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アーカイブ2 本武秀一さんのお話 2016年11月18日

本武秀一
プロフィール:屋久島で自然農を営む。

井﨑敦子さん(以下 敦) 屋久島から本武秀一さんにお越しいただきました。屋久島で14年間、自然農でぽんかん、たんかん、それからお芋類をメインで作ってらっしゃるんですけれども、まずは本武さんのほうからお話いただいて、スライドを見ながら座談会形式でお話いただけたらと思います。

本武秀一さん(以下 秀) こんにちは。屋久島のほうからやってまいりました、本武と申します。今日は呼んでいただいてありがとうございます。屋久島のなかなか奥地にいるもので、たくさんの人に会うことがなくて島の中にこもっているような暮らしをしてるので、いろんな人の話を聞いたりね、こういう集まりに来られる方がどういう世界を求めてるのかとか自分自身も吸収して持ち帰りたいと思いまして、どんどん質問なりご意見を寄せていただければありがたいとおもいます。よろしくお願いします。

・もののけの森

 ではスライドを見ながら座談形式で始めさせていただきます。ご発酵料理研究家のなかじさん、「祈りの海」という映画を撮られた東条さん、絵本作家であり堺町画廊のオーナーであるふしはらのじこさん、高島さん、私がメインで入らせていただきますが、どんどんみなさんも気軽に話に入っていただけたらと思います。ということで、これは?

 この写真は、田中俊三君というガイドをしている僕より若い方が撮ってます。突然借りてきたもので希少生物が出てくるんですけど名前とか正確にわかりません(笑)。わかる人がいたら教えてください。ここは屋久島の川なんですね。奥に水が流れていて、上流のほうのおだやかな川ですね。中流、上中流かな?1200、1300メートルあたりです。

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高島美登里さん(以下 美) 一番高いところは?

 1900mぐらいです。九州で一番高い山が屋久島にあって、1000メートル以上の山が30ぐらいあります。
洋上アルプスという別名で呼ばれてまして、海の中に島がボンとある感じで、人間は外周道路の周りに住んでいて、中には住んでないんです。

 屋久島に行かれたことある方いますか?

 結構いますね、どうでしたか?

参加者Aさん 台風が来ていて・・・

 いい時に来ましたねー(笑)

A 霧のなかで、あんまり晴れてない・・・

 あたりはずれがすごい激しいんですよ。
自然の恐ろしさっていうか、これでもかっていうね。台風とか雨降る量とかすごいですね。人間のちっぽけさみたいなもの感じて、どうしょうもないなっていう、祈るしかないなっていう世界ですね。
森の中に入るとちょっとした自分の息が聞こえるくらい、シーンとしたはりつめたような神秘的な場所ですね。
ここはね、「もののけの森」って言われてる、そのあたりの森なんです。

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 屋久島には固有種、つまり屋久島にしかいない動植物がたくさんいてですね。7300年ぐらい前にカルデラ大噴火がありまして、喜界カルデラ、そのときにだいたい島が火砕流で覆われてほとんどの生き物がそこで一旦絶滅したって言われてるんですね。その中で生き残ったものがいて、こうやって繁殖したって言われてるんですけど、その辺はよくわかってなくて、それでも屋久島にしかない植物っていうのがたくさんいて、まだ初めて発見されるようなものがいまだにぞくぞくと出てきてます。昆虫なんかに生えてる植物、冬虫夏草とか、ああいうものがかなり発見されてますね。

ふしはらのじこ(以下 の) この前蘭の新種が発見されてましたね。

 八代蘭っていって最近ですよね。

・トロッコで買い物

秀 これはトロッコ道というのがありまして、昭和の初期に屋久島の杉を伐って経済的なことに使われていた時代のもので、小杉谷という森の中の集落から伐り出した木をトロッコ道に乗せて街に下りてくる。
その映像がね、すごいんだよね。ほんとはね、見せたい。

 そうそう。屋久島に行かれたら「屋久杉自然館」っていう、なんかつまんないんだろうなって思って入ったら(笑)
「新日本紀行」の古い映像、昭和の初めの、すごいの見られるんですよね。
コーンと連なって切った杉の丸太をトロッコに積んだのにまたがって、すごいスピードで!
ほんまにジェットコースターみたいなかんじでニコニコしながら乗ってね。お給料出たらお母さんたちが下の安房って町に買い物に降りて行かれてる映像とか。

 結構集落から距離があるんで、トロッコで街に買い出しにいくんですよね。
小杉谷っていう集落があるんです。その手前に神社がありまして、屋久島は山岳信仰の島で、もともと宮之浦岳っていう一番高い山ですね、そこに各集落から、時期はいろんな時期がありますけど集落の代表者が昔は白装束を着てお参りに榊とかシャクナゲを持って担いで降りてくるんですね。
それを集落の神社に持ち帰ってきて各自家に飾って神様を祀るという、そういう風習がありまして、一旦途絶えたんですけど、再開されてまた始まっています。岳参りの習慣のある神社ですね。ここも岳参りの信仰のある神社です。

 トロッコ、帰りはどうなるんですか?ひいて帰るのかな?(笑)

 それは動力で。いまは廃村になって誰も住んでないです。

秀 線路も下まではなくなりましたね。途中までですね。

・原子林

秀 本土にある深い森と屋久島の森の違いは、何千年も育った木が枯れてその上にいろんな植物の種が発芽して、そっから杉が巨木になって倒れてまた育ってっていうのが何代も続いた森なんですね。長生き。
すごい時間が経っていることが目に見える場所なんですね。カルデラ噴火から7000年も経って人間社会はだいぶ変わってきてるけど、この森はあまり形を変えずに静かに静かに命を育んできたんだろうなと思います。
一本の杉に何十種類もの植物が一斉に育ってるんですね。枯れても次の命がどんどん交代していく、そういう森でしょうね。

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 縄文杉が有名ですけど、地元の人に案内してもらうと車で10分ぐらいで突然こういう森の中で本当に静かで、何千年もこうやってひっそり生きてるんやなって思いますね。

 一番上の淀川登山口まで車で上がれるんですね。1200、1300メートルぐらいまで上がって、そこから10分も歩けば原始林みたいなところに入れるんです。
そこから宮之浦湾に行ったり山歩きしたりする人がいっぱい入ってるんだけどちょっと脇道に逸れるとすごい世界が待ってるんですよ、じつは。
ぜひ体力ない人は(笑)行けば十分そこで味わえるので行ってみてください。
冬は冬で、上の方にいくと雪がすごく降って、6メートルとか積もる年もあるみたいです。北海道から九州までの植物の分布がこの島の中であるので、標高分布みたいなのが珍しいということで世界遺産に指定されてるんですね。

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 これ、私が写ってるんですけど、大きさがね。これ、根っこなんですよ。

 これは杉ではなくて栂(つが)っていう木ですね。

 だからこれが上にずっと長くて、ここは根っこの部分がこんなに大きいんですよ。これがもう、びっくり!中に岩があって、そのままつつみこんで、抱き込んでそのまま成長してるんですね。

 ここも、敦子さんも楽勝でいける(笑)登山口から15分ぐらいの距離のところですね。

 お子さんも行けますね。

 山頂のほうの丸い花崗岩があって、風雪が吹き付けたあとの模様でハリネズミみたいになってるんですね。

 岩もすごく大きな岩があって、この家全部ぐらいの岩がゴーンて。河原とかにも全部この大きさ。山みたいな岩が。

 山頂に神様がいたずらしたとしか考えられないような、ほんとに変わった形の石が山の上にぽんぽんぽんと置いてあるような、そういう山だよね。
これ屋久島シャクナゲっていう固有種ですね。
これは5月末から6月上旬ぐらいに咲く花で、これを見にシャクナゲ登山というのが、その頃はよく行われてますね。これもシャクナゲです山頂のほう。
これはかなり標高高いほうでシャクナゲ以外に木がないんですね。ほとんど草原。1800メートルぐらいからは草原の状態で、岩があってシャクナゲだけが空に向かってポンポン咲いて、これがちょっと夢の中にいるような不思議な感じですね。
これは岩を抱き込んでる杉ですね。
これは触れるんですけど、有名な縄文杉は触れません。
ステージがつくってあって、ここから見てくださいってなってます。
これはモッチョム岳の入り口かな。屋久島っていうのはでっかい一個の花崗岩みたいな島なんですね。で、この岩にいろんな温度とか水の浸透とかで割れて亀裂がありますけれども、そこに腐食したいろんな有機物がたまって土となったり、火山灰がまざって土になっているので、じつは屋久島の土の層って浅いんですよね。
そこに植物たちが根を深くはれないのに、いっぱいしがみついて育ってるんだよね。不思議なエネルギーが出てるんだなとしか思えないよね。

・真っ白な珊瑚礁・・・

 滝が多いですよね。

 滝、一杯あります。花崗岩の割れ目から自然にできた滝なんですよね。
屋久島は珊瑚礁もね、十数年前に僕が行って最初に海に潜った時には珊瑚礁がいっぱいあって、シュノーケリングで潜ってもでかい魚がこの辺ばんばん泳いでくるような場所だったんですけれども、いまは残念ながらちょっとびっくりするような勢いで珊瑚が真っ白になってしまって、魚もどんどん減ってますね。
原因が川に近いところから起こってきてるので一目瞭然で、陸からやっぱり変なものを流し込んで、どんどん川の生命が失われていってる。
十数年でもうものすごい勢いですね。とくに僕は農業をしてるものですから、除草剤っていうのがものすごい海藻を枯らすんですね。
やっぱり海藻を枯らすとそこから生き物がね、すべての最初の部分の生態系が立たれるので、生き物が住めないすめない状態になってくる。
畑だけって思ってるかもしれないけど、みんなが除草剤するとどんどん川に流れ込んで、気が付いたら凄い量になってて、一人一人がこれくらい大丈夫だろうって思っても、そういうことなんですよね。

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秀 とくにラウンドアップっていう最近よく出てる農薬のグリホサートという成分が調べてみますと、相当悪いもので、デンマークでは地下水汚染してるっていうことで相当問題になったり、アメリカでもちゃんと分解されるってことを謳っちゃダメだっていう州があったりとか。
ところがそうやって欧米で禁止になったものが日本に流されて、押し込まれてるんですね。
抗癌剤とか薬品関係もそういう関係がすごく多くて、農薬とかも、元は一緒なんですね。日本は情報が少ない。言う人が少ない。知らないっていう人が多くてそんな悪かったの?ってみんな知らない間に病気がどんどん広まって、癌がすごいですよね。
日本、先進国の癌は減ってるのに日本だけ増えてってる。
だからもうちょっとね、そんな知識を自分たちでちゃんとわかってそういうことをさせないような、自治の力ですね。
地域地域でそういうことはしません、ってはっきりしていかないといけないと思うんですよね。
ミツバチとかもいわれてますけど、そうやって生態系を壊すってことは自分たちの命を削って、これは貴重とかいう問題じゃなくて、元を絶たれるってことなんですよね。それくらいの危機感を、もういま持たなきゃいけないという段階に来ているんですね。

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秀 幻想的な海ですけれども、これは海の中のでかい岩場を下に下りてます。
ウミガメも来ます。高級魚っていわれてるクエとかがいるんですね。
磯釣りの日本記録を出すとかいう気合入れた人が、磯で竿三本持ってかれてるとかねそういうことしてますね。これは入江ですね。

・本武さんのミカン農園

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 これはね私が撮ったんですけど本武さんのミカン農園です。ミカンがどこにあるねん(笑)あそこがモッチョム岳ですね。

 これは屋久島のほんとに南側ですね。
山を撮ってミカン撮ろうと思ってないからミカン見えないけどね(笑)
軽トラの四駆でしかのぼっていけないようなミカン山ですね。
古いやつは70年ものとかのがあって、ぽんかんの。
ミカンの下には結構野菜とかいろんなの植わってたりしてるんですよね。
大根とミカンてなんかじつは相性いいみたいですね。ミカンの1mぐらいの苗木の横に大根十センチぐらい生えてて、どうなるだろうと見てたけど、両方とも調子よくいったんですよ。それからはミカンの下に大根の種をバーッとまいといたら勝手になんか育って・・・

 本武さんのところに晩御飯にいくとライト持ってって大根抜いてきてくれるんですよ。本武さんのところのミカンは背が高いんですよね。
他の一般的な農家さんは木が低くて広げるけど、それはなんで?

 古い木ですから一本がでかいんですよ。そっちの一部屋(十畳ぐらい)より横幅もあるしでかいですね。そうなってくると、古い木っていうのはミカンの枝から新芽がびゅーっと伸びて地下ではぐーっと根が伸びてるんですね。
屋久島は農協が支配してますから、農協さんのミカン指導に耳を傾けて、みんな素直な人たちだからその通りにするんですね。
そうすると結局どういうことが起きるかっていうと、上部を切ってやると根も切れる。で根って養分を探して下に伸びてるんですね。
でそこに周りに肥料たくさん入れなさいって肥料あげます。農協さんも商売ですから、余分に売りつけて余分に撒いたらミカンも余分な実をつけてしまうんですね。化学肥料なんかあげたくなくても吸い上げてしまうから、実の数が増えるから、そうすると木が弱るから摘花しなさいと。
それである程度減らしていくから、いろんな作業が増えるんですね。
見ていると、お金がかかるように手間がかかるように指導されて、木は自分で生きる生命力がだんだん弱くなってる。
それを病気にならないように虫がつかないようにを徹底させてる、そういうふうににしか見えなくて。
僕はなるべく自然の木に近い形ですね。
葉脈とおんなじ木の姿みたいなのが一番自然らしいので。
ということは木全体が細長い葉っぱの形をミカンの木は目指してる。
そうすると長生きするんですよね。
長生きしてもらわないといきなり枯れるとそこがボコって空きますから、長生きしてもらって。
昔の品種は美味しいんですよ。今の苗、美味しくないんですよ。
今の人なんか甘いの好きなのか、食べてみると甘いだけなんですよ。

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 いまね、果物ってどんどん甘くなって・・・

 だからミカンマニアの人は酸味と甘みのバランスが最高だとかいって。
古い木だからなんですよね。あとは風通しと日当たりを良くしてやる。
人間の剪定によって木がおかしくなって、枝がぶつかりあってるっていうところだけがトラブルになるので、そこと、あと虫がいっぱいついたところは伐ったりしますけど。じつはミカンの木ってすべすべなんですね。
ゴツゴツした皮じゃない木っていうのは、幹に強い光があたっちゃまずいんですよ。これやると幹に空洞ができたり。ゴツゴツした杉みたいな皮には光があたっても大丈夫なんですけど、つるつるしたやわらかい木っていうのはね。
あとは、横に枝を伸ばしている木も幹を守ろうとしているのが多いですね。
そういうのが照葉樹の木っていうのは多いです。常緑照葉樹っていって、照葉樹林っていうのはテカテカしてるんですね。ミカンとか、お茶もそう。
仙台から西は全部照葉樹の森ですよね。

・台風で茎も折れぬ丈夫な稲

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 これね、本武さんの自然農の田んぼです。

 一本植えって言って、ここは今年から新しく田んぼにしたんですけど、以前借りていたところは10数年やってまして、自然農ってはじめて2年ぐらいはろくなことなくて、まわりにもダメだろうって言われながらしぶとくやってたら、結局米やって小麦やって米やって終わったら小麦やって、ってやってたら稲の残渣がすごいコメの肥料になってコメが終わった後の古株が麦になって、やってるうちに一粒で90とかに分蘖して、一万粒近いような株ができて、慣行農法でされてる人より採れていくような現象が起きてます。
ずっとやっていると、見えない微生物の動きとかもどんどんよくなってくる。

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なかじさん(以下 な) 品種は何ですか?

 これは「にこまる」っていう品種です。こっちは緑米ですね。
「にこまる」は長崎県で最初開発されててまだ4年ぐらいしか続いてなくて、もうそろそろ米も継げないような品種ばっかり黙って足していくんじゃないかなと思って、継げるかどうか最後だなと思って試してるんですね。
他の種類も試してますけど、継げるように望みを託して。

 いつも普通は台風が多いので屋久島は台風の前に稲刈りするんですけど、自然農の方は夏を越して?

秀 そうですね。熱帯の植物で温度とか水温が上がって夏に生成されて出てくる土壌成分がある。結局自然の中で必要なものがそのときにできあがってくる。
自然はバランスよく働きかけている。余計なことをすると余計な仕事が増える。
なるべく手をかけないで自然の力を最大限に利用してやると一番生命力が強いものができるんです。台風が来てだめになったことないです。茎も折れないですね。
一本植えの理由も四方八方好きなところに根をはれるから、風通しがいいんですね。

な 株はどのくらい?

 株は20か30。

 種まきと稲刈りは何月ぐらいなんですか?

 種まきは、GW終わったらお米作業開始。

 結構ゆっくりですね。

 そうですね。苗づくりも諸先輩方のいろんな本とかやり方を見ましたが、僕はこれがいいっていうのを自分なりに編み出してそれをやり続けてます。
田んぼのまん中に島を作って、そこに発芽しかけた種を投げてまきつけるんですね。そこに麦わらを10センチぐらいかぶせて島をつくる。
以前はじっこのほうでやってたらねずみに食われたり(笑)それで島つくって中でやるようにしたら苗ができてくるのが早いんですよ。
化学肥料やってるんじゃないか?っていうぐらい早かったり量もすごい穫れる。
その方向でずっとやってますね6月頭を照準として、田植えして収穫するのは10月の半ばぐらい。掛け干しにもこだわってるから。
でも今年は雨が止まなくて、発芽するんじゃないかと思ったけどどうにか発芽しないで穫れました。古代から照葉樹林の森が屋久島に残ってるんですね。
上関もそうですけど人間の手が入らない自然は、本当に人間にとっての癒しの場所なんですよね。
そういうところがなくなるっていうのは自分の命や健康を損なうことと隣り合わせです。

・余所者が守る、世界の宝。

僕も移住者で、全然島の中では余所者って言われ続けてるけど、余所者が守らないといけないんですよね、世界の宝なので。
屋久島の人たちだけのものという感覚じゃなく。もうまわりの人たちの力がないと守り切れないというところまで本当に来ています。
屋久島は平成5年に世界遺産に登録されてまして、それまではこの大自然っていうものは島の人にはあたりまえのことで、そういうものは価値があるっていう見方はなかったんですね。
それを世界遺産登録するかしないかのときに初めて、こういうものがみんな求めてるものなんだとか観光になるんだとか、色々そういう普及があって、環境っていうことに一時期関心が高まったんですね。
議会でも屋久島憲章が可決されて、こういう島づくりをしましょうっていう指針が決まったんです。にもかかわらず、この通りにはいってないんです。
成人式のとき成人の人に読ませたりとか学校には必ず貼ってあったりするんですね。だけど形だけのものになって。いまだにいろんな問題があります。
だけど、今年の三月にユネスコエコパークとして、世界遺産とはもうひとつ違う登録種として認められたんです。これは、「自然と人間の共生」としての取り組みをしてますか?というのが課題です。
いままで1980年代に屋久島でユネスコの登録をして、そのときは森だけでしたが今回は人間が住む地域も含めての再登録になりました。

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秀 そちらにいる「やわら香」さん、屋久杉でアロマの製品をつくられてやっておられますけれど、荒れた山の前岳、屋久島は奥岳、前岳といって集落あたりから見えるところは前岳。奥岳っていうのはさっきのシャクナゲが咲いてたような奥に連なってる一番奥にでかいのがあるからまわりからは奥岳は見えないんですね。
前岳は人間と関わって昔から杉が金になるぞっていって本土と同じように杉をたくさん植えてあって、結局手入れが行き届かなくなくなって屋久島はだいたいそういうのが枯れてシダ植物が覆っていくんですね。
人も入れないようになって、そこに雨がものすごい降りますから、土砂崩れとかが意外と起こらないのが不思議なんですけど、危険だっていうマップで見るとほとんどがそういう地域になってて、そういう荒れた前岳をちゃんと整備してね、子どもたちの森林教育の場とかちゃんと産業しても役に立つんですよっていうことを間伐した杉を使って精油絞って製品にして実例を作ってる企業が、この「やわら香」さんです。
屋久杉も原種の杉なんですね。固有種なんですよね。そういう昔からあるものっていうのはすごい生命エネルギーで、癒しの力が杉はじつはすごいらしいんですね。

やわら香 過酷な環境で育っているので、そこから出てくる成分で、安眠作用がすごいんですね。サンプルがあるので、ぜひ香りを嗅いでみてください。

・屋久島憲章

 最後に、屋久島憲章を読みましょう。
せっかくユネスコエコパーク登録されたんだからこの屋久島憲章を島民に思い出してもらって、もう一度島づくりについて考えましょうっていうことを、皆で集まって議員さんも呼んで訴えたりしています。
この世の中ですからグローバル企業がTPPを通してどんどん進出してくると思うんですね。
僕は百姓してますから、遺伝子組み換えっていう作物が一番怖いなって思ってるんですね。
原発と遺伝子組み換えこれは一回始めたら始末に負えない、後戻りできないものだと認識しています。
この遺伝子組み換え作物、海外で作られてますけど輸出先はほとんど日本なんですよね。みなさん知らない間に口にしてます。
TPPがはじまることによって日本でも作付けが始まると思います。
実際に農研っていう京都にある日本でも苗とか米の種を卸してる、そこはモンサント社の種行ってます。
気が付いたら遺伝子組み換えの種が回っている可能性がありますね。
トランプさんが大統領になったからTPPは進まないんじゃないかと思ったけど結局日本の政治家はどんどん進めるつもりでいるんで、今は国よりグローバル企業のほうが力ありますから、特に日本の政治家たちはそっちのセールスマンになってるんだなっていうのがわかったので、どんどん進めてくると思うので屋久島でも進められる前に生態系守るために、遺伝子組み換え植物をつくってはいけない条例を、先に議会のほうで作ってもらえないかというのを議会で働きかけを早めないとと思ってます。
京都も固有種とかいろいろあるでしょうから、始まったら早いのでその前に早めに手を打っておかないと、と思います。それでは、読ませていただきます。

*屋久島憲章*

前文

地球と人類の宝物である屋久島。
この島は、周囲132km、面積503K㎡の日本で5番目に大きい島である。
屋久杉を象徴とする森厳な大自然に抱かれ、神々に頭をたれ、流れに身を浄め大海の恵みに日々を委ねて人々が生きた島。
この島は、はるかな昔から人々の魂を揺さぶりつづけ、近世森林の保全と活用で人々が苦しみ葛藤した島である。そして今、物質文明の荒波をようように免れた屋久島は、その存在そのものが人間に対する啓示であり、地球的テーマそのものである。
この島に住む私たちは、この屋久島の価値と役割を正しくとらえ、自らの信念と生きざまによって、この島の自然と歴史に立脚した確かな歩を始める。そのため、この島の自然と環境を私たちの基本的資産として、この資産の価値を高めながら、うまく活用して生活の総合的な活動の範囲を拡大し、水準を引き上げていくことを原則としたい。
この原則は、行政機関はもちろん、屋久島に係わる全ての人々が守るべき原則でありたい。
国の自然遺産への登録も、鹿児島県の環境文化村構想も、この原則を尊重し、理想へ向けて、その水準を高く100年の計を誤らず推進されることを願うものであり、これを契機として、次のことを目標とし、ここに屋久島憲章を定めます。

条文

1.わたくしたちは、島づくりの指標として、いつでもどこでもおいしい水が飲め、人々が感動を得られるような、水環境の保全と創造につとめ、そのことによって屋久島の価値を問いつづけます。

2.わたくしたちは、自然とのかかわりかたを身につけた子供たちが、夢と希望を抱き世界の子供たちにとって憧れであるような豊かな地域社会をつくります。

3.わたくしたちは、歴史と伝統を大切にし、自然資源と環境の恵みを活かし、その価値を損なうことのない、永続できる島づくりを進めます。

4.わたくしたちは、自然と人間が共生する豊かで個性的な情報を提供し、全世界の人々と交流を深めます。

以上です。ありがとうございました。

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