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FAIRY TALE

倉木麻衣さんのアルバムレビュー、逆時系列でずっとやってきましたが、ついに初期3部作(=倉木さんが10代のときにリリースされたアルバムで、約100万枚以上を売り上げたという、特に人気の高い作品)まで遡ってきました!ということで3部作一発目は、

「FAIRY TALE」2002.10.23リリース

アルバム概要

おとぎ話をテーマに制作された今回のアルバムは、「夢を捨てるならば大人になりたくない」という当時19歳の倉木さんの思いが込められた作品で、子供とも大人とも言えない年齢独特の気持ちや世界観、あるいは倉木さんの描く理想の大人の像のようなものさえも伝わってきます。

倉木さんのアルバム史上、最高傑作という声も多く、僕もトップ3に入るほど好きな作品です(残りは「ONE LIFE」と「Smile」です)。

テーマにおとぎ話があることからか、2009〜10年頃に開催されたハロウィンライブでは今作のアルバム曲が多く披露されていました。ハロウィンライブ復活してほしい!!!

1.Fairy tale ~my last teenage wish~

表題曲です。タイトルと副題でアルバムのテーマを全て体現しています。じわじわと始まるイントロから全部、「これからこのアルバムの物語FAIRY TALEが始まるんだ!」というドキドキワクワクの気持ちを駆り立ててくれます。
歌詞には「かぼちゃの馬車」や「毒りんご」などが登場しており、まさに「おとぎ話」のオープニングでもありますし、そういった言葉を上手く使う倉木さんの若さ故かもしれない遊び心と、デビューからしばらく経って作詞に手慣れてきたプロのセンスも覗くことができます。

2.Feel fine!

12thシングルですが、倉木さんのシングルでは6番目の売り上げで、約45万枚が出荷されたそうです。シーブリーズのCMソングで、倉木さんご本人も出演されるCMでした(YouTubeで見れるかもです)。またMVが2種類あり、1つは倉木さんが海でバンドを従えて歌っているシンプルなものですが、もう一つの「Cafe ver.」と呼ばれるバージョンでは、以前紹介したGARNET CROWのボーカル、中村由利さんをはじめ、愛内里菜さんや三枝夕夏さんなど、当時倉木さんと同じビーイングに所属していた女性アーティストの皆さんが総出演されています。倉木さん関連の映像でも1.2を争うレア映像だと思うんですが、ネットを漁ったら見つかるかもなので興味ある方は探してみてください。
楽曲自体の話に戻りますが、この曲は今までの倉木さんにはなかったかなり派手めなロックの曲で、今でこそライブの定番曲ですが、当時の倉木さんはデモを聞いたとき、「これ、誰が歌うんですか?」と戸惑うほどだったようです。
そんなアゲアゲな曲を作られたのは徳永暁人さんです。やっぱり倉木さんに似合うロックな名曲は徳永さんの曲が多い気がします。
「Fairy tale」でアルバムの物語の幕が開け、その物語を全力で楽しむために嫌でもテンションをぶち上げてくれる一曲です。
後に、現在は解散してしまいましたが、倉木さんの後輩に当たるガールズダンス&ボーカルグループの「La Pon Pom」によってカバーされました。そちらはそちらで、可愛らしくなっていてよきです。

3.Ride on time

なんとここまで3曲共全て徳永さんが作編曲された楽曲が続きます。この曲はまさに"走り出す"ような曲で、アルバムの物語へ向けて、いろいろなものが動き出していくような感覚です。
「倉木さんが(徳永さんの力を借りて)スタートダッシュを切った!」みたいな感じでしょうか。
キャッチーで盛り上がるメロディやサウンドが徳永さんの楽曲の魅力ですね。

4.key to my heart

こちらは今回初登場の大野さんの一発目の楽曲で、綺麗なメロディを聞かせにくる、静かに始まるゆったり系の曲かと思いきや、後半はアップテンポで盛り上がる曲になっています。
PS2のゲーム「テイルズオブデスティニー2」の主題歌ですが、この曲は非常に人気で、10周年の時のベストアルバムにも収録されました。
その人気の通り、めちゃめちゃクオリティが高い曲で、倉木さんの"可愛さ"が滲み出ています。
歌詞に「Winter or Spring Summer or Fall」と登場しているのですが、アルバム収録曲を見渡してみると、夏の曲(Feel fine!)や冬の曲(Winter Bells)なんかも入っていて、四季を通して楽しめる作品だということがわかります。

5.Winter Bells

今作では唯一の名探偵コナンOPテーマです。ザ・クリスマスな一曲で、ちょうど今の時期にピッタリな曲です。スーパーやショッピングモールでも時たま流れていたりするので知っている方も多いのではないでしょうか。
この曲も徳永さん作曲で、ポップでキャッチーなメロディが特徴です。
少し余談ですが、以前たまプラーザで行われたイベント(実質「YESTERDAY LOVE」のリリースイベント)で倉木さんが「クリスマスライブやりたい」というふうにおっしゃっていて、去年は配信ではありましたが、クリスマスライブが開催され、今年は中止になってしまったアルバムのツアーの代わりに、「unconditional L♡VE」の配信ライブが12月に行われるのですが、いつか有観客で、かつ「クリスマス」というイベントがメインのライブが開催されることを願っております。

6.Loving You…

ここでミディアムテンポな曲がやってきます。当時は未発表曲としてアルバムに先行して「”Loving You…”TOUR 2002」というものが開催されました。ちなみに「FAIRY TALE」のツアーもまた別で開催されたみたいです。
タイトル通り切ないラブソングで、大野さんの相変わらず繊細なメロディラインと、少し低めな倉木さんの歌声が雰囲気にマッチしています。
また歌詞には「春」が登場していますね。

7.Can’t forget your love

10thシングルで、R&Bをベースにした壮大なバラードです。壮大なのはサウンドだけではなく、歌詞も「愛」と「歴史」というものが絡んでいて、非常に奥深いものになっています。そして高音のコーラス(?)がめちゃめちゃ綺麗です。

8.Trip in the dream

「Can’t forget your love」で一旦まとまったアルバムの物語ですが、アップテンポな徳永節で再び幕を開け、より色濃く「おとぎ話」の世界観が描かれる"第二章"がスタートします。
"かっこよさ"でいったら今回の12曲の中でいったら1番なんじゃないかな、と個人的に思いますね。

9.Not that kind a girl

シンデレラをテーマに書かれた曲です。さぞロマンチックな曲なのかと思いますが、実際はそんなことはなく、Yoko B. Stoneさんのダークなイメージが炸裂しています。そのメロディに乗るかのように19歳の少女の芯の強い気持ちが描かれています。Yokoさんの曲は今作この曲のみなので、異彩な雰囲気は漂っていますが、アルバムの世界観はしっかり守って、むしろそのテーマの核心の部分を歌っています。

10.Like a star in the night

13thシングルです。曲調は典型的なJpopのバラードという感じですが、その系統の中だったら1番好きな曲です。もうとにかく涙腺崩壊しまくります(語彙力がどっか行きました。笑)。儚いピアノのイントロから始まり、そのままピアノ一本で歌われる猛烈に切ない旋律のAメロ、少しずつ上を向くような感覚のあるBメロ、そしてそこまでのシンプルな流れから一転して煌びやかなサビは、決してそのメロディを損ねることなく、タイトル通り満天の星空のような雄大さ、美しさを想像させます。
2コーラス目のAメロとBメロには、ピアノにわずかなパーカッションが加わり、同じ構成でありながら、儚さの中に少しだけ、でも確実に「前とは違う心の強さ」を表現しており、その先はラストのサビまで、どんどん心を覆っていた雲が晴れ、素敵な星空が現れてくるような感覚を巧妙に描いています。
そんな大野さんと徳永さんのそれぞれのいいところがお互いを高め合ったところに倉木さんの相変わらず透き通る歌声で歌われるのは、この雰囲気にピッタリな「決して叶うことはない心の奥底の密かな恋心」です。
倉木さんがグランドピアノで実際に弾き語りをされているこの曲のMVは必聴です。

11.不思議の国

タイトル通り「不思議の国のアリス」が元となった曲で、歌詞には「ミルメット通り」「白うさぎ」などなどたっぷりファンタジー要素が登場し、おとぎ話っぽさが全開バリバリになっているファンシーで可愛げな曲です。この曲は珍しく、倉木さんが先に書いた歌詞に大野さんがメロディをつける、という形で制作されたそうです。世界観が綺麗にまとまっているのはそういう理由からですね。おとぎ話というコンセプトをまとめ上げてくれています。こういうタイプの曲はなかなか似たものを見ませんし、今の倉木さんにも、これ以前の倉木さんにも描けないであろう、まさに"19歳の倉木麻衣"にしか作ることのできない、オンリーワンの一曲なんじゃないかなと思います。
ちなみに、昨年開催されたオンラインのハロウィンライブではこの曲と「Like a star in the night」の2曲が「ハロウィンに聞きたい曲」の1位と3位として、持山翔子さんのピアノに合わせて披露されました。

12.fantasy

アルバムのラストを担うのは"エンディング"にふさわしい、アコースティックギターの音色が染み入るバラードです。「Like a star in the night」と同じく大野さんと徳永さんのペアによる名バラードです。ですが「Like a star in the night」のような大幅な起伏はなく、ゆったりと物語を終えて眠りにつくような曲です。
「FAIRY TALE」というアルバムで最後の曲が「fantasy」というセンスがさすがです。

最後に

今回は歴代最高傑作の評判も納得の3rdアルバム「FAIRY TALE」のレビューをしました。
「おとぎ話」と「夢を捨てるならば大人になんかなりたくない」という"19歳"だからこそ描くことができたダブルコンセプトを元に(なんなら「四季」というコンセプトの元に最初からコンセプトアルバムとして制作された「君想ふ〜春夏秋冬〜」よりもコンセプティブなんじゃないかっていうくらい)、倉木さんだけの音楽が描かれているこのアルバムは本当に素晴らしい作品です。
倉木さんの歌声や歌詞もさることながら、このアルバムでの大野さんと徳永さんの活躍っぷりもすごいですよね。これだけバラエティに富んでいながら、統一感のある音楽を作るのってとても難しいことだと思います。
もし倉木さんのアルバムを初めて聞くなら、その一枚としてはこのアルバムを推薦したいです。

ということで、今日はこの辺りで失礼します。
次回一度番外編を挟んで、「Perfect Crime」、そして最終回「delicious way」とレビューをしたいと思います!
読んでくださりありがとうございました^_^

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