妊娠線予防に、クリームもオイルも要らない。

 妊娠した時、いろんな人から「妊娠線予防のクリームや保湿を絶対欠かさないようにね!!」と念を押された。でも、“マタニティ用”、“妊娠線予防用”と、所詮ただの保湿剤を、それ専用にすることで売りつけようとする感じも、“ちゃんとケアしなければ妊娠線ができてしまう”、“妊娠線ができるのは己の怠慢のせい”とでも言いたいかのような、ただでさえ精神的に不安定になりやすい妊婦の強迫観念を煽るようなネット情報の書き方も、とにかく胡散臭くて気に入らなかった。

 そもそも、妊娠線はどうしてできてしまうのか。
 調べたところによると、妊娠線の原因となる亀裂は、表皮ではなくその下の真皮、皮下組織に生じるようなのだ。

皮膚は、身体の表面側から「表皮」「真皮」「皮下組織」と3つの層になっています。

表皮は角質というレンガ状の細胞が積み重なってできています。外からの物理的な刺激や乾燥から身体を守る部分で、ある程度の力に耐えられるようになっています。たとえば、手の甲の皮膚をつまんでもヒビ割れができることはありません。

しかし、その下の真皮や皮下組織は皮膚の弾力をつくるコラーゲンやエラスチンといった線維が豊富な部分です。そのため、表皮よりも引き伸ばされる力に弱くなります。妊娠中の身体の変化に耐えきれずに亀裂が生じてしまいます。そのため、妊娠によってお腹が大きくなり、皮膚が持続的に引き伸ばされると、真皮にある線維が耐えかねて壊され、裂けて妊娠線ができてしまうのです。

皮膚の亀裂が入った部分よりも下の層には、毛細血管がたくさん走っています。その毛細血管が皮膚表面から透けるため、妊娠線ができた部分は赤っぽく(紫紅色)見えます。さらに、その部分を触ってみると凹んでいるのがわかります。
https://www.shinagawa.com/article/topics/content182

 ここで、肌の仕組みを少しでも理解している人ならあれ?と思うはず。だって保湿剤って、表皮のさらに表面部分、角質細胞までしか浸透しないんじゃなかったっけ?
 つまり、いくら保湿剤を丹念に塗りたくったところで、妊娠線の亀裂ができる真皮、皮下組織にはなんら効果を発揮できないはずなのである。

 結局、私は数多の先輩のありがたい忠言を無視して、日に日に大きくなっていくお腹に、とうとうオイルもクリームも塗らなかった。その代わりに心掛けたことは、以下の3つ。

・ぬるめのシャワーをさっと浴びるだけにする。
 乾燥対策がしたいなら、保湿剤を塗りたくるより無駄を省くことが一番いい。

・腹帯を24時間欠かさずつける。
 真皮、皮下組織の断裂を防ぐためには、それら細胞にかかる負荷を物理的に減らしてやることが重要だと思う。それには、出っ張ったお腹を強力に支えてくれる腹帯をつけることが一番だ。ちなみに、お高いけどワコールの腹帯が断然おすすめ。お腹がまだ出てない時は、「ただの腹巻きが(ごめんなさい笑)よ、四千円…!?!?」と驚愕したものだが、お腹がみるみる迫り出してくると、腹帯をつけているのとつけていないのでは楽さが段違いだった。「ただの腹巻きに見えるけど、めちゃくちゃお腹を支えてくれてる…!!」と、妊娠中後期は毎日欠かさず、寝る時も腹帯をつけていた。私が対して腰痛や関節痛もなく、産休ギリギリまで元気にフルタイムで働けた裏には、腹帯さんの存在があったと思う。

・子を圧迫しない程度に、腹筋に最低限の力を入れ続ける。
 これも、真皮、皮下組織の負荷を減らしたいと思ってやっていたこと。いわば天然の腹帯というか。

 結果、私のお腹はどうなったかって?
 幸運なことに、一本の妊娠線も作らずに、出産を終えることができた!
 妊娠後期には「双子なんじゃないの!?」と冗談を言われるくらいお腹は大きく突き出ていたし、胎動の激しい子だったのでひっきりなしにお腹はぐねぐね押されまくっていたにも関わらず。
 ただし、私は「クリームやオイルを一切塗らず、腹帯をつけ続ければ妊娠線ができない」と言いたいのではない。「妊娠線ができるかできないかは保湿剤の有無とは関係ないから、強迫観念に駆られて余計な出費や労力を払う必要はない」、「できてしまったら、その時美容皮膚科の施術なりで治療するしかない」ということだ。

 肌断食に出会って毎日のように思うが、世の中には全くトンチキなことがいかにも世の中の真理のように騙られていることがたくさんある。自分の身は自分で守る、そのために貪欲に知識を求め続けていきたい。

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