短歌連作『バタフライ・エフェクト』

ポルノグラフィティ アルバム「BUTTERFLY EFFECT」より着想

1.『THE DAY』

しっかりとその剣を持て 孤独すら味方につける鋒になる
(鋒=きっさき)

2.『Working men blues』

知られずに輝く時間積み重ね六等星も夜空をつくる

3.『君の愛読書がケルアックだった件』

同じ本並べた棚を眺めては君のすべてを分かったつもり

4.『I believe』

風がいま君の背中を押したから僕は黙って明日に見送る

5.『LiAR』

嘘も傷もまるごと愛したはずだった 舌先にだけ残る真実

6.『Fade away』

感情を混ぜて潰して塗りたくる夜がこのまま終わらなければ

7.『クリスマスのHide&Seek』

誤魔化してしまえば街はやさしくてゆるしてくれるみたいに光る

8.『MICROWAVE』

淋しくはなりたくなかったはずなのに隠した全部溶けて流れた

9.『夜間飛行』

ふたりして迷子になった日々の果て美しいままなのは君だけ

10.『真っ白な灰になるまで、燃やし尽くせ』

滾らせた希望は赤く揺れていてひりつく熱に焦がれてしまう

11.『170828-29』

ミサイルが揺らす世界の中心で隠し持ってる銃にピースを

12.『Montage』

絶望に負けたっていい震えるなハッピーエンドに向かって走れ

13.『スパイス』

変わらない生活を編む 幸せのための仕掛けを織り込みながら

14.『キング&クイーン』

憧れを飛び越えていけ永遠に覚めない夢を見てる、ぼくらも

***

「BUTTERFLY EFFECT」から3年
ポルノグラフィティをもう一度ちゃんと好きになって、でも出産や子育てでそこまで熱を持って追うことはできなくて、数日遅れで新譜を買っていた。
「ライヴとか行けるのかな、でも収入も時間もないから無理かな、つらいな」ってそればかり思っていた頃、久しぶりの新しいアルバムを真夜中にこっそり聴いたときの衝撃は今でも忘れられない。
ポルノグラフィティのような、ポルノグラフィティでないような、シングル曲とアルバム曲の境目がここまで曖昧なのか、今まで以上にいろんな音が聴こえてくるアルバムに出会った感動を形にしたくて、これまた真夜中に14曲すべての歌詞とメロディをきちんと追いながら短歌を詠んだ。そういう音楽の聴き方をしたのは本当に久しぶりだったから、このアルバムはわたしにとってとても大切な一枚になった。

詠んだ短歌は参加している"育児をしながら短歌を詠むサークル"「いくらたん」の機関紙で発表した。厳密に言えば連作とは言えないかもしれないけど、自分の好きなものを自分の手段で自分以外に発表できたことにとても満足して、そのまま15首の短歌ごとしまいこんだ。
「BUTTERFLY EFFECT」の発売から3年、そろそろ何かにまとめたいなあとノートを開いて読み返すとあまりにも稚拙で今と解釈が違ったため、大幅に改変し、もはやまったく違う歌としてここに載せることになった。あの頃はあれで完成だと思っていたけど、3年経つと解釈も持つ言葉も曲に対する思いも変わるんだなあと実感することになった。

今のわたしはそれなりに働いていて、彼らを生活の一部に据えることができるようになった。3年前は見えなかった未来も、ある程度見渡せるようになった。ポルノグラフィティの音楽がこれからもわたしの人生の道しるべになってくれたらいいなあと思う。

「BUTTERFLY EFFECT」

蝶々の閃光 僕ら葉の先に羽を休めるように密やか

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