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エッセイの魅力


エッセイは、日常での出来事や作者の考えなどを
形式の制限無く書かれたものとして、
読む側からは、気軽に読めるもののようです。

しかし、サラリと書かれているようで、
筆者はとても言葉を選んで書いているような、
心に留まった光景や何でも無い日常の風景を
綴りながら、言葉や文字を大切にしていることが
感じられる、そんな作者の作品が好きです。

色々なお気に入りの作者の中でも
やはり外せないのが、向田邦子さん。

多くの書き手の憧れのような存在で、
今でも沢山の人に愛されている作家です。

高度成長期前後の日本の風景を、
裏通りの人々の暮らしから
高級料亭で得意がる人などを、
可笑しくも優しい眼差しで書かれていますが、
鋭い観察眼が透けて見える。

何より表現される言葉たちに品があって、
一区切り読んでは、その表現の美しさ、
深く優しい眼差しにため息が出てしまう。

若い頃にハマって読んでいた時に、
料理上手だった彼女のレシピで
ワカメのごま油炒めは私の定番になりました。

仕上げに鰹節と醤油をたらす
簡単な一品ですが、
ワカメを炒めることが、
当時は新鮮でした。
作ってみると、ごま油のコクが
ワカメに絡まってとても美味しい。

最近、久しぶりにまた読んで
心地良い向田ワールドに浸っています。

他のお気に入りの作家さんの
エッセイを読んでも、やはり
大いに納得できるところは大きく頷き、
あまり共感できそうも無いところは、
そうなんですね、と暖かい心で思いながら、
でも私はNOです、と首を振る。

そして安心するのです。
私はこういう考えで居てもいいんだ、と。

読んで心地よい作家さんのエッセイは、
私にはまるで友人と会話しているように感じられる。

読みながら、楽しくて心地よい時間が流れる
そういう位置付けのようです。

おこがましくもずうずうしい
私の楽しみ方です。

”小さなしあわせ、と言ってしまうと大袈裟になるのだが、
人から見ると何でもない、ちょっとしたことで、
ふっと気持がなごむことがある。
私の場合、七色とんがらしを振ったおみおつけなどを
頂いていて、プツンと麻の実を噛み当てると、
何かいいことでもありそうで機嫌がよくなるのである。”

文春文庫より「七色とんがらし」 向田邦子