無邪気と律儀のあいだ。
まだよちよち歩きの君が向けたまなざしの向こうに一輪の花があった。
この窓からあんなお花が見えたんだなあと一緒に見た。
小さな指をお花に向けて「おはな」と彼は言った。
空気の中に溶け込むようなやさしい時間だった。
けれど。
「はい、朝の会ですよー!!」
静寂をつんざくように保育士の声が鳴り響いた。
それでも彼はお花に見入っている。
この時間を大切にしてあげたかった。
だけど彼の手を引いて言った。「あそこのお席に座ろうね」
朝の会が始まった。くるくると回る絵本を見て彼は笑った。