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COVID-19・データベース考

   COVID-19禍による再度の緊急事態宣言で落ち着かない毎日です。コロナに専守防衛の私は、手持ち無沙汰を利用してNHKのコロナ特集サイトから素データ(年月日、感染者数、死亡者数、都道府県、PCR検査数等)をダウンロードしてパソコンデータベースに取り入れ、全国と各都道府県の感染状況のチェックで毎日を過ごしています。
 COVID-19感染情報は世に溢れていますが、初耳だった感染爆発なるフレーズもさることながら、感染傾向が国内地域によって異なっていたり、感染者数や死亡者数の増減も都道府県によって著しい差がある等、何故と思う疑問は山ほどある現在です。机上のパソコンデータベースによる統計作業でも、同じ課題に直面することが多く、学ぶことの多さに驚いています。これもオープンデータのおかげと思っていますが、感染情報収集に努力されている自治体関係者方々のご苦労を思うと、私ごときは正直な処、人の褌で相撲を取っている後ろめたさを感じてしまいます。そんな気持ちが表題に現れてしまいましたが、決して茶化す気持ちはないことを以下本論でお察し頂ければと思っています。私が理解し感じたことを率直に述べ、多くの方々に読んで頂き、いろいろとご批判、ご意見を賜ればと思っています。
 本題に入りますが、普段行っているデータベースチェックに準じ、A:全国的な感染経緯から得られる基本事項、B:各都道府県の感染推移について、順に述べることにします。

    A; 全国的な感染経緯について
    グラフの見方
    COVID-19の日本における初認は、2020/1/16の神奈川県でした。それから2ケ月ほど経た2020年3月8日頃、図1の左に見る第1波が突如として出現しました。上段グラフの小さな感染者数の山に対し、下段グラフの死亡者数の山は大きく、見る度に激しかったに違いない戦場地を思わせるものでした。
 第1波は、50日程経て2020年5月15日頃に収束したものの、その後新感染者数は一日平均60名余で途切れなく続き、40日程経て2020年6月24日頃の第2波の出現に至っています。そして、2020年11月、図1の両グラフの右端に示すような巨大な山の第3波を見るに至っています。

    グラフ右端に新しいデータが追加されますだと、波形は押しつぶされるように左へ移動します。2020年暮れの感染爆発で感染者数は膨大に増え、日頃用いていた全国版感染者数グラフは一挙に拡大し、各波形は小さくなってそれまでのグラフが示していた視覚的了解性を損なうまでに変えてしまいました。A項での検討内容が、2021年1月以降を除外しても支障ないことを確かめ、感染初期から2020年12月31日までのサンプルを用いて感染者数、死亡者数推移を検討することにし、図1の掲示に至った次第です。サンプルが増すにつれてグラフのスケールが変わり、頭の中で換算する煩雑さがありますが、全経過が分かり易い感染初期を含めたグラフをA項では表示しました。

    図1:感染者数推移グラフ(上)と死亡者数推移グラフ(下)2020/12/31

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    図1グラフを改めて説明します。上段グラフをCOVID-19・感染者数推移、下段をCOVID-19・死亡者数推移と命名し、両グラフは新型コロナ感染者が出現した2020/1/16から2020/12/31までの感染者数推移(上段)、死亡者数推移(下段)を表します。グラフ内の各波形について説明しますと、第1波、第2波、第3波の名称は、両グラフ共に2020年にCOVID-19感染が波状に発現した順の一般的名称に準拠しました。縦軸に感染者数または死亡者数、横軸は      2020/01/16の感染者初認の日を1とした検討年月日までの経過日数、感染者群を青で死亡者群は赤で表しました。
    以下のグラフ図は、データベースを基にして、全て表計算ソフトエクセルで作成したものです。

    各波形の特徴
    感染者数推移と死亡者数推移の年月日スケールを合わせ、図1の如く上下に並べると、グラフから得られる情報量は、横に並べて見る場合より多くなります。たとへば、第1波の感染者数は第2波のそれより遥かに少ないのですが、死亡者数は第2波のそれよりも遥かに多いことから、第1波は病原性(毒性)が強いものの感染力は第2波より弱く、第2波は病原性が弱いものの感染力が第1波より強いという傾向が推測され、ウイルス性感染の二大要素である感染性と毒性の違いを示唆していると思われました。異種疾患同士ならまだしも、同一疾患の第1波、第2波の持つ臨床上のリスクの比較となると、具体的な基準があればと思うのは当然です。感染の広まりを示す感染者数で感染性を、病原性の強さ故の死亡者数を毒性に譬え、各波の特徴を対比する以外にありません。強弱という about な評価ですが、表1の如くになると思われました。

        表1:各波形の病原性の比較
      第1波  底上げ層1  第2波  底上げ層2  第3波
  感染性    弱               弱             強             弱                 強?
   毒性       強               弱            弱             弱                  強?

 ウイルスは異種との共存を拒否すると学んできた私どもです。第1波、第2波の同種異型間の場合でも、基本は感染性と毒性の比重が逆転していますから、発症前ならともかく発症後の共存は基本的にないと推測しています。
 図及び表中の‘底上げ層’表記の説明をします。上記の感染者数推移グラフで、第1波と第2波の間、第2波から第3波の間にある比較的平坦な感染者層を、便宜的に底上げ層1,2と命名したものです。底上げ層1は、グラフの見方で既述しましたが、底上げ層2の持続期間は、2020/9/6頃~2020/10/30頃の約55日間、感染者数は一日平均520人、計約29,000人を超え、死亡者数も一日平均7.2人、計400人を超える有意な成分と判断しました。この底上げ層2は、第2波由来のものと推測されます。その感染者数は人口500万以上の都会が82%を占めることから、地方への拡散よりむしろ企業、団体、施設、教育機関等の上下感染が浸透した結果、淀みのように増えた感染者数を表すのではと推測しています。
 この底上げ層2の感染者数と死亡者数は、第3波のそれぞれに重なり、この部分の波形の成り立ちを複雑にしました。感染者数も死亡者数も、その由来が底上げ層2か第3波なのかをグラフ上で知ることはできませんから、表1の第3波の評価は、その大きさと濃密な死亡者数推移波形上から推測したもので、B項で確かめられるべき課題になります。

 死亡者数推移ピークの time lag
 図及び表中の‘time lag’ について説明します。第1波、第2波のいずれにも、死亡者数ピークが感染者数ピークから10〜30日ほど遅れて現れることで注目された故の表現です。パソコンのグラフ作成上のartifactも考慮しましたが、第1波、第2波に共通した現象であること、B項でも屡々見られる所見であることから生データを反映しているものと判断しました。加療という人為的介入が、time lag 発生の一因と医療側が思うのは自然かもしれませんが、今後も検討の余地はあると思われます。注意すべきは、各ピークの感染者群が死亡者群のピーク構成集団と質的に等しいとは限らないことと思われます。
 死亡者数ピークに感染者数ピークとの time lag があることは、感染の進展に伴う病床確保の苦労がつきものの医療側から見れば当然検討済みのことと思われます。しかし、第3波出現以前では、第2波の感染者数ピーク後に遅れる死亡者数ピークには関心が薄かった気がしています。2021年に入って、重症者用の病床不足がクローズアップされ、医療側から医療崩壊の危機を訴える指摘が多くなるにつれ、この time lag の存在がもっと一般疫に広く理解されることの必要性を感じました。特に軽症から重症に区分される病床管理は行政機関が関与する場合が多いので、その重点配置に際しては time lag が考慮されるべきと思われます。しかしながら、死亡者数とのイタチごっこでは、どうしても医療が後手になる危惧を感じます。ワクチン接種完了が2021年夏に予想される日本では、それまでに第4波、第5波もあり得ることですから、この time lag については冷静な判断の周知を感じました。
 以上の事項を、グラフを見る上の基本に踏まえB項の各論に移ります。

 B:都道府県から見た感染推移
 都道府県ごとの感染者数及び死亡者数推移グラフの検討は、課題によっては2021年2月に及ぶ場合もありますので、グラフ波形の検討年月日は課題によって変わります。
 各都道府県感染の概略
 各都道府県の感染者数推移のグラフ波形は様々で、全国版と似ているもの全く似てないものもある等で、その波形の多様性に驚きます。加えて、数日で波形変化を示すことがあるのに要注意でした。
 人口500万以上の大都市の感染者推移グラフ波形パターンは、その近県の同波形にそれと分かる影響を及ぼすものでした。波形パターンとは、視覚的判断で認められる特徴という意味合いでしかありませんが、関東で言えば東京都の感染者推移が、近隣の神奈川県、埼玉県、千葉県の感染者数推移グラフに影響を与えているといった具合です。ウイルスは人の動きと表裏一体ですから、東京都から離れるほど(例えば静岡、山梨、群馬、栃木、茨城等)その影響は少なくなりますが、反面独自性が出て来る感じがあります。その広がりの特徴は首都圏、関西圏、北陸三県等で著明でしたが(巻末図7、8、9)、同じようなことは、大都会ほどではありませんが、中部の愛知県、九州の福岡、人口500万人以下ならば、中国の広島県、四国の愛媛県、東北の宮城県等で見られました。感染の規模、進行の時間差が主因と思われますが、都市構造や生活文化の違いもあるのではと思われます。

 COVID-19が終息すれば、全国版感染者数推移は結果としてCOVID-19の基本的生態を表し得るかもしれません。しかし、感染渦中の全国版は、各都道府県版データを単に重ね合わせたに過ぎないことを改めて感じさせるものでした。それでも各都道府県という新たな変数が課せられたB項では、有意な結果も多く得られたのは確かでした。
    サンプルが多いほど有意な情報が得られるので、B項での検討は大都市に重点を置かれましたが、中小都市を県庁所在地とする県にも、独特な感染をグラフに示すことがあり(巻末図10,11,12、13、15)、結局、一県余さず感染状況をグラフ化して確認する必要がありました。

 新たな波形成分の誕生
 B項の課題のきっかけは、詳細が不明だった第2波の終末、第3波の成り立ちを検討することでした。両波形の明らかな都道府県として、第2波の代表的な例の福岡県、第3波の代表例の北海道を選び、図2にその感染者推移グラフを上下に並べ、両者の比較検討しました。

         図2:福岡県・北海道・愛知県の感染者数推移2020/12/20

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 いずれも、全国版感染者数推移グラフでは見慣れない波形なので簡単に説明しますと、上段の福岡県の感染者数推移グラフは、左の小さな山が第1波、中央が第2波、右端に現れる大きな山は当初第3波と判断されていたものです。下段の北海道の感染者推移グラフは、中央から左に離れたところにある小さな山が第1波、通常なら現れる筈の第2波は痕跡的で、むしろ出現しなかったとしてもよいくらいで、第1波に続いて巨大な第3波が出現する経過を示しています。
 福岡県の第3波は、起点が2020/11/10頃、ピークは未達ながら最高点は2020/12/20で終点には至らずとし、北海道の第3波の起点は2020/10/1頃、ピーク2020/11/20頃、終点2021/1/5頃となります。北海道の第3波は、別な波に移行した時点を終点としました。
 福岡県と北海道の第3波は、いずれも全国版の第3波の期間範囲内に収まるものでしたので、遅れて現れた福岡の第3波を北海道の第3波と同じものとして見過ごすところでした。ところが、両者のピーク間日数が30日もあり、福岡県の上昇成分と北海道の下降成分が向かい合っていること等が、同じ成分にしては不自然です。両第3波はお互いに異質で、福岡の第3波は新たな波形成分と推測しましたが、臨床的な意味づけが無ければ、図型の違いだけで云々してもウイルスの気まぐれと言われても仕方ありません。
    
      図3図2から50日後の両県の感染者数推移グラフ

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 それから10日程して、感染爆発という臨床上の激変が社会的トピックとして現れたことが、この問題の解決の糸口を与えてくれました。巻末図14では各第3波の下降面に新たな波形成分が頭を出し、以後グラフの右端を占め、2020年暮れに感染爆発という臨床上の激変と一致して一挙に巨大化したことでそれは示されたと思います。この時の波形変化から、感染爆発は新たな波形成分によるものと推測した次第です。
 図2から感染爆発を含めた50日間の感染者数推移は、図3の如くなります。福岡県の2021/1/31の感染者数スケールが2021/12/20と異なることにご留意下さい。福岡県の新たな波形成分は次第に大きくなり形も独自さを増し、同時に北海道の第3波も形や大きさが独自に変わり、両者が全く異なった成分であることをグラフは明らかにしていました。そして、図3の北海道グラフの右端にも新たな波形成分に相応した波が現れています。福岡県の第3波を暫定的に新たな波形成分と命名すると、全国版で見る巨大な第3波は、第3波と新たな波形成分を合成した成分とすれば、その後の感染経過の諸事の説明に辻褄が合うと思われました。全国版の感染者が、新たな波形成分の感染者と第3波の感染者の混在となると、当然全国版の第3波に固有の病原性を持たせることは難しくなります。
 新たな波形成分の病原性
 病原性とは、表1と同様に感染性と毒性の両者を含めた意味合いとし、感染性は感染者数で、毒性は死亡者数に代わるものと規定し、新たな波形成分の病原性を検討しました。ここからは福岡の第3波及びピーク時期を等しくする他県の波形も新たな波形成分と表記し、第3波は、全国版の第3波から新たな波形成分を除いたものを意味するとします。新たな波形成分は福岡県以外でも認められているので、必ずしも福岡県が起源としていないことを念のため付け加えておきます。
 図4に、新たな波形成分の毒性について、2020/12/20の福岡県と北海道の死亡者数推移グラフを載せて比較検討しました。図2の福岡と北海道の感染者数推移グラフを併せて参考にして頂ければと思います。
 北海道の第3波は、2020年10月に出現し、新たな波形成分が登場する2021/1/5頃までの約55日間当地に君臨し、その間死亡者が激増したことで強い毒性が推測されていました。図4の福岡県の新たな波形成分に伴う死亡者数推移グラフは、同時期の北海道のそれと比較すると死亡者数密度は明らかに低く、毒性は北海道の第3波より低いことを示し、一方北海道の第3波は死亡者数密度が高く、病原性の毒性は強いことを改めて示すものでした。

     図4:福岡県・北海道死亡者数推移グラフ2020/12/20

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 新たな波形成分と思われる他の都道府県、例えば北陸三県(巻末図8)、徳島県(巻末図9)、沖縄県(巻末図15下端)のグラフを見ても、死亡者数は多くなく、毒性は第3波と比べて強くないことを裏付けていました。
 しかしながら、COVID-19の感染初期から影響を受けることが少なかった都道府県、例えば岩手県(巻末図12)や栃木県(巻末図15)等では、新たな波形成分の感染初期に厳しい死亡者数出現に見舞われ、栃木県では非常事態宣言都市指定を国に要請したことは記憶に新しいことです。それでも、栃木県の死亡者数増はいつのまにか止まり、非状事態宣言都市から早期に外れました。岩手県の新たな波形成分に伴う死亡者数も、特に増加する気配を認めません。新たな波形成分に見舞われた時点で両県とも急激な死亡者数増を見せたのは、新たな波形成分は第3波程度ではないにしても、第2波程度の死亡者を生み出す毒性を有しており、それは第2波の死亡者数がグラフ上に小さな山を呈したことで説明されると推測しました。
 以上を要約しますと、新たな波形成分の感染性は感染爆発で示された如く強烈でしたが、毒性は第2波程度で病原性は感染性が主と思われました。一方、第3波は多数の死亡者を生みだした毒性が主で、北海道、大阪を中心とした関西以外への感染が少なかったことから、感染性は第2波、第4波よりも弱いと判断しました。
 首都圏と関西圏の感染の違い
 2020年10月下旬頃からの東京圏では死亡者数が少なく、北海道、大阪府、兵庫県、愛知県等で死亡者数が激増した背景を、新たな波形成分の出現で説明したいと思います。同年10月上旬、第1波を乗り越えて平穏に過ごしていた北海道に、第3波は突然出現し、急増した死亡者数に行政がその対策に苦慮したことは周知です。少し遅れて大阪府を中心とする関西でも、第3波による死亡者数は急増し、やがて北海道、大阪府は、2020年12月のCOVID-19の人口10万比死亡者数で、全国上位1,2位を占めるまでになりました。一方、当時のメディアは、東京都の人口10万対死亡者数が、他都道府県に比べて少ないことも指摘していました。都に多い高齢者介護施設でのクラスター感染から学んだ対応改善のお陰で、東京都が防疫に一歩先んじたとの解説を見ました。確かにそれは部分的に否定できないまでも、首都圏と関西圏の死亡者数差はそれだけで説明されるとは思えません。東京都では第3波の侵入が定着しなかったこと、新たな波形成分の出現が関西より顕著だったこと、グラフ上で言えば、新たな波形成分が第3波を吸収する時期が他都市より早かった等の背景を図4は説明しています。

    図5:過去1年を振り返る感染者数推移2021/2/10

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 各波形の出現が良好な大阪府のグラフを例にしますと、左から第1波、第2波、第3波、そして新たな波形成分が巨大なピークを形成しています。その各ピーク期に応じて他三都市で各成分のピークを認めますが、特に第3波は北海道、大阪府に顕著です。東京都の感染者推移グラフでは、第3波は2020年12月下旬までは軽く緩やかな上昇でしたが、2021年に入ってからは図5のように新たな波形成分の上昇成分に痕跡のような出っ張りとして残り、先端は新たな波形成分に移行しています。福岡県は、東京都の更に先を行く様子が窺えました。一方、毒性の強い第3波は、濃い死亡者数密度と共に北海道、大阪府、そして図としては載せませんでしたが兵庫県でも明瞭で、新たな波形成分が現れた2021/2/10現在でもグラフ上に幅を利かせています。第3波が隆盛を極めた頃の北海道と大阪府は、その目立った死亡者増が連日メディアで報道されましたが、大阪府の2020/12/1頃から2021/1/20頃までのCOVID-19による死亡者実数が、日本の人口最大都市である東京都の741を上まわり、765に達した背景を説明していると思われます。

     図6:過去1年を振り返る死亡者数推移2021/2/10

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 一方、図6の死亡者数推移では、感染爆発後(各グラフ右端)の北海道や関西では死亡者数増がほとんど認められず、首都圏や福岡県では2021/2/20現在になっても time lag は高い数値を維持しています。グラフ上でその違いの背景を求めますと、北海道、大阪の第3波の存在が、感染爆発の前後の新たな波形成分に対し抑制的に働いていたからではと推測しています。東京、福岡の死亡者数の密度は、北海道、大阪の第3波より低いことが覗えます。
 2021/1/20地方都市を席捲した新たな波形成分
 2021年1月中旬に入って、COVID-19感染が大都会から地方へ広がり、そこで新たに感染者数、死亡者数の増加を生み出しているとメディアが報じるようになりました。地方への感染拡大に新たな波形成分の勢いを思い当たり、茨城、群馬、熊本、広島、静岡、宮城、岐阜、長野等の各県のグラフ波形を確かめたところ、殆どの感染者数推移グラフ右端に急峻をなして新たな波形成分が2021年1月10日頃から現れているのを見かけました(巻末図14.15)。それはすぐ全国に広がり、中小都市も含め、殆どの中堅主都の感染者数推移グラフで新たな波形成分は幅をきかせていました。この時の中堅都市では、死亡者数は第3波が隆盛した時の北海道や大阪に比べて少なく、グラフ上の死亡者数は低密度を表す線状の波形がほとんどでした。
 毒性の強い第3波の消退は歓迎されたのは分かりますが、新た波形成分は第2波と同程度で経過するのではとの希望的見通しを、感染爆破は厳しく戒めるものでした。感染性を主にする新たな波形成分したが、第2波の感染性を遥かに上回る程度を感染爆発は示しました(図5、6)。感染爆発は大小のクラスターを生み出すことで新たな感染者を生み、それは相応した死亡者数増を生み出したわけで、2021年1~2月に入り新たな波形成分による死亡者数は、毒性の強い第3波のそれを上まわる日も見られました。この死亡者数増に、ウイルスの病原性の2大要素である感染性と毒性は、脅威に関しては全く同等で対すべきものと思い知らされました。
 巻末図15を見ますと、新たな波形成分で全国ガードを固めたCOVID-19は、異種は勿論のこと他の同種異型、つまり第3波型、イギリス発症型、南アフリカ発症型等の変異型との共存も拒否する勢いを示しているかに見えました。1月中旬、暫く続くものと覚悟していた新たな波形成分による感染者数でしたが、死亡者数減の兆しもないまま10日間でピークアウトして急激な減少に至ったのは、そんなウイルス性感染の一面を示しているのではと推測しています。
 各波形出現の関連性に関する仮説
 新たな波形成分と第3波を比較検討して、そこから得られた各波形の連続性についての仮説的な見解を追加したいと思います。それは何故福岡県に他の都道府県よりも際立つ新たな波形成分が現れたのか、そして何故北海道に他に際立つ第3波が現れたのかという波形の成り立ちを明らかにすることから生まれたものでした。つまり、福岡県の場合では新たな波形成分の前の第3波、北海道の場合は第3波の前に第2波が、現れるべくして現れなかったことにあるのではと思われました。福岡県の第2波には続く第3波を欠き、そして北海道の第3波は先行する筈の第2波を欠くことにより、福岡の第2波は続く第3波を抑制しましたが、北海道に欠けた第2波は続く第3波の抑制に及ばずその隆盛を招いたのではと推測しました。その結果、第3波の猛攻を受けた北海道では死亡者が急増し、福岡県では第2波が第3波の猛攻を躱した説明になるのではと思われました。加えて図5、6では、北海道、関西圏に特有だった第3波の存在が、新たな波形成分による感染爆発に抑制的に働いた可能性を推測させるものでした。つまり、感染性と毒性の比重を等しくすることで安定(=底上げ層)を保つが、なんらかのきっかけでそのバランスが崩れると、優勢となった片方の病原性が一挙に勢いを増し、それが第3波の隆盛(=死亡者増)、第4波の隆盛(=感染爆破)を迎えたとする仮説となった次第です。そのきっかけなるものは、外部的要因よりも、変異を生み出し易いウイルスそのものにあるのではと推測しています。第2波は、データ不測で変化の兆しを確かめられませんでした。
 仮定の話ですが、もし新たな波形成分が毒性主体の感染爆発としたら、1年前の欧州パンデミックを思うのは私ばかりではなかろうと思います。
 A項表1で述べた波形と感染性、毒性の対比表は、これも強弱のabout な評価ですが、以下の如くになると思われます。

        表2:第4波までの推移と各波の病原性の比較
   第1波  底上げ層1 第2波  底上げ層2  第3波  新たな波形成分  底上げ層3
感染性   弱    弱    強    弱      弱         強      ?
 毒性   強         弱         弱       弱      強            弱      ?

    今後について
 2021年1月以降は、死亡者数は第3波の名残と新たな波形成分とその time lag 等に加え、もしかして長期出現するかもしれない底上げ層3による死亡者を加えた全てがあふれ出ることになります。それは2021年2月まで続くのではと推測していますが、底上げ層3を除けば、それらの死亡者数はいずれ減少する筈の順序でもあります。現状のままならば、第2波後のグラフ波形成分は、2021年3月以降は第3波を吸収した新たな波形成分に代わっていくものと思われます。
 第3波後に底上げ層が出現する可能性は、第3波が新たな波形成分に繋がることで消えました。これは一安心です。この先、新たな波形成分が勢力を維持し感染終息に至らずとなれば、第2波に倣って底上げ層3が感染爆発後に続くと考えるのが順当と思われます。冴えない予測ですが、新たな底上げ層3の詳細は、2021年2~3月のグラフ上に明らかになると思います。
 気になることは、感染収束を期待するくらい順調な経過だった北海道と大阪に、第3波が出現した過去のことです。新たな波形成分の防壁もいつか崩れるに違いないのです。新たな遺伝子構造を持ったイギリス発症型、南アフリカ発症型のどれも日本に侵入しており、各地にその感染の小集団が認められています。それらの中の一つが次の新たな波形成分として出現すれば、強弱の順序から見れば新たな波形成分を逆にした病原性で、第1波程度かあるいはそれ以上の毒性を有することもあり得ると推測します。
 以上で「COVID-19・データベース考」は終わります。私自身、敵を知ることが最大の防御であることを改めて感じ、素データオープンに心から感謝しています。

 終わりに
 データベースの素データは、NHKのコロナ特集から一般に広く提供されており、手元に表計算アプリ(エクセル、SPSS等)があれば、以上に述べたグラフの所見は、どれもそして誰にでも再現が可能です。以上述べたことは、各都道府県でもそれぞれ検討済のことと思います。グラフ波形は数日で変化しますので、一時期、一カ所のグラフ波形で全体をみることは不可能なことを前提にして頂ければと思います。 
 日本のCOVID-19感染の進行を、ウイルス同士の覇権争が背景とする仮説は、自治体関係者各位の努力による感染情報収集結果を利用させて頂いた上の机上論かもしれません。私としては学術的立場より、データベースから得られた感染情報としてアップロードを急いだ背景をご理解頂ければと思います。当方に読み誤り、読み過ごしが多々あるかもしれません。ここまで述べてきたことにご意見を賜れば幸いです。
 長文にお付き合い頂き感謝します。
                                 2021/2/20
                       精神科 木暮龍雄








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