見出し画像

COVID-19・変異株E484K

    各都道府県のCOVID-19グラフ作成に手馴れてきますと、大都市圏では特有の基本波形があるのを知り、圏内感染の大まかな現状把握にそれは役立ちます。けれども、中堅都市を主都とする県では、背景が読めない波形を呈する場合が稀ならずあります。暫く様子見して経過を見る以外にないのですが、そんな自治体に変異株スクリーニング検査結果が出ますとなるほどと思うことが屡々あり、グラフの読みに役立つことがあります。

    2021/5/2、福島県の感染者数が同県にしては高い数値56を示しました。翌日のそれに関した県の公表をまとめますと、福島県では2021年3月まではN501Y変異株が見られたが、その後E484K型が優勢となり、同月県抽出の検体の75%を占めた。宮城県、山形県のE484K感染に福島県も加わったと思われる、とのことでした。
    おそらく、同日の感染者数56もE484K変異株でほぼ占められていたと推測されますが、首都圏のE484KがN501Yに置き換わりつつある流れと逆で、感染の多様化に驚くと同時に警戒心が増します。E484Kが支配する県は、これで宮城、山形、福島の3県となりました。 
 COVID-19感染状況を図1に示します。

        図1:福島県のCOVID-19感染者、死亡者数

画像1

 2021/5/6現在、福島県のCOVID-19致死率は3.5%で国内2位です。人口10万対比感染者数が低い故もありますが、それにしても死亡者総数124は同規模人口の都道府県中では多いです。致死率3.5%以上の他の都道府県は福井県と北海道ですが、福井県は第1波、北海道は第3波による犠牲者増がその背景にありました。福島県の場合は、図1下段グラフの死亡者数が密な部分以外に、致死率の要因を見い出すことは出来ません。
    図1の感染者数グラフの右端の大きな波形が、底上げ層、N501Y、E484Kのどれが主に関与しているのかが不明でした。県の公表から推測して、図1下段のCはE484Kに当たると思われますが、問題はAとBです。Aは感染爆発(図州の下方矢印線)とそれ以前から続く第3波によるもので、Bは、大阪府と似たような感染状況が福島県でも感染爆発後に生じたのではと推測され、それが致死率に影響を与えたのではと推測しています。

    E484K変異株の出自は不詳ですが、国内感染はすでに首都圏で2021年3月頃から知られ、当時の東京医科歯科大学病院は、臨床検査結果から70%を超える検体検出率を認めていたとのことです。関西発のN501Yが、関東を飛び越えて宮城県へ先に来る筈はなかろう思っていましたが,東京発のE484Kならばと頷いたものでした。

   今やE484K変異株は、東北地方南部を席捲中ということになります。E484K変異株は、重症化に関して従来型と変わりないと判断され、国の変異株スクリーニング検査基準ではその単独検査は対象外です。そんなこともあって、新潟県では、変異株スクリーニング検査はN501Yのみですが、図2の新潟県の感染者数推移グラフを見ますと、右端の階段状に上昇する波形が切れたと同時に死亡者数が増えているのを見ますと、E484Kの侵入を疑いたくなります。宮城県と山形県のこともありますので要注意ですが、危惧に終わればと思います。それにしても、新潟県の死亡者数25の少なさは良い事です。

                            図2:新潟県のCOVID-19感染者、死亡者数

画像2

   全国版COVID-19感染状況だけ眺めていれば、E484KだろうがN501Yだろうが「知ったこっちゃない」かもしれません。 けれども、首都圏にN501Yの侵入が遅れたのは、感染爆発に続いてE484Kが首都圏を先駆けていたお陰かもしれませんし、一方、ワクチン抵抗性が高いと評されるE484Kが、関東北部にどっしり腰を落ち着けたとあれば、これからのワクチン接種効果が心配になります。私にしてみればなんとも気になるE484Kです。

                                                                             2021/5/4
                                                                             精神科 木暮龍雄

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?