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24H洋服店<決戦の時>

ー 11 ー

今日は、ナチュラルポットに新人デザイナーが大集合である。
乙女チックなデザインが得意なココちゃん。
奇抜はデザインが大好きな琴美さん。
パターンの達人、高木君。
そして、美香子の4人である。

「今日は、これから何が始まるの?」
と店長が興味津々で落ち着かない。

「オーナーから電話があったんですよ。恒例のコンペです。」

「ああ、いつものきまぐれコンペね。」

「今日のお題は何ですかね。」
琴美さんは、わくわくが止まらないようだ。
1年に数回、オーナーの気まぐれで新人デザイナーのコンペが行われるだ。
このコンペで勝ち抜くと商品化されて、全国の量販店や専門店で販売が許されるとっても魅惑的な出来事なのである。
美香子はまだ、商品化された経験がない。

「ごめん、ごめん、待たせたね。」
やっと、オーナーの登場だ。

「オーナー、今回のお題は何ですか?」
待ちきれない高木君がオーナーに質問した。

「今回のお題は、春物。さくらの咲くころにデートで着たい服。」

「おおおおお。」
新人デザイナー全員が声を上げた。
「さくらの咲くころにデートで着たい服」と、美香子は心の中でもう一度繰り返した。

「じゃあ、期待しているよ。」

「がんばります!!」

「店長、ランチ行こうか?」

「はい、じゃあ美香子ちゃん、お店番お願いね。」

「は~~い。」
他の3人は、目を輝かせてお店を後にした。
お店番をする美香子は棚の整理をしながらデザインのイメージを膨らませる。。

美香子は鉛筆を削った。
もう夜中の2時過ぎだけれど、デザイン画の用紙が部屋のあちこちに散らばっている。

「私だけにしか出来ないデザインを書かないと。」
このところ、美香子は寝不足である。
デザイン画はいくつも描けるのであるが、これぞという作品が生まれない。
「この服は誰が着るの?どこでデートをするの?」とシチュエーションを細かく考えている部屋に時計の秒針の音が響く。
ケント紙に鉛筆を走らせる。絵の具をのせると次の瞬間、美香子の顔に笑みがこぼれた。

「よし、出来た!!」
デザイン決めのあとは、シーチングで立体裁断である。
締め切りはあと3日。
今度のコンペは絶対勝ちたいと願う美香子であった。


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