過去 (6)

中学生になったら絶対にいじめられないと決意を新たに入学したはずだった。友達を作ることに必死だった。でもクラスの子の反応がおかしい。ある女子が言ってきた。「小学生の時いじめられてたんだって?」私は言葉が出なかった。驚いている私に彼女は話を続ける。「山本菌なんでしょ?」何も答えれずただ苦笑いしかできなかった。

私が入学した中学校は3つの小学校が集まるマンモス校。同じ小学校の子が色んな子達に私のことを言っているようだった。悲しかった。でも諦めたくはなかった。しかし、私のことはあっという間に他のクラス全員に広まり、またも汚い者扱いされた。子供ってやっぱり残酷だ。同じクラスに私と同じようにいじめられている女の子がいた。その子もまた、小学生の時からいじめられていたようだった。彼女はいじめられてもニコニコ笑っていた。聞いてみると既に諦めて開き直っていた。いつもパシリに使われて悪口を言われ、それでもへこたれず、何の部活にしようか考えているようだった。

入学して夏が過ぎた頃、母さんから一大決心を聞いた。父親と離婚をするために家を出ると。私は驚かない。やっと決意したんだという思いしかなかった。しかしあの父親と簡単に離婚できるはずがない。話を聞くと、父親にも誰にも言わずタクシーに詰めるだけの荷物を入れシェルターみたいな所に行くというのだ。祖父母にも誰にも言えない。知ってるのは中学校だけ。私は慌てて唯一、仲の良かったゆいにだけは絶対に秘密だと言って伝えた。彼女は驚いていた。ある日突然居なくなるからだ。でも必ず落ち着いたら連絡するからと!ずっと友達だ!と2人で約束をした。

決行日、タクシーを2台よび1台は母さんと妹2人、もう一台は私1人。服や勉強道具など詰めれるだけタクシーに乗せ父親が帰る前に出発した。

しかし出発した直後、虫の知らせとはこういうことをいうのか?いつもよりも早く帰宅しようとして運転している父親とすれ違った。しばらくすると、タクシーの無線が慌ただしい。父親だ!○○○から出たタクシーはどこに向かっているのかと聞く怒鳴り声とそれは言えないと断るタクシー会社の人。私は恥ずかしいのと申し訳なさでどうしたらいいのか分からなかったし、もし追っかけて来られたらどうしようかと不安でたまらなかった。

夜の雨の中1時間ほどで到着した。シェルターの方が運転手さんにお礼と絶対にここへきたことは内密でと念押ししている。とりあえず荷物を下ろし用意されていたレトルトのカレーライスを食べた。この味は今でも忘れないし、スーパーで見つけるとまるで昨日のことのように蘇ってくる。どうやらここは母子寮に入るまでの繋ぎの場所で安全を確保された場所だった。今思えば隣は警察署で何かあってもすぐに助けを求められるところだった。

ご飯を食べ終わると私だけ隣の施設に行かされ母さん達とは離れ離れにされた。何も悪いことをしてないのに?母子寮待ちなだけなのに?更生施設のようで私と先生と2人だけの生活が始まった。先生は交代制で毎日変わる。母さんとは非常階段からこっそり会うぐらいしかできず寂しいし、寝る部屋は私には広過ぎて何もない部屋。聞こえるのはパトカーのサイレンなど。しばらくは泣いて過ごすしかなく、先生も「ごめんね。決まりなの。」と言われた。毎日のご飯は警察官が食べる食堂に取りに行く。ご飯の時間が一番嫌いだった。おまわりさんの目が怖かったからだ。そりゃそうだよね悪い子が反省の為に入る施設だもん。

2週間が過ぎた。どうやら入居できる母子寮がみつかったようで施設ともさよならだ。でもちょうど慣れた頃だったのでちょっと寂しくもあった。

今度こそ母さんと一緒に過ごせる嬉しさとどこに行くのだろうかと楽しみだった。




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