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ブルース名盤紹介23 WEST SIDE SOUL/MAGIC SAM

夭逝のギタリスト。
身を削るように
破滅的に吠える
ギターとボーカルの
すさまじいエネルギー。

今日は
マジックサムについて
書きます。

マジックサムは
1937年2月14日
ミシシッピ州の町に生まれ
その後1950年シカゴに移住。

そこでミュージシャンとしての
キャリアをスタートさせます。

スタジオアルバム2枚を残し、
なんと32歳という若さで、
心臓発作のため
亡くなってしまいました。

この”West Side Soul”は
デルマークというレーベルから、
1967年に発表された、
彼の初めてのオリジナルアルバムです。

ブルースファンが最初に知るレーベル、
それは、チェスで間違いないしょう。

しかしこのデルマークも
なかなかの注目レーベルです。
前に書いたロバートJr.ロックウッドの

”Steady Rollin' Man”も
このデルマークのレコードでした。

冒頭の曲はソウル調の

”That's All I Need”

このポップなスタートは、
なかなか戦略的。

1曲目の
華やかなゲートをくぐると
2曲目”I Need You So Bad”からは
怒涛のブルース、オンパレードです。


このSo Badは「〜でたまらない」という
意味だそうです。
(ジョンレノンが歌った
”I want you so bad”もそうですね。)

ここで歌うサムの小刻みなヴィブラート。
そしてギターも同様に震えます。

2曲目、ということで、まだ抑えめ。
が、しかし、
抑制されているからこそ、
にじみ出てしまうブルーススピリット。
後半、たまらず声を張り上げる所の
エネルギーの放出。

これがマジックサムの真骨頂です。

”I Feel Good”


繰り返し刻まれるギターリフに
フツフツと湧き上がる高揚感に、
退廃的なムードが漂います。
命を燃やしながら
踊り狂う、死の舞踏。

この退廃的ムードは、

”All Of Your Love”
においても同様。


ギターの音が鋭いクセに
ペタペタと鼓膜に張り付くように
粘っこいです。
(余談ですが、ジャズピアニストの
ソニークラークを聴いた時と
近い印象をもちました。)
叫ぶボーカルもすごいすごい。

”Sweet Home Chicago”
ご存知ロバートジョンソンのカバー。

映画「ブルースブラザーズ」で
歌われたバージョンや、
オバマ大統領(!)が歌ったバージョンも、
このマジックサムバージョンが
下敷きになってますね。

”My Love Will Never Die”

マイナーブルースで
こってりとブルースを味わった後、

ラストは軽快なロックンロール調
”Mama, Mama-Talk To Your Daughter”
で締めくくるあたり、
アルバム構成のセンスを感じます。

今回初めてマジックサムを聴きましたが、
いやー、すごいです。
すごい破壊力。

例えが難しいですが、
バディガイ が自分をひっぱたく時は、
「コノヤロー」と威勢よく騒ぐものの、
それはパフォーマンスで
叩いた瞬間手を引いて(やさしい!)、
「アタック感だけで痛みは軽い感じ」
だとするなら、

マジックサムは
痛かろうがなんだろうが
振り抜かれる感じです。

この攻撃性は、サムの他には
エルモアジェイムズ あたりにも
感じられます。

ちなみにB.Bキングや
マディ・ウォーターズなど、
攻撃に例えられない
プレイヤーも当然いますので、
バディガイがサムより劣るとか、
そういうわけではございません。

蛇足でしたが、
実に素晴らしい密度の1枚でした。

必聴です。

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