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ダーツというスポーツにバリアフリーさを感じる

私は、小さい頃から運動が苦手だったので体育の授業は憂鬱であった。体育の授業以外ではスポーツ系は体験塾等に通っていたこともありうまくついていけたのはゲートボール、クロッケー、グラウンドゴルフ、ペタンク、スポーツ剣術系(チャンバラ、剣道)くらいの軽運動のみだった。しかし、室内競技や「脳のスポーツ,電子スポーツ」が世間に出てからはすごくこちらに居場所を求めることが出来るようになったし、これこそバリアフリーへ一歩近づいたことであると感じる。

体育の授業で行うのは基本的に激しい運動を伴うものが多いので、発達性協調運動障害をもつ当事者たちや、神経の発達が不安定な難を持つ当事者にとっては苦痛を感じたと思うだろう。それを解消できたのが、ダーツだった。

ただの的あてじゃない!計算力や精神力も競うダーツ

ダーツといえば、的あて系のイギリス生まれの競技である。私はもともとスティール・ティップ・ダーツを色んな体の難を抱えている人たちとその難をこえてパラ競技として楽しんでいたが、この競技はイギリスで障害者ダーツ団体がパラ競技として確立させようとしている動きを知り、最近は世界のパラダーツ大会がWinmau社などによって行われていることがわかった。
去年、パラダーツ啓発に貢献された「ザ・タイガー」ことTony Pass選手が亡くなられた。今年で一周忌を迎える彼は特発性肺線維症という難病を持っていて、イギリスでパラダーツ組織を立ち上げた一員でどんな人にもスポーツで競える居場所を与えてくれたという功績を遺してくださった。彼のプレイスタイルは、酸素を送り込む器具をキャリーバッグ状のものに入れてそのままダーツを打つ、というものだった。
障害者ダーツ大会の模様を動画で見てみると、プレイスタイルも色々あって、隻腕であるプレイヤーも、足が不自由であるため車椅子や電動スクーター移動でのスタンスもあった。肩関節症の当事者は自分の目線と対称な場所からスローイングするという工夫をしているなど特性に合わせたようなそれぞれの工夫をこらして競技に挑んでいた。
地面からダーツの高さを立ち投げルールと座り投げルールとでの切り替えができるボードも開発された。

ハーグで行われたダーツパラ大会 トニー・パス選手対ケヴィン・ストリンガー選手

Winmau社によるパラダーツ大会の決勝
BDOパラ世界マスターズ:フィル・リーズ選手 対 ケヴィン・ターナー選手

BDOパラ世界マスターズ
車椅子チャンピオン:ヴィンセント・ドーント選手対リチャード・グリーン選手


これらのダーツパラ大会は本当に圧巻試合。

そして私は以前音を聴いて距離を推測するという『盲』のプレイヤーとマッチしたことがあるので気になって調べてみたら、
イギリスから視覚障害/盲のダーツプレイにはこんなスタイルがあった。


こうしてダーツはいま、ただの射倖ではなくスポーツとして確立していく流れとなり、いろんな体や特性でも老若男女どんな人でも楽しめるような競技になろうとしつつある

ソフトダーツは更に壁を超えられる

私がソフトダーツを始めたのは20歳の頃、色んなスポーツジム(ネットカフェに附属している場合もある)やゲームセンターなどにも置かれるようになったので存在もどんどん身近になってきた。

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写真は主に愛用するソフトダーツバレル、バサラダーツの桜蛇・鈴木未来選手のジェダイト・村松治樹選手のライジングサン・故 橋本守容選手のジ・オーガ。これらはダーツの試合形式によって使い分けたりする。ダーツは個々の特性により、規定に則ったうえで自分で羽の形などをカスタマイズすることが出来る。私の場合は、指に力が偏るタイプでスロウがプッシュ系なので、軽いバレルには小さく尖った羽を付けている。写真には写っていないが、車椅子の高さに座ってプレイするルールの時は、スティールダーツとは高さが異なるためHarrowsのアサシンで浮遊力を上げるようなカスタマイズをする。

ソフトダーツは、スティール・ティップ・ダーツよりも軽くて、ボードも大きくできており、スティール・ティップ・ダーツとは異なり針が刺さらなくてもボードが反応すれば得点にすることが出来るようになったので、脳性麻痺などの影響で指や手にうまく力を入れることができないプレイヤーでもその障壁を解消できた。他には、ソフトダーツは電子機器を使うことになり、計算障害に悩んでいる人も手軽に楽しめるようになるほか、ノービスとプロの差があったときのハンディキャップも自動で設定できるようになる機能も実装された。視覚障害/盲であるプレイヤーがスティール・ティップ・ダーツでは音で距離を推測するというものが当初ソフトダーツではできなくなったと思われたが、最近は立体音声機能や的の位置と点数をコールしてくれる機種も登場しておりオーディオの手がかりで盤面を把握する、という手段がソフトダーツにも使えるようになった。
ここまでくると、ダーツはオリンピックやパラリンピックに実装される正式競技としてふさわしいのを超えて、障害等関係なしにオリンピックとパラリンピックを混合したようなバリアフリーな世界大会が開かれる場合に最初の競技として採用されるのではないか、という期待をしている。

パラ枠でなくても、心の問題と障害をカミングアウトしたダーツプレイヤー

以前、イギリスの左投げのプロダーツプレイヤー「ザ・マシン」ことJames Wade選手がダーツマガジンとガーディアンにて双極性障害(躁鬱病)と発達障害のカテゴリである注意欠如多動症(AD/HD)をカミングアウトしていた。ウェイド選手は、自身の双極性障害のことを「天使と悪魔みたいな感じかな」という表現を用いていた。ダーツは精神力や安定さを試されるスポーツでもあるというだけに、安定しないという難しさをスポーツが緩和してくれるようにするその心の問題に対する癒やしや薬を使わない治療方法にもなっているのでは、ということがわかった。
ウェイド選手の事を同じくダーツ同好の友人に訊いてみたら、彼はずっと注意欠如多動症から派生した「厄介者に見られた、否定される、馬鹿扱いされた、関係がうまく行かない」などといった辛い記憶を癒やすためにダーツに居場所を求めてきたら、やっと大きく褒められたことがあった、というのがきっかけでダーツを始め、現在はイギリスで左投げのプレイヤーで一二を争うようなプレイヤーにまで上り詰めることができた、という経緯を話してくれた。
改めて映像を見たところ、あの難しい「1本目をダブルエリアに入れてから最後のBullまで、501点丁度をノーミスで最低本数の9本でフィニッシュする」という神業を決めていた
私がパラ枠でスティールをやっている理由が自律神経による先天性の機能の障害であるが、それ以外には広汎性発達障害(アスペルガー症候群タイプ)をカミングアウトしていて、その関係でウェイド選手がずっと自ら目標を持ってスポーツに挑んでいること、失敗してしまったときに懺悔をしっかりしていることなど、色々彼から学んでいくことがあり、勇気づけられている。

このように、ダーツは見える障害だけではなく、心の問題に関する障害や見えない障害に対しても優しくなってくる競技になっていることを実感している。

参考:James Wade選手が心の問題をカミングアウトしている事に関する記事(ガーディアン・英語)


(追記 2020/08/30)
 なんと、昨年度はアジアから初めてパラダーツ世界選手権(ハードダーツ)で優勝者が出ました。オランダパラダーツオープン選手権を勝ち取ったのは、韓国のチョ・グァンヒ(趙光熙 Hangul:조광희)選手です。ギラン・バレー症候群という全身に麻痺や脱力などをきたす神経障害の一種であることをカミングアウトしており、それにより韓国の制度で「二級障碍」に該当する当事者です。
 ソフトダーツ界でも彼は活躍されており、パーフェクト韓国での年間累計タイトル首位者獲得など、障がいの壁をこえることを証明すると言えるような功績を残しています。
 村松治樹選手、小野恵太選手、鈴木未来選手、森田真結子選手などが所属しているTarget所属で、彼のモデルフライトもあります。

(オランダパラダーツオープン 決勝戦)


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