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Peak2Peakのデジタル写真講座:第7回 高山植物の撮影(後半) 光線の使い方と作図

風景写真や山岳写真を撮影し作品として完成させていく時に必要な思考やテクニックを、毎回お伝えして行きます。今回のテーマは「高山植物の撮影(後半)」です。

<光を味方につける>
写真=photographとは、「photo=光でgraph=描く」ことです。光がなければ写真は成立しません。どのような光線を使って被写体を描くか、同じ被写体でも違った光の元では、異なった表情を見せますので、光を意識して撮影することはとても重要です。風景写真の場合、撮影者が被写体を撮ライティングすることはまずあり得ないので、どのような性質の太陽光線が風景や被写体に当たっているか、これを意識し見極め、味方につけることが重要です。
たとえば、シャープな表現には、ある程度の光量とコントラストが強い光が有利に働くでしょう。光量が多い=快晴の太陽光=大きな絞り値=シャープネスが上がるということが言えるでしょう。影がはっきり出るような強い光は、被写体の輪郭をはっきりとさせてくれるでしょう。
(下:真上から強い光が被写体に当たっている。コントラストが高く、シャープな描写になっている。高妻山のシラネアオイ)

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逆に、ソフトな表現には、コントラストが低く、柔らかい光が有利に働くでしょう。雲によって拡散された太陽光は、ピーカン照りの光より柔らかく、被写体には陰影がつきにくくなります。晴れた日でも日陰、森の中のような、直接太陽光が当たらない環境であれば、柔らかい光を得ることができます。この時、レンズの絞り値を小さく=開放F値に近くして撮影すれば、被写界深度の浅さと相まって、レンズの描写も柔らかくなります。
また変わったところでは、月明かりでの風景撮影は、三脚を立てて長時間露光をする必要がありますが、光源である月が動いて光の方向が変わることもあり、たいへん柔らかい描写になります。

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(上:木陰の柔らかい光がミツバオーレンを柔らかく描いてくれた。マクロレンズで被写体に近づき、絞り値を開放絞りにして被写界深度を浅くしている。背景は柔らかくボケる。)

<逆光と透過光>
好天時の日中、太陽が高い位置にある時、トップライトになった光源は、真下に影を作ります。被写体が高山植物でも風景でも、トップライトの光が描く情景は、どちらかというと情緒を欠いており、あからさま過ぎて面白味に欠ける場合があります。(下:ハクサンフウロ トップライトが当たって、くっきりハッキリ写っているが、いささか面白味に欠ける)

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こんな時は、カメラポジションを下げてローアングルで花を見上げる角度で構えて、太陽光線が花びらを透かしている状態を狙ってみましょう。逆光で透けてくる光は被写体のディテールや質感を描くことができます。(下:ハクサンフウロ@白山)

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