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メガベンチャーとベンチャーのPMの違い~ヘンリー和田さん編~

こんにちは。クライスPM支援チームの櫻内です。

先日のpmconf2023は皆さんお疲れ様でした。
初のオフラインオンライン同時開催でしたが、クライスPM支援チームは運営の方々のご尽力もあり、大変楽しく過ごすことが出来ました。
運営の皆様大変お疲れ様&ありがとうございました!

弊社は2019年から4年連続で引き続き、今年も協賛しておりました。
が、今年はなんと公募セッションに落選してしまい、セッションは無し。
同じく惜しくも公募セッションに漏れた同志(?)達に呼びかけ、Discordセッションを企画いたしました。

今回のnoteではDiscordで企画したセッションのうち以下2つを取り上げて紹介していきます。
ヘンリー和田さんによる「メガベンチャーとベンチャーのPMの違い」
PayPay鈴木さんによる「大企業とベンチャーのPMの違い」

企業やプロダクトのフェーズによって異なるPMの役割や得られる経験のお話は大変興味深かったです。まずはヘンリー和田さんのお話からどうぞ。


違いその①:プロダクトへの向き合い方

クライス山本(以後山本):本日はヘンリーの和田さんにお越しいただいて、「ベンチャーとメガベンチャーの違い」というテーマについてお話を伺っていきます。和田さん宜しくお願いいたします。

ヘンリー和田さん(以後和田さん):freee株式会社でのPMを得て今年の10月より病院向けクラウド型電子カルテ事業を行う株式会社ヘンリーにてPMをしております、和田(@aki_hiro0038)です。

メガベンチャーを経て、現在ベンチャーに挑戦しています。本日はその背景や、私が感じていることをお話していければと思っています。
どうぞ宜しくお願いいたします。

✏️和田さん略歴✏️
新卒でSIerを経験後、サイバーエージェントのtoCメディアサービスでプロダクトマネージャーに転身。
その後toBサービスのfreeeでもプロダクトマネージメントを経験後、今年の10月から病院向けのレセコン一体型クラウド電子カルテ「Henry」でプロダクトマネージメントに従事。

山本:freeeさんに入られた時はどういった会社規模、PM組織規模の時にジョインされたのですか?

和田さん:freeeに入社した際は数百名規模で、千を超える従業員規模に成長するところまで在籍していました。組織既に大きいなと思う感覚がある中、それが2倍3倍に成長していく過程を経験してきました。
企業文化の移り変わりなどから学べるポイントがありました。

山本:各方面からの情報によると、freeeさんは少なくとも二桁人数位のPMがいらっしゃるという風に伺っていますが、ヘンリーさんは会社全体やPM組織全体は何名位なのでしょうか。

和田さん:ヘンリーは今丁度50名を超えたところです。プロダクト組織が半分以上を占めていて、プロダクトマネージャーは私を含めて4人います。
この規模の会社にしてはPMも開発も人数は多いと思います。

開発チームは4チームほどあり、そこにプロダクトマネージャーや、エンジニアもやりながらプロダクトマネジメントに近いことに向き合っている者もいます。

山本:一桁人数のPMの数のヘンリーさんと、かたや数十名のPM組織のfreeeさんだとプロダクトの数というところも違ってくると思います。
ベンチャーのヘンリーさんとメガベンチャーのfreeeさんは、どう違いますか?

和田さん:色々な観点があります。お客さんへの向き合い方はすごく違うと思っています。
freeeにいた頃は毎月数百数千レベルの新しいお客さんが増えていっている状況で、増え続けるお客さんのマーケットニーズを把握しながら、新しいロードマップをどう作っていくか?という所へ都度向き合っていました。
売上的にはセールスで売りを上げていく割合が大きいものの、自然流入も相当数あり、プロダクトチームはそこへも相対します。
一方、今のベンチャーは顧客数が数十の単位になってくるので、一顧客一顧客へのディープダイブはより深くなっています。

山本:ディープダイブとは具体的に何をするんですか?

和田さん:エスノグラフィーという現場に出向いての業務観察をしています。弊社のユーザーである医療従事者の方々が現場でどういう課題に対して向き合って日々お仕事されているのかや、生活されているのかということを観察しに行っています。
freeeの頃も行ってはいましたが、それをヘンリーに入社する前から業務委託として契約して先にお客さんの現場を見に行くということから始めました。
会社としても現場に出向くことを推奨していて、プロダクトマネージャーやリサーチャー、エンジニアも最初に病院訪問という形で既存のお客様や導入作業中のお客様のところに出向いています。
私はまだ入社して2か月ですが、4病院、16インタビューに加え、学会などにも行きました。

山本:それは企業規模の違いによるものか、或いはプロダクトのフェーズによる違いによるものなのかと思ったのですが、いかがですか。

和田さん:フェーズの違いもあるかと思います。今はPMFの兆しが見えていて、安定して契約してくださっているお客さんも増えてきているという状況です。
既存のお客さんが持っているニーズを把握しながら、点を横にどう広げていくか?ということを考えているフェーズにあります。
freeeでも同じことをやってきていますが、それをベースにどう事業拡大をしていきたいか?という話をしていました。1プロダクトの開発テーマを検証する目的でディープダイブしていくのか、広く事業拡大を狙ってディープダイブしていくのか、目的が違っていたように思います。

違いその②:関われる意思決定レイヤー


山本:
同じ考えでも目的が違うという話になりましたが、プロダクトマネージャーとして何か意識しなければならないことはありますか。

和田さん:普通に皆さんが想像出来るメガベンチャーとベンチャーの違い位のイメージで良いと思っています。プロダクトマネージャーとして関われる領域、どこまで経営の意思決定に影響を及ばせるかというレベルが違います。
そこを狙って転職をしたという背景もあります。
メガベンチャーでいちPMとしてやってきて、ある程度再現性をもって成果を自分の中で出すための哲学が見えてきたような感覚が芽生え始めたのですが、それをもって世界を変えるインパクトを起こしていきたいと考えた際に、やはり事業の意思決定に影響を持つことが出来るか気になってきました。
メガベンチャーの場合意思決定をする人たちが決まっていて、その人たちのためにインプットを作る、CEO等ある程度階層が離れている人向けだったりすることもありました。
今は直接CEOに意見する機会があり、間に挟まる人がいません。

山本:どういう時に事業の意思決定に関わっていると感じられますか。

和田さん:経営会議に出席して欲しいと言われます。人が足りていないというのもありますが、直近入社ながら現場の方々と会話をするという点では社内の中では1,2を争うような立ち位置になっています。
セールスとサクセスパートナー(カスタマーサクセス)の中間的な立場から、「ユーザーさんがどんな思いを持って仕事をしているのか?」というところからヒアリングを始めています。
それによって、セールスや導入時には会話として挙がってこない、ユーザーに寄り添った心理という観点で経営に意見を求められるようになってきています。

違いその③:働き方

山本:一方で経営会議に参加をしたりユーザーさんのところに行くとその分PMとしての負担も増えるのではないですか。

和田さん:ハードワークです。PMの枠を超えて色んなことをやらなきゃいけない世界です。飛び込む段階で覚悟をしていたところもありますし、求めていたところもあります。
メガベンチャーだとミッションが生じた場合に、そこに対して一番スキルを持っている人がアサインされることが多かったですが、ヘンリーでは例えば来期の採用拡大に向けて自分が採用をリードする立場にチャレンジできています。
組織をプロダクトと見立ててマネジメントをしていくことはずっと挑戦したかったのですが、こういった伸ばしたい部分に対して、人が足りないので出来るという環境はあります。

山本:色々な方とキャリア面談をさせていただく中で、PM組織を中からマネジメントしていきたいという方はすごく多いような気がしています。

和田さん:私も第一回のpmconfが開催された際は名もなきSIerで受託開発をしていて、そこから段々上へとキャリアをピボットをしてきて、だんだん自分の中の成功哲学が分かってきて「じゃあ次は何したいか?」となった時に、組織づくりや、世の中のために活かすためにはどうしたらいいのかという視点になってきました。

山本:特にPMの方々はお会いしていても、自分のためだけではなくて社会のために、他の人のためにという思いが強い印象です。
ところで、先ほどハードワークと仰っていましたが、スタートアップならではの大変なところって他にどんなところがありますか。

和田さん:予定外のところで駆り出されることや、環境としてまだ整っていないところはあります。
例えばオンボーディングも整っていないですし、結構自立自走して動くことが求められます。
主体性をもって成長したいと思っている人にはめちゃくちゃ餌だらけです。

和田さん:この後のTrackAでエムスリーの山崎さんがプロダクトマネージャーのレベルについても言及されるみたいで資料も公開されているのですが、私自身はそのレベル2に足をかけ始めている段階だと思っています。

このままでも一個人として生きる分には何ら問題ないのですが、最近生まれた子どもの成長率と比べたら、自分の成長角度を維持していかなければと気にしています。

違いその④:成長観点

山本:今まさにレベルの話が出ましたが、どんな点について成長出来そうだと手ごたえを感じていますか。

和田さん:経営視点です。一番効果が高いのは自分で意思決定をして、その結果がどうだったかを自分の中でかみ砕いて解釈していくことだと思っています。自分で意思決定をしていくということが一番学びとして早いですね。

山本:今日のキーノートセッションで及川さんと吉羽さんが「自分のお金でもやるか?」というお話をしていたと思いますが、まさにそのスタンスに近しいものを今やられているんですね。

和田さん:そうですね。投資することが企業の最適解になるのか、そのために、痛みを伴うような変化の意思決定を自分でしていくことに挑戦できるというところです。

山本:これまでに難しい局面の意思決定はありましたか。

和田さん:まだ入社一か月なのでそこまでのものは無いです。どこまで踏み込むのか難しいという観点の話では、今度組織にリサーチャーを迎えるにあたり、オンボーディングを唯一リサーチャーと一緒に働いたことがある人間として行うという話があります。
専門領域に土足で踏み込まなければならないところに怖さはありますが、上手く互いに尊重しながらやっていきたいと考えています。

山本:ところで、今回折角ベンチャーとメガベンチャーという切り口でお話していただいているので、メガベンチャーのあの規模感だからこそ出来たということはありますか。

和田さん:人数が増えてくると出せる成果に差が生まれてくるため、標準化していく仕組みをボトムアップでやれたことでしょうか。
freeeのpmconfを主催して、PMの知見を共有しあう場を作りました。今の組織にはこういう課題感があるだろうと自分たちでビジョンをもって、巻き込みながらやったことです。他にも全然関係のない人たちと早く関係値を築き、道筋を立てて目標を達成していくという経験はたくさんできました。

山本:一定の人数がいないと出来ないですし、業務に余裕がないと難しいですよね。
聴衆の方から質問がきています。
現状兼務がある状況でプロダクトマネージャーの業務にフォーカスすることも必要になってくるかと思います。どの仕事に入るのか?はどうバランスを取られていますか。

和田さん:結構話し合いながら決めています。前程として、現職にはプロダクトマネージャーが4名というお伝えしましたが、私が入社する時点で職種としてプロダクトマネージャーという方はいらっしゃらず、組織としてプロダクトマネージャーにどのような期待をしていいか分からないという状況でした。
なので期待されていたことの一つとして、自分自身のジョブディスクリプションを考え、成果の最大化へ繋げて欲しいというのがありました。メガベンチャーでやってきた時の経験を軸に、今の環境にフィットさせるとどういう形が良さそうかをチームに提案していって、一旦動いてダメなら振り返りフレキシブルに修正していっています。
やってから考えるというのが重要だと思っています。やって、振り返って、皆で話し合っていっています。

山本:ありがとうございます。お時間が迫ってきたので最後の質問へいきます。
先ほど意思決定に関わるというお話がありましたが、経営の意思決定に近づけば近づくほど経営陣と考えが異なる場面が出てくることもあるかと思います。そういった際にどのように落としどころを見つけていかれているのでしょうか。

和田さん:今今は対立するというよりは、「なるほど、そういう視点もあったのか!」という風に言われることの方が多いです。そしてその視点をベースにさらに意見を求められるシーンが多いです。
今後意見が異なる場面に相対した際には、私は顧客視点に立ち戻ると思います。事業成長を考えることももちろんですが、顧客の満足度やどれだけの課題を解決できたかが事業の展開に繋がっていくと考えているので、ユーザー視点でどのような意思決定が重要だと考えられるかという提案をさせていただくことはあるかと思います。

和田さん、ありがとうございました!
次の記事では大企業PayPayさんでPMを担うすずけんさんとのセッションの模様もお送りします。


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