なぜと言われても
私は友人Fの子ども、サッちゃんの家庭教師をしている。サッちゃんは高校1年生。数学をメインに教えている。高1の2学期なので、昨日は三角関数を教えていたが、説明しても説明しても伝わってる感じがしなかった。ちなみにサッちゃんは将来の夢がSEで、大学は理系学部への進学を希望している。だから三角関数はもちろん、数学の理解は必須である。
サッちゃんが帰った後、その伝わらなかったことを振り返っていて、それがなぜなのか、ふと気が付いた。サッちゃんは”解き方が分からない”のではなく、テクニカルなことの前に、”なぜそれを解くのか分からない”のではないかと。なぜそう思ったかというと、数日前にサッちゃんの母親である友人のFが「算数とか数学なんて、小3くらいからこれ実生活にどう役立てるのか全然分からんって思ってた」と言っていたからだ。親子間でこのロジックが受け継がれているのではないだろうか?すぐにサッちゃんにLineで「なぜこんなことをしなければならないのかが、分からないんじゃない?」と尋ねたところ、「ええ、そうです。」と返ってきた。
ここで今、私は行き詰っている。私自身に”なぜそれを解くのか”と思った経験がないからだ。実生活に役立つか?とも思ったことがないような気がする。常に勉強がうまくいったわけではないし、成績がとても悪かったことも何年かあるけれど、基本的には式が解けて簡単な形になれば、部屋の片づけをした後と同じようなスッキリ感があって、新しい定義を習えば「へ~、そんな考え方があるんだなぁ」と受け入れ、それが何に使えるかなんて気にしていなかった。授業中は何にも…本当になーんにも考えていなかった。
ということで、私の価値観のままではサッちゃんを理解できないので、少し整理してみることにした。サッちゃんのやる気スイッチ=内的モチベーションをONにするにはどこからアプローチすればいいかについて、以下の3項目に分けて考えてみた。
①それを好きか? Yes or No
②それが得意か? Yes or No
③それの有益性が分かるか? Yes or No
今のサッちゃんは、三角関数に対して①②③ともにNoなので、これを1つでもYesにする作戦を考える。どれか1つでもYesになればオセロのように他の2つも順次Yesになって、理解に加速がつくはずだ。
今、嫌いなものを今日から急に好きになれ!と言っても難しいから、①から始めるべきではないだろう。また、②も①と同様に、今すぐには難しい。特に数学は、レンガを積むように基礎→発展→応用と進めていくので、得意でない状態=基礎が無いところから応用には行きにくい。となるとまず③をYesにする、つまり「三角関数って便利なもんだなぁ」と思えるようになることから始めたら良いのではないか?
誰かに何かを教えるって大変だ。「これをやっても意味あるの?」という気持ちがあるなんて想像もしていなかったし、そこはサッちゃん自身に折り合いをつけてもらって、自分でモチベーションを高めてほしいという気持ちもある(=数学がなんで必要かを教えるのは「私の仕事じゃねーよ」という乱暴な気持ち)。ただ、ここまでのことを考える過程で、自分の学生時代の先生たちのことを思い出していた。結果的にそのなーんにも考えずに学生時代に身に着けたことが、今の私を支えてくれている部分は大いにあって、当時の先生たちにはとても感謝している。そして、その感謝を先生たちに伝えることもお返しすることも、もはやできないから、サッちゃんにその気持ちを使おうと思う。