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ブルース名盤紹介36 The Complete Recordings 1927-1930 Vol.1 / Memphis Jug Band

今回はMemphis Jug Bandの
The Complete Recordings 1927-1930 Vol.1
について書いていきます。

Vol.2については次回。

ジャグバンドについて

1900年初頭に生まれたジャグバンド。
その発祥の地は、
ケンタッキー州ルイヴィルと言われています。

そのルイヴィルに次いで、
テネシー州のメンフィスは、
ジャグバンドの盛んな地となりました。

メンフィスといえば、
南部からのぼって行って、
たどり着く一つの到達点。
また北部と南部を繋ぐ中継地点でした。

ビール・ストリートという繁華街は、
「ブルースの故郷」として認定され、
ブルースを語る上で、
絶対に外せない音楽の都となっています。

メディスン・ショーや、
ヴォードヴィル・ショー、
ミンストレル・ショーなどの出し物や、
フィッシュフライパーティの余興などで、
ジャグバンドが活躍していました。

そのジャグバンドで使われる楽器について、
以下、紹介します。

「ジャグ」
水差しのビンを吹いて音を出します。
チューバの代わりで、
ベースラインを担当します。

「カズー」
トランペットの代わりに
メロディやリフなどの演奏を行います。

「ハーモニカ」
みなさんご存知の楽器ですが、
「ミシシッピ・サクソフォン」
との異名もあるようです。

他には「ウォッシュボード」の名の通り、
洗濯板をパーカッションに改良したものや、
ブリキの大きなたらいのようなものに、
ホウキの棒のようなものをくっつけて
1本だけ弦を張ったベースなどなど。

以上のおもちゃのような楽器と
ギターやバンジョー・マンドリン等で、
奏でる賑やかで楽しいアンサンブル。

これが、ジャグバンド最大の魅力です。

Memphis Jug Band

そのジャグバンドの代表格が
今回紹介する
メンフィス・ジャグ・バンド。

バンドメンバーは
録音されていない1920年第初頭から、
活動を休止する1934年まで、
様々なメンバーが入れ替わりで
在籍しています。

中心人物はウィル・シェイド。
1898年(1894年説あり)生まれの
生粋のメンフィスっ子。
ハーモニカやギター、ボーカルを担当。

またの名をサン・ブリマーと言いますが、
これは母親の旧姓に由来します。

中低音の渋めのボーカル、
賑やかなアレンジを彩る
素晴らしいハーモニカ。
ギターはジャカジャカと
ストローク中心の演奏が特徴です。

リーダーとして、そして
アレンジャーとして、
素晴らしい音楽を聴かせてくれます。

ウィル・シェイドとともに
ずっと定着しているメンバーが
カズーを担当する、
ベン・ラミー。

ジャグを担当するのが
1期メンバーにチャーリー・ポーク。
2期メンバーにメンフィス1のジャグ吹きと
いわれたジャブ・ジョーンズ。
3期メンバーは、
ジョーンズのルームメイトでもあり、
同じくジャグの名手だったハムボーン・ルイス。

ギターは
初の録音から参加している
ウィル・ウェルドン。

バンジョー・マンドリンも弾く
ヴォル・スティーブンス。

ジャグのジャブ・ジョーンズと共に加入した
チャーリー・バース。

ボーカリストについては
メンバーで分け合ったり、
専任のボーカリストが入ったり、
録音時期によって異なります。

曲の紹介

では、いよいよ
The Complete Recordings 1927-1930 Vol.1
の収録曲について、紹介していきます。

Sun Brimmers Blues

1927年2月24日、メンフィス録音

“Sun Brimmer”とは
ウィルシェイド自身のことです。

シェイドのハーモニカと、
ベン・ラミーのカズーの絡みによる
賑やかなイントロは、
まさにメンフィスジャグバンドの
典型的なサウンドです。

ギターボーカルは、ウィル・ウェルドン。

ロックという単語が出てくるのも、
その約20年後に起こる
ロックンロールを予感させます。

Sometimes I Think I Love You

1927年6月9日シカゴでの録音。

シェイドとウェルドンが演奏する
ストローク中心の
ツインギターによる爽やかな響き。

ウェルドンのボーカルも味わい深いです。

カズーのソロに、
ブッブッとジャグの音色が冴え渡ります。

On The Road Again

1928年9月11日メンフィス録音。

この時期の録音では、
ジャグはジャブ・ジョーンズが担当。
ギターもチャーリー・バースに。

シェイドとバースによる
ボーカルの掛け合い。
そしてカズーとハーモニカに
ジャグが絡む見事なアンサンブルです。

Stealin’ Stealin’

1928年9月15日メンフィス録音。

同年9月の録音では、先に紹介した
On The Road Againやこの曲のように
ポップチューンが並びます。

磨きのかかったアレンジの妙技。

ウィル・シェイド:ハーモニカ
ベン・ラミー:カズー
チャーリー・バース:ギター
ジャブ・ジョーンズ:ボーカル、ジャグ

の第2期メンバー。
コーラスはグループで。

Cocain Habit Blues

1930年5月17日メンフィスでの録音。
ここではハムボーンルイスによるジャグ。
そして女性ボーカリストの
ハッティ・ハートが参加。

当時メンフィスはタイトルにある
コカインの産地で有名だったとか。

Fourth Time Around

専任ボーカルで参加の
チャーリー・ニッカーソンの
のびやかで、
しっかり教育されてきた感のある歌。

そこに絡むキャッチーなコーラス。
(ちなみにサムネイル画像は
メンフィスジャグバンドではなく
キャノンズジャグストンパーズです)

まとめ

いかがでしたでしょうか?

チープな楽器で
豊かな音楽を紡ぎ出し、
キャッチーでありながら
ブルースの魂を感じる響き。

メンフィスジャグバンドの
創り出した音楽の魅力、
伝わりましたでしょうか?

P-VINEから発売されている
彼らのコンプリート録音集。
青色と赤色のジャケットは、
まるでビートルズの赤盤青盤のよう。

戦前ブルースの心のバイブルとして
大切に聴いていきたいです。

(続きは下のリンクをどうぞ!)


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