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#一日一短歌 2022年7月分

7/1 誤魔化せるくらいの恋だきみのことすきじゃないって夏、熱が出る
 夏は恋の季節だねえ……

7/4 またひとつ生きる理由を与えられ延長戦にぬるぬる進む
 たぶん推しに何か動きがあった日とかだったのでは。推しに生かされている。

7/4 胸を張る 夢も希望も薄らいだ世界できみをすきになったから
 夫と出会ってなかったらたぶん結婚も子育てもしてなかったと思う。夫を好きになったことは、わたしの人生の最大の幸運だった。その幸運を掴んだ自分を誇りに思う。

7/4 死は救済だから最後にとっておくひとくちみたいに甘いのだろう
 かと思えば、ぼんやりと死を詠んでみたりするから、人間の心ってわからない。

7/5 絶え間なくひとしく世界に降りそそぐわたしの知らない愛のかたちも
 どんな愛だって等しく扱われるべきだけど、そこに「道徳に反してなければ」という条件がつくと途端に難しくなるね。道徳観は人それぞれだから。

7/6 霧雨の向こうそびえる摩天楼沈んだ色で街を見下ろす
 田舎者なので、あべのハルカスを摩天楼と思ってしまいがち。

7/7 改札に閉じ込められて無人駅ここでこのまま眠るとしたら
 大阪でも意外と無人駅多いのよね。なんかあったときどうすんだろ。

7/8 通過する電車の風に横っ面はたかれて目を覚ます金曜
 結構容赦ないスピードで電車が通過するとき吹く風が好き。

7/11 忘れられたくないんだよもういっそきみのむかしの女になりたい
 覚えてるんだろうなあ……昔の女……わたしの前ではおくびにも出さないけど…………やだなあ…………

7/11 薄羽を焼かれのたうつ三日目の蝉 ちょうど夏はじまるところ
 この夏も、気の毒な蝉をいくつも見かけた。器用に生きられない個体はどの集団にもいる。

7/11 華やかなカーテンコール名残惜しそうにしないでまだ終わらないで
 まだ始まってもいなかったライヴツアーのオーラスを想像していた。無事に終わることを願いながら、永遠に終わらないでいてほしいとも思っていた。まだ始まってもいなかったのに。

7/12 蝉時雨 他者の痛みに鈍感でなければ涙も流せないだろ
 そんなことはないでしょうよ、と思うけどどうなんだろうね。

7/14 京都まで行ける電車に飛び乗ってこのまま眠ったふりをしてたい
 いつも京都まで行ける電車に乗りながら職場に行く。大阪に住んでても京都は憧れの目的地だ。

7/15 曇天は街を呑み込み灰色のバケツで塗った空気が沈む
 よっぽど天気悪かったんだなあ。

7/15 間違いに気づかないまま逸れていく道にも花は咲くんだろうが
 咲くんだろうねえ。そしてついその花が綺麗だと思っちゃうんだろうねえ。

7/19 降る雨に恋を重ねて自らの意思とは関係なく落ちていく
 落ちたり沈んだり溺れたり、恋は忙しいな。

7/19 曝け出すくちびる きみがわざと目を反らしたとしても好きになってた
 結論、どうあがいたって好きになってたってことよな。

7/23 あてもなく歩いたきみの夏ざかり天神橋筋商店街の
 ここから、天神祭を控えた街を歩いた短歌が続く。たまたまこの日にこの場所を散歩する用事があったので、ひとり吟行の様相。

7/23 首筋に生ぬるい汗流れ出し祭囃子の練習の音
 おおこれがあの天神祭の音、としみじみしたもの。

7/23 果てのない空みたいだねアーケード端まで行ったことないぼくら
 待機中の散歩だったのであまり遠くへは行けず、永遠に続くようなアーケードを見ていた。

7/23 鬼のごとし声に怯える子らの目の前にどこかの町のだんじり
 祭りを控える街を見ながら、わが町のだんじりを目撃したときの子どもたちの様子を思い出したりもした。めっちゃ怯えてた。

7/23 五つの子 祭りの味の焼きそばも知らない夏をまた重ねゆく
 この年の夏は無事、夜店の味を知ることができた子どもたち。夜店の楽しみ方をまだ分かっていないかんじも愛おしかったな。

7/23 まだ行ってないのにきみが描くのは今年こそ行きたかった海だ
 帰宅してから娘が「海の絵を描くよ!」と絵の具で描いてくれたのは、なんとも鮮やかな海。彼女のこれまで見てきた海の美しさを思う。

7/24 一瞬のまなざしのため濃い色の浴衣に袖を通した夏の
 浴衣着て、片想いの相手と友達たちと夏祭りにいったことを思い出した。今の若い子もやっぱそういうことするのかねえ。

7/26 風に凪ぐ真夏の海が恋しくて淀川、きみもゆるくたゆたう
 淀川、川幅が大きいから流れてるかんじがしないの川としてとても新鮮。

7/26 きみもまた海になりたい水だろう澱んだ底の泥の色して
 わがまちに流れる第二寝屋川を眺めながら詠んだ。とても不憫。

7/27 涙って小さい海ね 呟いたきみの瞳がたゆたえば夏
 たゆたわせたり夏にしとけばいいと思ってる感ある、つまり推敲の余地ある。

7/28 こっそりと膝に乗る子の愛おしき小さな背中おしりのかたさ
 息子、だいぶ大きくなったけどまだハートは赤ちゃんなのでだっこをせがまれる。かたいお尻は娘のそれとはだいぶ違って、きっとこういう実感は今後もたくさんあるんだろうなと思う。

7/28 思い出せなくなる痛み 絶望に殴られながら子を抱いた日の
 ワンオペ子育ての絶望感は体験者じゃないとわからんと思う。体験していても、数年経てばこんなに忘れてしまう。しんどかった、痛かったよ。たとえあの時どんな手助けがあったとしても、やっぱりつらかったと思う。もちろんそれ以上の幸福ももちろんあったけどさ。

7/30 からし抜きホットドッグを頬張って夏の小学生はきらめく
 モスバーガーのホットドッグを食べられるようになった娘!かわいい!

7/31 もうずっと痛んだままの傷口を ほら、きみだけに見せてあげるね
 腐って膿んでぱんぱんに腫れてるかもしれないけど、いいよね?





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