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夕暮れ詩集

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永遠に日の沈まない場所で。
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トワイライトイリュージョン

摩天楼が朱に染まる時 黄昏の時間も止まる ざわめく雑踏もどこか遠くの 出来事のように消えて行く ビルの窓から見た街も幻 トワイライトイリュージョン 歪んだ時間の狭間の中で 誰もがひとときの夢を見る 交差点で影が揺れる時 黄昏の夢も終わる 愚かな蝶のようにどこか虚しい 日が暮れても続く胸騒ぎ 蒼い闇に沈む街も幻 トワイライトイリュージョン さまよう時間の隙間から見た 誰もが何かに怯えている 水銀灯の灯りが点る時 黄昏の魔法は消える 来るべき夜さえもどこか違う ハイウェイに映

夕暮れの淋しさひとつ風に乗せ

夕暮れの淋しさひとつ風に乗せ 揺れるススキを追いかけて ひとりで道を歩いてた さよならさよならまた明日 ひとりぼっちもたまにはいいさ 夕暮れのせつなさひとつ風に乗せ 暮れなずむ空を見上げれば 涙が一筋こぼれ落ちた さよならさよならまた明日 涙を拭いて歩き出そう 夕暮れのやさしさひとつ風に乗せ わずかな光にお別れを 沈む夕日を見送れば さよならさよならまた明日 きっと明日はいいことあるさ 夕暮れの侘しさひとつ風に乗せ 揺れるススキを追いかけて 風に任せて歩き出す さよなら

夕暮れ王国

夕暮れには不思議な魔力があって どういうわけかふいに門が開かれて 僕の王国に淋しい旅人を連れて来るんだ 旅人はしばらくは荘厳な夕日に見惚れているが 我に返ると皆決まって故郷に帰りたがる だけど王国の門が開かれるのは気紛れで それは明日のことかもしれないし 何年かあるいは何十年先になるかわからない いつまで待っても開かれることのない門に 最初はチャンスを窺っていた旅人も やがて帰ることも忘れて ここで延々と沈むことない夕日を眺めることになるのさ 僕もいつからここにいるのか

黄昏色の空の果て

黄昏色の空の果て ひとりっきりの帰り道 誰を待っていたのだろう 誰を探していたのだろう 電信柱の長い影 淋しいようと風の吹く 黄昏色の空の果て 家路を急ぐ鳥の群れ どこへ行くというのだろう どこへ帰るというのだろう お家は遠いまだ見えぬ 泣くのはだあれと風の吹く 黄昏色の空の果て 心によぎる思い出は 何を求めていたのだろう 何を探していたのだろう 誰も知らない夢の跡 いつかまたねと風の吹く 黄昏色の空の果て

夕暮れ 橙 さびしんぼう

夕暮れ  橙  さびしんぼう だあれもいない公園で 影踏み かけっこ かくれんぼう 風といっしょに遊ぼうよ いつも泣いてる あの子とふたり 遊びにおいで またおいで ぶらんこ お砂場 すべり台 夕日に染まって待っている 明日も遊ぼって待っている 夕暮れ 橙 さびしんぼう だあれもいない公園で

たそがれ窓

この窓を開けると いつでも夕暮れを見ることができます 橙色の空と感傷的な思い出たち それらのものがいつでも見ることができるのです 今真っ赤な夕日が 水平線の彼方に沈んで行きます あれは幼い頃に見た夕焼けでしょうか それともあなたとみつめた黄昏なのかもしれません こうして夕暮れの中にたたずんでいると だんだん記憶が曖昧になって来て 今見ている夕空さえ いつの頃に見たものかわからなくなって来ます でもそれでいいのです いつの日も夕暮れは 思い出の中にあるのですから 茜色の

日暮れて 日暮れて

日暮れて 日暮れて ひとりきり だあれもいない畦道で 日暮れて 日暮れて ひぐらしの かなしい歌を聞いていた かなかなかなかな どこ行った 僕のおうちはどこかしら 道をなくした迷い子に 日暮れて 日暮れて ひとりぼっちの風が吹く 日暮れて 日暮れて ひとりきり オレンジ色の空見上げ 日暮れて 日暮れて 夕闇に 一番星を探してた かなかなかなかな どこ行った 僕のあの星どこかしら 星を探して今日もまた 日暮れて 日暮れて ひとりぼっちの空を見る

夕暮れ誰かの輪回しが

夕暮れ誰かの輪回しが カラカラカラと泣いていた 知らない少女の影法師 カラカラカラと泣いていた だあれもいない街の角 人恋しいと泣いていた 街の広場の古井戸が カラカラカラと泣いていた 赤や黄色の風車 カラカラカラと泣いていた 母さん恋しや日が暮れる 僕はひとりで泣いていた

夕焼けかくれんぼ

オレンジ色に染まる公園で 僕はひとりかくれんぼうをする ぞうさんのすべり台の上で 数を百までかぞえても 僕を探しに来る子はだあれもいない 風が気まぐれに揺らすぶらんこの 長くのびた影を黙って見てる オレンジ色に沈む公園で 僕はひとり鼻歌を歌う ジャングルジムのてっぺんで でたらめな歌を歌っても いっしょに歌ってくれる子はどこにもいない やがて夕方のチャイムが鳴る頃に 僕は少し淋しくなって 遠くのビルの向こうで お日さまがかくれんぼうをする 僕においでって言ってる

遠い音

冷たい風が吹く 誰もいないススキ野原で 遠い音を聞いていた はるか彼方から聞こえる 俗界からのメッセージは 幼い僕の心をとらえた   遠くで車が行きかう音   汽車の行く音   夕方のチャイム こうして耳をすましていると すべてが別世界のように思われる かすかなざわめきの中で 気づけばいつもひとりきりだった あたりが暗くなって 空が薔薇色に燃えるまで 遠い音を聞いていた このまま夕闇にまぎれて はるかな世界へ行けるような そんな幻さえ見た   遠くで犬がほえる声   飛行機

金色の庭

    Ⅰ 小さな日だまり きらきらと 光のカーテン揺れている 小さな日だまり ゆらゆらと そこだけ光の輪ができた 誰にも内緒教えない あれは妖精の輪なんだよ 妖精たちが踊っているんだよ 小さな日だまり きらきらと 金色 銀色 真珠色 小さな日だまり ゆらゆらと 秋の庭の片隅に 楽しそうだね 楽しそうだよ あれは妖精の輪なんだよ 木漏れ日のスポットライトだね     Ⅱ 枯葉のじゅうたん 僕と弟は転げまわる 体のあちこちに落ち葉をくっつけて あはは おかしいね まるで

夕暮れに

夕暮れに あの子にハモニカ吹いたげよう ひとりぼっちの街角に ふたりぼっちの歌ひとつ ゆれるゆれる影法師 街はなぜに泣いている 人恋しいと泣いている 夕暮れに あの子は泣いていたんだよう 母さん恋しと泣いていた 母さんいない歌ひとつ まわるまわる風車 風は街を吹いて行く 夕暮れ街を吹いて行く