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こころのにわにて

 心は、庭に似ている。

 咲かせたい花や大きくしたい樹は、雨に打たれて折れたり、うまく栄養を取り込めなくてすぐ萎れたりする。私はなんとかそれらを大きく育てたくて、土を耕し、肥やしを撒く。

 一生懸命、幸せになりたいと思って、それが叶うよう行動している。そのつもりである。穏やかで、平坦で、瀬戸内の海のような、小さなきらきらで良いから、そういうふうに生きたいと思っている。

醜く矮小な自分のままでも、周囲の人に赦されるのだとか、
こんな私だからこそ寄り添える苦しみがあるのだとか

まだ弱くて小さい苗だけど、手に入れた苗、人からいただいた苗を、庭に植える。真面目に生きていけば、これからきっと、こういう良い苗は増える。いつか私の庭は、小さくても可愛らしい草花の茂る庭になるのだ。

 嫉妬とか、自己否定とか、不安、憎悪、恐怖、苛立ち、焦りは、強い。世話しなくても、みるみるお互い呼び合って繁殖していく。頑強で、見る間に拡がり、蔓延り、丁寧に植え付けた草花を蹂躙していく。あまりのことに、私は呆然とする。見てられないほど醜いので、慌てて毟り取る。根こそぎ耕す。土壌は傷む。それでも枯れないどころか増えていく。このままでは、良くないものに覆い尽くされて、せっかく植えた美しい苗が死んでしまうのではないか、
焦る。
いらいらする。
息が浅くなる。私はいつも、喉から苦しくなる。

殲滅しようとすればするほど、ますます不安と恐怖が膨らんでいくことに気付く。毟り取る手を止める。自分ではどうしようもない恐怖。
おかあさん。私のおかあさんを呼ぶ

抱きしめられると涙が出る

頑張り屋さんね、一休み、一休み

ここにずっといられたら良いのにな…
頑張るのを止める方法も分からないんだよ、私は生きるのが下手くそだから。

余計なことは考えなくていいのよ
それに思いを馳せれば馳せるほど、悪いものって拡がっていくものなのよ

………

目を瞑る、つよく

私、綺麗じゃなくても仕事ができなくてもいいから、なにより、自分も穏やかで…そして周りの人を穏やかな気持ちにさせる人になりたい
ほっとしたいし、ほっとさせたい

綺麗さとか
名誉とか
求めると、求めなければ、と思うと、くるしい

自分にも、人にも 優しい人になりたい…

おかあさんみたいになりたい

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