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総合診療x海外のキャリア 大学院編vol.1

専攻医のみなさん、こんにちは!
専攻医部会キャリア支援部門が今回から3回にわたってお送りする
「総合診療x海外のキャリア 大学院編」
記念すべき第1回はこちらの先生です。

中村琢弥(なかむらたくや)先生
Johns Hopkins大学(アメリカ) 公衆衛生大学院 修士課程 オンライン

インタビュー動画はこちら!
https://youtu.be/tk48h58mpaI?feature=shared


Q. 大学院進学を考えている人にMessage

フルタイムで働きながらのオンライン大学院はかなり忙しいと思う。大学院の課題もかなり頑張らないといけない。しかし、そこにかけた時間・労力の先にいいものが待っていると思う。無事に大学院を終えられたが、その時頑張ったことが今、非常に生きていると思う。


  〈略歴〉
2007年 滋賀医科大学医学部卒業
2007-2009年 京都民医連中央病院 初期研修プログラム 修了
2009-2012年 京都家庭医療学センター 家庭医療/総合診療後期研修プログラム 修了
        京都民医連中央病院 総合診療科 チーフレジデント
2012-2014年 北海道家庭医療学センター 家庭医療学フェローシップ 修了
        更別村国民健康保険診療所 副所長として勤務
2014年- 弓削メディカルクリニック滋賀家庭医療学センター教育部門担当指導医


Q. 大学院進学に興味を持ったきっかけ

とその時期について、どうして海外にしたか教えてください。

北海道家庭医療学センターでフェローをしている時に、もう少し深く修める部分が欲しいな、という思いを深めた。

Q. 大学院時代の働き方について

周りに臨床しながら大学院に行っているロールモデルがいなかった。妻もフルタイムで保健師として働きたいと言っていたので、子育てとキャリアの両立について、をポイントにオンラインのコースをいくつか比較した。ちゃんとしたコースはちゃんと忙しいため、職場とは予め働き方について相談していた。
Johns Hopkinsはオンラインの大学院としては最大手だし時間もかかるだろうと予想していた。時差があるので、早朝や夜中の、授業が行われる時間帯を避けて勤務のシフトを組んだり。業務の調整には職場の協力が不可欠だった。

Q. 大学院進学がいまの臨床に活きていると感じる瞬間は?

大学院に入った後半にCOVID-19の流行が世界で始まった。ちょうど公衆衛生の得意分野である感染対策が急務だった。竜王町の感染対策チームの一員として、まさに現場で学んだことを実践することができた。それもあってか、竜王町はワクチンやCOVID-19対策に先進的に取り組んだ地域であったと思う。

Q. 大学院の選び方

候補は医学教育・家庭医療学・公衆衛生だったが、いずれにも学問的には等しく興味があった。それぞれ、候補の大学を決めており、条件に合うかどうかで決めた。お金も時間もかなりかかるため、特に家族がいる場合はその理解が得られるかが最重要事項だった。相手のキャリアも尊重したかったので、自分も家庭にコミットする時間を作る、など。

Q. フルタイムの大学院とオンラインの大学院

ちょうど第2子が生まれそうなタイミングだったので、家族を連れて海外に行くことは考えていなかった。以前単身赴任をした経験があって、これはあんまり良くないなと思って。家庭を一人で離れることは考えていなかった。1年でやろうと思うと現地に行くのが効率がいいと思うが、オンラインならどれだけ大学院にコミットするかを自分で決めることができる。オンラインなら、Johns Hopkinsは1年のうち1〜2週間現地に行けばいい。

Q. 大学院期間中の具体的なスケジュールは?

20くらいのコースが横並びで開講していて、その中から選ぶことができるようになっている。予定表を見て、授業を取りやすい時間帯を選べた。興味があるものでも時間的に難しいものがあったりしたが、基本的にはニーズに合うものを色々選べた。
オンライン授業で拘束されていたのは主に早朝と夜中で、日中は臨床をしていた。Johns Hopkinsは授業より課題の方がハードだった。実際にあった課題の例としては、自分の地域を歩いて、その中で生活上の環境問題になっていそうなsnapshotをとってくる。授業のメンバーにその内容について説明するレポートを書いて、それがいかに健康上の問題点になっているのかというものだった。自分が住んでいる町を違う角度で見るのは貴重な経験だった。真剣に学びたい生徒と、一流の講師が揃っていたのでやりがいがあった。

Q. 質のいい大学院コースの選び方

ホームページなどで下調べをして、実際にJohns Hopkinsの大学院に行った人にインタビューをした。検索して略歴にJohns Hopkinsがある人に連絡を取った。それはとてもしてよかったと思う。ホームページに書いてないような、コースの特徴や情報がわかる。ホームページに載っている情報とのギャップに驚かされたこともあった。インタビューをして正解だった。

Q. 費用は?

具体的にかかる費用や、単位を落とした時にどれぐらいの金額になるかを事前に調べるのは正直難しかった。授業を受けるごとにお金がかかるシステムなので、金額分勉強しなきゃって気持ちになる。家族に、「単位を落としてはいけない」と念を押された。大学生の時よりプレッシャーがあった。見える形で金額が動くので、家庭を抱えた身なので、本当に身を削る感覚があった。1年あたり100万円以上はかかるが、どれだけ単位をとるかで金額は変わる。

Q. 大学院入学に必要な英語力は?

必要な英語力は大学院ごとに設定されている。当時Johns Hopkinsは日本人向けの特別プログラムが開講されていたこともあり、英語の能力評価は緩和されていたため、ある程度ゆるくなっていて入れた。IELTSで言うと7.0程度が一般的だが、そこまで必要とされない場合もある。

Q. 海外留学のタイミングは?

海外で出産やライフイベントを覚悟する、つまりどっぷり滞在する覚悟ならいつでもいいと思う。勉強してすぐ戻ってくるつもりなら、ライフイベントのずらし方を考える。

オンラインの大学院は女性にも都合がいい。オンオフをつけながら、長い期間をかけて過ごせる。


Q. 修士論文はどんなものを書いたのか?

自分のクリニックスタッフや協働する地域職員とで構成された在宅チームの歴史と活動、疫学情報を書いた。自分の活動の間に、勤務している地域が滋賀県における自宅での死亡率において一位を達成でき、それらを描いた論文となった。

Q. 卒業までの難しさ

候補になっていた他の大学は、ダンディー大学(医学教育)、ウェスタンオンタリオ大学(家庭医療)だった。学校によってはオンラインでの卒業率が低いところがあったり、現地に行かないといけない期間が長いものもある。

基本的には入学は簡単だが卒業が難しいところが多い。オンラインの大学院は、モチベーション、入学したけど家庭の事情がかわった、費用が払えなくなるなどの理由でドロップアウトする人もいて、卒業まで辿り着けないことも多い。

Johns Hopkinsはオンラインの卒業生と現地の卒業生の質が変わらず、現地の方がややオンラインより高いが、全体的に卒業率が高いことが決め手となった。現地にほぼ行かなくていいスタイルのところを選んだが、コロナ禍のため卒業式は行けなかった。帽子を投げる卒業式ができなかった…

いかがでしたでしょうか?
海外の大学院に興味を持たれた方はこのシリーズの続きをお楽しみに!

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