【投資ノウハウ】下落相場を乗り切ろう セクターローテーションとベアファンド
2022年の株式相場は、大荒れの展開となっています。
6月10日時点の年初来リターン(ブルームバーグ参照)をみると、ダウ平均株価が-13.61%、S&P500が-18.16%、ナスダック総合に至っては-27.52%となっています。
米国の40年ぶりとなるインフレ高進、それにともなう米連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利の引き上げ、そしてロシアのウクライナ侵攻などが景気、そして株価に逆風をもたらしています。
ただ、景気も株価も、私の人生のようにいい時もあれば悪い時もあります。今回は、景気循環を考えながら、いまの局面ではどのような投資が有効なのか考えていきたいと思います。
セクターローテーション
景気には、大きく分けて4つの波、回復、好況、後退、不況があります。この4つの波が回復→好況→後退→不況→回復→好況→......と順番に訪れることを景気循環といいます。
この4つの波の長さは、長かったり短かったり、その時の状況により様々です。また、重なる期間もあり、教科書通りに綺麗に波が訪れるわけではありません。あくまで目安です。
ただ、船乗りがGPSや天体の計測などによって、現在地を把握し、気象状況や潮流を考慮しながら安全な航行を目指すように、投資をするときも景気動向、金利動向などを見ながら、相場の大局観を持つことが大切です。好況期には好況期の、不況期には不況期の投資の仕方があります。
景気動向を把握した上で、景気の局面変化ごとに、有望な業種に投資対象を切り替えていく投資戦略のことをセクターローテーションといいます。景気の波を、谷底に達した時をスタートとして、回復→好況→後退→不況とすると、それぞれの局面で高い投資成績を達成する業種には、一定のパターンが見られます。
景気後退期や不況期に強い業種
下のマトリクス表をご覧ください。これは、縦軸が景気の良し・悪し、横軸は金利の高い・低いを示し、景気循環(4つの波)と波ごとに一般的にパフォーマンスのいい業種を示しています。
いまの景気の位置ですが、米国が40年ぶりのインフレ水準となっており、FRBが利上げを実施していることから、このマトリクス表の右側に位置していることがわかります。そして、景気が好況か後退かですが、米国の4月の小売売上高をみると、自動車関係などの価格上昇にけん引され、小売売上高自体は増加していますが、増加率は低下しています。また、先日のウォルマート(WMT)やターゲット(TGT)の決算をみると、減益となっていたうえ、通期見通しを引き下げていました。これらから判断すると、景気は好況期→後退期に向かっている可能性もあります。
今後、景気後退期や不況期に入るとすれば、生活を維持するために必要な商品やサービスを扱う業種が注目されます。その代表格は、エネルギー関連の業種です。米国では自動車が足であり、また物流を考えてもエネルギーは必要不可欠です。銘柄としては、エクソン・モービル(XOM)やシェブロン(CVX)が挙げられます。
またガス・電力などを扱う公共株も注目されます。米国南東部で発電、電力卸売などの事業を展開するサザン(SO)やネクステラ・エナジー(NEE)などがその代表格と言っていいでしょう。
その他にも、AT&T(T)やベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)といった通信株や、ファイザー(PFE)、ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)、CVSヘルス(CVS)といったヘルスケア株のような生活により身近な業種や銘柄は物色の対象になりやすいです。マトリクス表で言えば、下半分の領域になります。
ベアファンド
最後に、仮に景気が悪くなり、相場が下がるなら、売ればいいという方にご紹介したいのが、ベアファンドです。
マーケットの世界では、強い相場(上昇)をブルといい、弱い相場(下落)をベアと呼びます。ブルは雄牛のことで、上昇相場をブルと言うのは、攻撃の際に角を上につきあげていることに由来します。ベアは熊のことで、熊が立って相手を攻撃する時に爪を上から下に振り下ろすのを株価下落に例えていると言われています。
ベアファンドとは、相場の下落局面で利益を取りに行くファンドです。投資対象としては、先物を利用し、相場が下がった時に1倍から3倍の利益が出るように先物を売り建てているファンドです。例えば、S&P500が下落すれば、その3倍の利益が出るように作られたベアファンド、Direxion S&P500ベア3倍(SPXS)などがこれに当たります。
ベアファンドは、単に相場の下落を利益に変えるだけでなく、すでに株を保有している場合、今後、相場が下げると予想した際に、ヘッジとして使うこともできます。投資を始めて間もない方には、あまり馴染みのない投資商品かもしれませんが、頭の片隅に入れておいた方がいいでしょう。
記事作成:2022年6月12日
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ライター:佐藤 隆司(プロフィールはこちら)
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