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応援はきっと力になると信じている

みなさんこんばんは、まつです。

これまでnoteで書いてきたように、私は陸上競技の観戦が好きです。

新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、2月末頃より長らく陸上競技の試合は悉く延期・中止になってきました。

しかし先日遂に、毎年7月に行われる長距離種目の記録会「ホクレン・ディスタンスチャレンジ」の無観客での開催が発表されたのです。

観に行くことが叶わずとも、選手たちの活躍の場が戻ってくることはファンとして喜ばしいことです。

一方で、ホクレン開催とほぼ同じタイミングに日本陸上競技連盟より発表された「陸上競技活動再開についてのガイダンス」のひとつ「競技会開催について」の中に、このような記述がありました。

① 観客を入れない、または観客を限定的に入れても十分な広さがある場合において、3密を防ぐため
競技場客席(スタンドなど)をチーム関係者など待機スペースとして有効的に使用する。
② 声を出しての応援、集団での応援を行わない。

「観客を入れない」、「声を出しての応援、集団での応援を行わない」。

もしこのままコロナが完全に収束せず、コロナとの共存が前提の社会になったら、ファンが観戦に行くことはもう叶わないのかも知れない――そんな不安を抱いたことも事実です。

しかしながら、ファンが観戦に行けないことは最悪どうだっていいのです(嫌だけど)。

無観客で、応援のない空間で行われる試合で、選手たちは最大限のパフォーマンスを発揮できるのだろうか――これこそが最大の不安要素です。

なぜそう思うのか。それは、現地観戦に足繁く通う中で、観客の応援は間違いなく選手たちを後押ししている、そう思う瞬間を目の当たりにしてきたからです。

2017年日本インカレ"もうひとつの熱狂"

私は2013年に陸上競技の現地観戦を始めて以来、年平均30試合程度のペースで観戦を続けてきました。その中でも特に「応援の力」が印象深かった大会があります。

2017年9月に福井県営陸上競技場(現:9.98スタジアム)で行われた日本学生陸上競技対校選手権大会(通称:日本インカレ)です。
陸上競技のファンであればきっと、桐生祥秀選手が日本人選手として初めて男子100m走で9秒台を記録したあの大会、とピンとくることでしょう。

私は日本人初の9秒台、その歴史的瞬間をメインスタンドのゴール間近の席で見ていました。

9.99で止まるゴールタイマー。ざわつくメインスタンドを埋め尽くす観客たち。

そして正式記録9.98が出た瞬間、競技場全体に歓喜と熱狂の渦が瞬く間に拡散されました。

声にならない叫びを上げる者、見知らぬ隣の席の観客とハイタッチを交わす者。私も気づけば、隣にいた見ず知らずの観客とハイタッチを交わしていました。

時間が経つにつれ、渦は次第に小さくなったものの、完全に収まることはありませんでした。観客のほとんどは100mが終わっても帰らず、メインスタンドに留まっていたからです。

100mのあとに始まった種目のひとつが、男子走幅跳。

私は、4×400mR予選の写真が撮りやすい第3コーナー付近のサイドスタンドへ移動し、マイルリレーの合間に遠目でメインスタンドで行われている走幅跳を眺めていました。

メインスタンドは、とてもいい意味で異様な雰囲気でした。100mが終わってしばらく経ってもなおメインスタンドを埋め尽くす、人、人、人。

走幅跳の試合でこんなにも観客が入っている場面を見たのは、このときが初めてでした。

走幅跳といえば、競技者が観客に手拍子を求めることが多々あります。

(失礼を承知で言うと)それまで何度か見ていた走幅跳の試合では、競技者が手拍子を求めても、応えるのは出場選手のチームメートたちと一部の熱心な観客だけという印象でした。

しかし、この日はチームメートだけでなく、メインスタンドを埋め尽くす一般の観客までもが一体となって、走幅跳の選手たちに手拍子を送っていたのです。その手拍子は会場を揺らさんばかりの、大きなものでした。

とにかく、この日の走幅跳の盛り上がりは凄まじかったのです。

そしてこの、かつてない大声援に後押しされた競技の結果はというと…。

従来の大会記録(8m01)を塗り替える8m09(+2.0)で津波響樹選手(東洋大学)が優勝を果たしました。続く2位の山川夏輝選手(日本大学)も大会記録を上回る8m06(+1.9)。

8mオーバーの大台を複数の選手が記録するのは、日本インカレ史上初の出来事だったそう。日本一を決める日本選手権でも見られないような、公認記録8m台の超ハイレベルな応酬が、学生トップを争う日本インカレで実現したのです。

+1.8mの"神風"が吹いた100mと同じく風の条件がよかったことは、好記録が出た要因のひとつと見て間違いないでしょう。

しかし、このとき試合を現地で見ていた私には、会場を渦巻く熱気が、重なり合う観客たちの手拍子が、この好記録をアシストしたように思えてならなかったのです。

今まで見てきた幾多の試合の中で1番、「応援は間違いなく選手たちの背中を押している」ことを感じた試合でした。

箱根駅伝のハイレベル化と応援の力

もう少し馴染み深い大会に目を向けると、箱根駅伝もこの例に倣っていると感じてなりません。

箱根駅伝が年々高速化している要因として主に挙げられているのは、ナイキ社のヴェイパーフライを筆頭とした各メーカーの競争激化によるシューズ性能の向上や、トレーニングの質の向上などです。

しかし私はそれらの要因に加えて、沿道を2重にも3重にも埋め尽くし(箱根山中の一部を除いて)途切れることのない観客たちの応援も、高速化を後押ししているのではないかと考えています。

もし、箱根駅伝の高速化と応援が全くの無関係であれば、箱根駅伝で活躍した選手たちが進む実業団による、ニューイヤー駅伝も高速化するはずです。

ここで、直近3年間のニューイヤー駅伝と箱根駅伝において「区間記録が更新された回数」に着目して比較してみます。

箱根駅伝では、近年距離変更があり区間記録を比較的更新しやすい4,5,6区を除いた7区間だけでも、計7回も区間記録が更新されています。
対して、ニューイヤー駅伝では僅か1回のみ。

そしてこの2つの駅伝の大きな違いは「観客の数」だと考えています。

先述のように、箱根駅伝は全長217.1kmのコースのほぼ全体を観客が埋め尽くしています。一方のニューイヤー駅伝は、スタート・ゴール・中継所・駅の周辺を除いて観客がまばらな箇所が多々あります。

この差が、長距離種目という単純な走力だけでなくメンタルの強さも問われる競技において、大きな違いを生み出しているのではないか、と私は推測しているのです。

最後に

ここまで応援は選手たちを後押ししているはずだ、という推論を展開してきました。

私自身は、陸上競技どころかスポーツ経験すら皆無で、実際に応援がどれほど力になるのかは、正直なところよく分かりません。

しかし、今回例に挙げたように、そして今回挙げた以外にも現地で試合を見てきて、応援が力になっていると感じる場面が多々ありました。

私は、ファンの応援はきっと選手たちの力になっていると信じてやみません。

ファンが何の気兼ねもなく競技場や沿道に足を運び、今までどおり選手たちに声援を送る――そんな日々が戻ってくることを願っています。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。