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ジョブ型導入の鬼門:計画的にキャリア人材を育てる戦略が出来ていますか?

筆者が新卒で損害保険業界に入った2009年頃を思い出すと、社内に課長が異常に多いなと感じていました。同期も私も普通に仕事をしていれば、普通に課長にはなれそうだなと感じていたように思います。

当時、私がいたその会社は一度正社員になると「誰もがある程度(課長くらいには)は階段を上がることができる」ことができました。あわよくばもっと上を目指そうという意識が社員の中にはあり、自然と将来のリーダー層のプール人材が育っていました。

会社としては育成のために、長期計画で色々な部署を経験させて段々と会社全体を俯瞰できる人材を育てていました。実はこのジョブローテーションを柔軟にできることが日本型(メンバーシップ型)人事制度の特徴です。

日本型(メンバーシップ型)と対比されるジョブ型はポストに対して勤務地や給与が紐づいた雇用形態のため、この異動が制限されやすくなります。つまりジョブローテーションを通じた人材育成が行いにくくなります。

ではジョブ型の場合どのようにリーダー層人材を育てているのでしょうか?実は社内で人材を育てている場合、ジョブローテーションを通じて様々な経験を積ませているケースが多くなっています。しかし、異なるのは人材をアセスメントして、エリート層を計画的に育てているのです。日本でイメージしやすいのは霞ヶ関です。明確に採用時の区分でキャリアとノンキャリアに区分されて、キャリアは意図的にジョブローテーションを繰り返して組織全体を俯瞰できる人材になっていくイメージです。

ジョブ型を導入した際にはキャリア人材を選抜して計画的に育てないと、タコ壺化して自分の分野の視点しか持たない人材ばかりになりかねません。

これからジョブ型を導入される企業では「計画的にキャリア人材を育てる戦略が出来ていますか?」ということを自問自答していただくことをお勧めします。というよりもマストで考えていただきたいと思います。

キャリア人材を計画的に育てるためには、まずどんな人材を育てたいのか?を人材要件にまとめるとこが起点になると思います。この時に企業のベースとなる価値観や理念に加えて将来・過去の成功要件をバランスよく抑えることが必要でしょう。

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筆者も以前、人材要件策定に関わったことがありますが、その時を振り返ると企業としての価値観や理念、将来の成功要件をいかに経営層と握れるかということがポイントになってくると思います。人事だけではこのTO BEの部分を盛り込むことは難しいでしょう。

人材要件を作った後の運用ですが、人材要件をもとにアセスメントをして計画的に経験の場を与えていくことになります。例えば、人材要件の要素で強み・弱みを把握して今後の目標を本人や上司が話し合った上で具体的な行動計画をつくるというやり方です。

例えば、ある製造業では人材要件のうち、将来の成功要件が低いという状態が明らかになりました。それは「チャレンジングな方向性を組織内で示し、実行する」ことです。既存製品の品質を高め、コストを低減することにかけては優れているものの、新たな成長を描くような行動を取る人材が少なかったのです。

上記のような人材は育てるのに手間も時間もかかると思います。これはジョブ型も日本型(メンバーシップ型)も変わらないのかもしれませんが、ジョブ型は制約が増える分、より戦略的に行う必要がありそうというお話でした。

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