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ブルース名盤紹介33 M&O Blues/Walter Davis

ウォルター・デイヴィスは
戦前のセントルイスを代表する
ピアニスト&シンガー。

ジャズピアニストで有名な
ウォルターデイヴィスJrとは無関係です。

生まれはミシシッピ州グラナダ。
13歳の頃、
ミズーリ州セントルイスへ移住しました。

セントルイスは、
シカゴ、デトロイトに続く、
アメリカ北部寄りの音楽都市。

ミシシッピ州と
シカゴのあるイリノイ州の
中間に位置します。

その、セントルイスでは
ルーズヴェルト・サイクスや
セントルイス・ジミーなど、
ブルース・ピアニストたちが
特に活躍しました。

さて、そのウォルター・デイヴィスですが、
そのスタイルは実に個性的です。

一般にピアノという楽器自体が、
西洋的な音階に調律されており、
ハーモニカやギターのように
音程を曲げる事ができません。

また、流れるように華麗な演奏をしたり、
激しく前進するビートを刻む事もできる
楽器というイメージがあります。

しかし、
ウォルター・デイヴィスの演奏では、
ガコン、、ガ、コン、と
不揃いなリズムを刻みます。
そして、ふいに流れ出るかと思ったら、
すぐまた止まる憂いのあるフレーズや、
繰り返すフレーズも、どこか寸止まり。

なんともつかみどころのない演奏です。

それはまるで
袋小路で途方に暮れているようなもの。

この行き止まり感こそが
ウォルター・デイヴィスの持ち味です。

”Travelin' This Lonesome Road”

1935年2月25日の録音。
この曲もまさに行き止まり的演奏。

2本のギターがハエのように
耳障りに飛び回り、
よどんだ空気感が漂います。

ギターは、
ビッグ・ジョー・ウィリアウスと
ヘンリー・タウンゼント。

決してキレイな音楽ではありませんが、
美しいと思うんですよね。

ブルーハーツのかの名曲の歌詞

「ドブネズミみたいに、うつくしくなりたい」

を思い出します。


”What Have I Done Wrong?”

さらに停滞間のただよう曲が続きます。

不思議な浮遊感のあるリフが印象的。


”Good Gal”

この曲は珍しく、
形だけ見たら軽快な曲。

と思ったらデイヴィスは
ピアノを弾かず、ボーカルのみ。

ヘンリー・タウンゼントと
ロバート・リー・マッコイ
がギターで伴奏し、
マッコイが歌のハモリを担当。

軽快とは言っても、陽気ではない、
灰色な気配が不思議です。


"Come Back Baby"

ロウエル・フルスンや
レイ・チャールズもカバーした
デイヴィスのヒット作。

ここでも、表、裏のノリが
バラバラの棒グラフのように
凸凹したリズムが印象的。

いかがでしたでしょうか。

ウォルター・デイヴィスは
1952年、脳卒中で倒れ、
演奏活動を事実上引退。

その後、ホテルの警備員や
教会で説教などをして
生計を立てていましたが、
その後1963年に
セントルイスで亡くなりました。

個性的な演奏であればあるほど、
愛される傾向のある音楽、
それがブルースです。

特にピアニスト兼シンガーとして、
彼ほど独特な演奏をした人は
なかなか見当たらないでしょう。
今回は以上です。

ありがとうございました。

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