夫?」と結構激しくむせたのか、Mちゃんが寄ってきてまた背中をさすってくれます。
しばらくゴホゴホしながら呼吸を整えていましたが、落ち着くまでMちゃんは背中をさすってくれました。
「ありがとう……落ち着いた」とぼくも呼吸を整え終わってお礼を言い、Mちゃんの手も背中から離れた……ところで、(あれ!? 背中……ってことは、ブラホック外したの気づかれちゃったんじゃ!?!?!?)と内心パニックになるぼく。
すると、Mちゃん、
「大丈夫? 走ってて苦しくなっちゃった?」と聞いてきました。
(あっ……これ気付かれたやつだ……)とぼくも観念します。
「うん……ちょっとサイズ合ってなくて……」
「たーいへんだね……」
ぼくの見立てでは(なんの?)Mちゃんのお胸はまぁまぁ小ぶりな方、なことが関係あるかどうか、ちょっときまずい雰囲気が漂います。

そのまま無言で遠巻きに体育に励むクラスメイトを見ているのですが、沈黙に耐えられなくなって、そしてぼくからは何にも気遣ってなかったことに気がついたので、Mちゃんの足の具合を聞こうとしました。
「あっ、あの、Mちゃん……」

「ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぅぅぅぅ……」

「あ、足は大丈夫?」ぅぅぅぅぐぎゅるる……」
「……足はもう大丈夫。もうギブスも取れたし」
「そ、そっか、治療大変だったね」
突然おなかからゆっくりと長く響く低い音がし始めたのですが、頑張って無視。

「ありがと、よのも大変だったね」
「あ、う、うん、ありがとう……」
「……それで、よのは」

「ぐゅううううううううううううんん……ぐぐうぅ」
Mちゃんの言葉を遮って、速くてちょっと高めの音がおなかから飛び出します。おなかがなっている間待っててくれるMちゃん! そんなことしないで! おなかの音に耳傾けないで!

「大丈夫? おなか空いてるの?」
「ぐぐぐぐううううううううううんん」

おなかがすかさず返事をするのがあまりに恥ずかしくて、体育座りの脚とおなかの間に腕を入れてぎゅっと押さえ込みます。
「へへ……ちょっと、空いてる……」
「食べないと本当に倒れちゃうよ」
「あ、うん……ごめん、気を付ける……」

さっきは友人が受け止めてくれてたのか、ギリギリ倒れなかったことを指しているかのように「本当に」を強調していうMちゃん。真面目な顔がちょっと怖くて、ヘラヘラ笑いも引っ込んでしまいました。おなかの音聞かれて恥ずかしい、と言うより、本当に惨めな感じがして体育座りで足をもっと体に引き寄せて小さくなるしかありませんでした。
このあとは会話もなく、ただ時折ぐーぐーなるおなかの音をBGMにして体育を見学していました。

体育が終わるころ、見学者も呼ばれて整列。
足を怪我しているMちゃんが立ち上がる時に手を貸すつもりが、立ち上がるときの立ちくらみが酷くて逆に介助される。好きで怪我した訳じゃないMちゃんと違い、ぼくはぼくの勝手でおなか空かせているのに、と思うと惨めな感じがさらに増して、涙ぐみそうです。

整列するみんなのところに戻ると先生に心配されますが、誤魔化して整列。号令に合わせて礼をして授業が終わります。
校舎に向かう前に友人のところに行ってお礼を言います。

「あの……さっきは、ありがと……」
「もーびっくりしたよ! 大丈夫?」
「う、……今は、大丈夫」
「保健室とか行かなくていい? 次の授業受けられる?」
「大丈夫……」

友人の包容力が結構すごくて、子供のようになってしまうのがちょっと恥ずかしかった思い出があります。

そうこうしている間はおなかも諦めたように一旦静かになっていて、ふらふらするものの着替えて次の授業のため教室に戻りました。
(ちゃんとブラも着け直しました)

最後の4時間目の授業は2時間目にも増して授業どころではありませんでした。
体育は結局見学していたのに、持って行かれた体力が全然回復しなくて頭がぼんやりして、体が重たい。左肘を机について完全に重心を預けて、ついでにお胸を机に預けて寄りかかります。右腕は一応前に出してシャーペンを持ちますが、ノートを取る動きを完全にしてくれない。
先生の講義も頭で処理できず、完全に耳の右から左の耳に抜けていってしまう状態。きっとだらしない顔をしていたことでしょう。よく先生に咎められなかったものだと思います。

おなかはしばらく黙っていたのですが、またしても見えざる手に掴まってしまい、ぎゅうぎゅうと握りしめられるかのようにおなかが縮み込みます。
それが苦しくて、重心を預けられていない右腕がノートを取る役目を放棄しておなかを庇うために机の下に潜り込んでいく。

「ぐぐぐぐぐぐぐぎゅるるるるるるる………」
「ぎゅおおおおおおおおーーー〜〜〜〜〜んん………」
「ぐぐぐめめめめめめえぇぇぇぇぇ………」

ものすごく大きな音がするのが自分でも驚くほどで、あまりの音が恥ずかしくて、左腕に寄りかかった重心をぎゅっと下げてほとんど机に突っ伏すように顔を伏せます。
右腕はなりふり構わずおなかをぎゅうっと押さえつけてるのにおなかは全くお構いなしに咆哮していました。

後ろから
「大丈夫? 保健室行く?」と小さく呼びかける声が聞こえます。
でも空腹感に引き攣りながら、大きなおなかの音を響かせているのが恥ずかしくて、答えてる余裕があまりありません。
「大丈夫……。大丈夫だから……」と答えますが、伝わっていたかどうか。

「ぐううううううううううううううーーーーーーーーっっっ!」

おなかの返事の方が大きかったかもしれません。

それはそれとして、体育終わりの友人といい、なんで保健室をそんなに勧められるのかその時はよくわからず、
(おなかが空いている時は保健室に行くの……? なぜ……?)と思っていました。

2時間目のように、「背筋を伸ばして内側からおなかに力を入れる!」も実行できず、あんまりにもおなかが大きくなった時は先生までこっちをチラッと見たような気さえしてきます。
(いま、先生と目が合った……? もしかして、おなかの音聞こえてるんじゃ……!?)
その時は流石に空腹の辛さを恥ずかしさが上回り、一瞬姿勢を正しますが、すぐに
「ううううぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ…………」
おなかの音に負けて俯いてしまいます。

とそんな感じの4時間目は先生が気にしたのかそうでないのかは定かでないですが、10分ほど早く終わりました。

友人と共にお財布を握りしめて購買へ急ぎます。急ぎますと言ってもちょっとふらふらするぼくなのでそこまでスピードは出せませんが。
でも、昨日ブラを買ってしまったので月の初めなのにすでにお財布の中身が心許ない。今日ぼくを散々苦しめたブラにまたしても苦しめられるなんて……とまた悲しくなります。

でもその日のお昼を買うことができないほどではなく、無事にサンドイッチを買って食べることができました。
普通のハムとレタスのサンドイッチと卵サンドなのですが、一日以上何も食べてなかったからか、味がすごく鮮烈に感じられて、ハムレタスサンドのマスタードにむせそうになるほどでした。

ちなみにそのブラはもうほとんど使ってません。アンダーあげたせいでお胸さまに乗り上げるとは……。またアンダーは合うけどもカップが小さいブラに逆戻りして、お胸さまのシルエットがボコボコしているのも気にしないで使い続けたのでした。

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