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総合診療x海外のキャリア 大学院編vol.2

専攻医のみなさん、こんにちは!
専攻医部会キャリア支援部門が全3回にわたってお送りする
「総合診療x海外のキャリア 大学院編」
前回第1回の投稿は見ていただけましたか?第2回はこちらの先生です。
インタビューの動画はこちら!
https://youtu.be/42U-OuMX6dQ?feature=shared

 
加藤光樹(かとうこうき)先生
The University of Edinburgh (イギリス) 家庭医療学修士課程 オンライン
https://www.ed.ac.uk/


Q. 大学院進学を考えている人にMessage

研究は本来的には制作や臨床に影響を及ぼすものだが、家庭医療に関しては、家庭医療学の研究を通して自分のケアが変わるかもしれないと思う。海外の家庭医療学の留学はそういう意味でおすすめしたい。その方法の一つとして大学院進学を考えてもらえたらと思う。

〈略歴〉
北海道出身。2006年帝京大学医学部卒業。室蘭市日鋼記念病院にて初期研修、北海道家庭医療学センターにて後期研修・フェローシップ修了。2015年よりまどかファミリークリニックで勤務。家庭医療専門医・指導医、日本在宅医療連合学会認定専門医・指導医、医療経営・管理学修士(九州大学)、家庭医療学修士課程卒業(エジンバラ大学)。
第11回 プライマリ・ケア連合学会学術大会 Young Investigator Award 受賞
2021年Journal of General and Family Medicine優秀論文賞受賞。

Q. 大学院進学に興味を持ったきっかけと時期について、どうして海外にしたか

実務に役立つ内容を求めて九州大学の医療経営・管理学を学んだが、そこで研究に初めて触れ、研究にも興味を持った。英語は得意ではなかったので海外の道はあまり考えていなかった。論文の査読をする際に英語に困ったことがあった。
2018年にHarvard Medical Schoolの研究入門コースが沖縄で開催された。そこで実践しなければ、と思って英語の勉強も開始した。博士課程を考慮した時に、学問としての家庭医療を指導してくれるところが当時は見当たらなかった。家庭医療学を教えているところを探して、カナダのウェスタン大学、スコットランドのエジンバラ大学を候補にした。年2週間現地へ行くのは院長やりながらはむずかしいというのと、学費が高かったため、エジンバラを選択した。

Q.大学院時代の働き方について

8週間で1モジュールになっていて、それをクリアしていって進級できるシステムだった。年間でこなす数が決まっていて、それが単位になる。ディスカッションボードというシステムを使って、事例を元に議論をした。誰かが書き込んだことにさらに書き込む形で議論する。エッセイをパスしていかないと進級できないが、その時間を作るのが大変だった。ネイティブと比較すると英語での課題作成は時間がかかると感じた。土日などの隙間時間をうまく使った。1日1時間半は大学院に使っていたと思う。

Q. 大学院進学がいまの臨床に活きていると感じる瞬間は?

臓器別専門医に比べて、家庭医は患者のケアをするときに、自分がどんな人間かわかっているかどうか?特定の環境に置かれた人間の体験とかを知ることが、患者ケアに影響すると思う。その表現を学んだと思う。
具体的には、検査をしても異常はないが、疼痛があるひとの症例。終始の間も、今もずっと考えている。最初は力になれていないと思っていたが、その人が求めているものや、自分が感じていることを
その人が求めているものは、痛みが取れているか取れていないか以外でも考えたりできるようになった。修士で勉強したことの影響はあると思う。

Q. なぜこのタイミングで大学院に行くことを決めたのか?

Harvard Medical Schoolの研究入門コースに行って、英語の勉強をしたいと思ったことがきっかけだった。ウォーリック大学の糖尿病のDiplomaの1年のオンラインコースをやったので、大学院に行くってこんな感じかなとイメージがついた。周りにエジンバラ大学に行った経験のある先生が何人かいたので、その人たちに体験談を聞かせてもらって大学院をより身近に感じた。もともと自分が大学院に入れるとはあまり思っていなかった。

Q. 大学院入学に試験はあるのか?

エジンバラ大学は英語能力の試験を受けなければならなかった。対策期間は3ヶ月くらいだった。
ウォーリック大学のマスターもおすすめされたが、もともと家庭医療学が勉強したいと思っていた。Diplomaでエッセイをめちゃくちゃ書いてそれで英語は鍛えられた。

Q. Diplomaとかのプレ大学院体験をどう探した?

ほとんどめぐりあわせ。Harvardのコースを受けた頃は後輩の論文指導や論文の査読に行き詰まっていた。もうちょっと研究全般の勉強をしておきたいと思っていた時に、上司にオンラインのコースの募集のメールがきて、「こんなコースあるけどどうだ?」と聞かれた。糖尿病のdiplomaはオンラインで学べるもので、家庭医療領域で広げていきたいという話が出ていた時に、モニターを募集していて、やらせてもらった。タイミングよく声をかけてもらえたと思う。

Q. 大学院入学の英語以外の審査は?

基本は書類(志望理由書、推薦状、大学と大学院の成績)と英語試験だけ。他の人にきいても英語基準が難しいようだった。IELTS 6.5ぐらいで修士課程は大体入れる。

Q. 大学院の間、現地には行ったか?

エジンバラ大学では現地のサマースクールがあるが、参加は必須ではない。4〜5日間のサマースクールをコロナの間はオンラインで開催していた、その後は現地開催もあったが、結局伊一度も行かなかった。

Q. もし院長じゃなければ現地にいった?

何も制約がなければ行ってみたかったが、妻子のことを考えると、やはり選ばなかったと思う。学位や研究をしたからといって、職位がかわるわけではないので、誰かに「大学院に行くことは仕事に必要なんですか?」と聞かれたときに必要性を語れないと思って、オンラインを選んだ。

Q. どうやって卒業までのモチベーションの維持をしたのか?

1年でCertificate、2年でDiploma、3年でMasterの称号がつく。同期は数人脱落していた。
モチベーションの維持は…難しい。自分で選んでやっていることだったので、応援してもらうことを期待することは難しいと思う。だが、進むたびに新しいものが見えている、成長しているという感じが自分にとっては大事だったと思う。中でも新年度開始の時期の違いで、4月に大量の課題がでた時は辛かった。
チュートリアル、というものが週1回あったが、本当に忙しい時はそれに参加できなかった。普段の仕事とのバランスをなんとか保っていた。アサインメント(課題)を合格点でパスするのが要件だった。

Q. 海外や大学院にタイミングをどう思う?

行く機会があったら早い方がいいと思う。専攻医を終えた時点では、もうひと一通りの家庭医療の現場をみていると思う。学びを吸収するために得る経験は済ませている状態。
フレッシュな視点のうちに行くのも大事だし、早い段階で大学院での学びを得た方が、後に活かせる時間が長いと思う。

Q. 家庭医療学、医学教育、公衆衛生の中で家庭医療学を選んだ理由は?

家庭医療学という学問を教えてもらってない、と思った。北海道家庭医療学センターで家庭医療学は学んだけど、学び続けているのか、と言われると、学んでいるつもりになっている気がしていた。症例を振り返って意味づけするのって一人だと難しい。院長とかになるとフィードバックをくれる人も減る。家庭医療に関して、成長していけているのか、と悩んだ。その場のやりとりとかは問題なくできるけど、少しでもよいケアをしたい、と思った時に家庭医療学をちゃんと勉強したいと思った。博士過程とか、論文を書くことが学んだ、ということなのか。最終的には論文を書くより「いいケアができる」ようになりたいと思った。公衆衛生を学べばシステムがわかるようになるからいいかもしれないが、最短距離なら家庭医療学だろうと思った。
 

Q. 学費はどのくらいかかったのか?

最初は年間80万円くらいで、年次が上がると少しずつ増える。イギリスは海外からの入学者の学費が、海外の家庭医療を発展させるためということで、低めに設定されている。ウエスタン大学は終了までに500万円ぐらいで、2週間/年は現地に行く必要があった。

いかがでしたでしょうか?
海外の大学院に興味を持たれた方はこのシリーズの続きをお楽しみに!



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