24H洋服店最終話<今の気持ちを伝えたい>
ー 12 ー
「おはようございます。」
「おはよう。そうだ美香子ちゃん、オーナーが話があるって。」
「!!」
美香子は急いで2階のオフィスに上っていった。
「おはようございます。」
アパレル会社「ハーフ―ムーン」のオフィスに入るのは久しぶりだ。
「美香子ちゃん、こっちこっち。」
デザイナーのはなちゃんが手招く。美香子は、デザイン室に入って行った。
オーナーが振り向いた。
「おはよう。今回の作品いいね。今回は美香子ちゃんのデザインでいこうと思うんだ。
「やった~~。」と叫びたい美香子である。
「パターンは、はなちゃんに手直ししてもらって。」
「はい。」
信じられない。夢の全国区だ!!
美香子は、うきうき気分だった。1階に続く階段を踏み外しそうになった。
「店長~~~。」
「あん?どうした?美香子ちゃん。」
「この間のデザインが、商品化するんです。」
「やったじゃないか。」
店長が頭をなでてくれた。至福の時だ。
そして、デザイナーデビューである。
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「美香子ちゃん、このカーブもう少しこんなかんじにして。」
とはなちゃんの激が飛ぶ。
「美香子ちゃん、素材はどっちにしようか?」
「こっちの素材はどうでしょ?」
なんかすごい。夢のようだ。
「釦もこのカタログから選んでね。」
「はい。」
すごい。すごい。素材の発注作業に、工場への手配などなど初めての作業だ。
しかし、急に美香子は不安に押しつぶされそうになった。
「このデザイン、売れなかったらどうしようかと思って。」
はなちゃんが大爆笑する。
「私もいつも気持ちは同じよ。オーナーがOKを出したんだから自信をもって。」
「はい。」
「さて、あとは製品があがってくるのを待つだけだね。お疲れ様。」
「ありがとうございます。では、お店の方に戻ります。」
美香子は、はなちゃんにお礼を言ってお店に戻った。
「お帰り、デザイナーどの。」
店長がおどける。
「どう?楽しかった?」
「はい。とっても。」
美香子は今でも信じられなかった。
自分のデザインした商品が全国の店頭に並ぶなんて。
みなとみらいは、クリスマスバージョンの電飾で彩られている。
お店の帰り道、すいかホテルに向かって美香子は歩いていた。
大勢のカップルや家族連れが行き交うショッピングモールの先に見えるのは、去年待ち合わせをした大きなクリスマスツリーである。
今、一番この気持ちを伝えたい人は。。。
「美香子」
「あっ!?加賀谷くん」
「美香子!!」
クリスマスツリーの下で、長身の加賀谷君が大きく手を振っている。
偶然の出来事に驚き、泣きながら駆け寄る美香子であった。
ひとつ夢をかなえた美香子。
これからどんな未来が待ち受けているのだろう。
今日もシャッターのおりない24H洋服店はフル回転。
人間模様が興味深い、ナチュラルポットへようこそ。
いただいたサポートで美味しいものを食べて、次のnoteに活かします。