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米銀行破綻のゆくえとマーケットへの影響

この記事でわかること

・リーマンショックと違い、混乱は一時的か
・ファンドの破綻に注意
・お金は成長株に向かう
・金価格が金融不安の先行指標

 2023年3月、アメリカの地方銀行、シリコンバレー銀行(SVB)が経営破綻しました。リーマンショック以降、最大の銀行破綻と言われています。同じ時期にシグネチャー銀行も経営破綻、シルバーゲート銀行は任意清算、そして、スイスの2大金融機関の一つ、クレディ・スイスの経営危機(のち、UBSが買収で合意)など、金融不安が広がっています。

 今回は米銀行破綻に端を発した金融不安とマーケットへの影響を考えていきます。

リーマンショックとは違う

リーマンショックとは違う | PayPay証券
リーマンショックとは違う

 シリコンバレー銀行の破綻などを受けて、リーマンショックのような事態におちいるとの不安を抱いた方が多いと思います。しかし、その可能性は低いと考えています

 リーマンショックは、サブプライムローン問題という金融業界の構造的な問題だったのに対し、シリコンバレー銀行の破綻等、今回の金融不安は、各銀行の固有の問題と考えることができるからです。

 今回のシリコンバレー銀行の破綻は、簡単に言えば、預金を支払うための現金がなくなったためです。

 破綻の背景にあるのは、偏った顧客と偏った運用先です。
 シリコンバレー銀行の主な顧客は、ベンチャー企業です。ベンチャー企業は、信用力が低い上に、2022年からの急速な利上げにより資金調達が難しくなりました。このため、シリコンバレー銀行に預けてある預金を取り崩し始めました。

 シリコンバレー銀行は、顧客の預金を主に不動産担保証券(MBS)という債券で運用していました。不動産担保証券は、一般的に元金(元本)と利息の支払いが保証されることから比較的信用力の高い債券です。

 しかし、利上げにより金利は上昇(債券価格は下落)しました。顧客の預金引き出しに応じるため、不動産担保証券を売却しますが、買った値段より安く売却するので、いずれお金は底を付いてしまいます。これにより、預金者がお金を取り戻そうと行動し混乱をきたす現象「取り付け騒ぎ」に発展しました。

素早い当局の対応で危機は早期に鎮静化か

素早い当局の対応で危機は早期に鎮静化か | PayPay証券
素早い当局の対応で危機は早期に鎮静化か

 シリコンバレー銀行の破綻に対し、当局の行動は素早かったです。

 10日には当局の管理下に収め、12日には米財務省、米連邦準備制度理事会(FRB)、米連邦預金保険公社(FDIC)が、全預金の保護を発表しました。このことも、市場の混乱の鎮静化に役立つでしょう。

銀行破綻の次にくるものは

銀行破綻の次にくるものは | PayPay証券
銀行破綻の次にくるものは

 シリコンバレー銀行の破綻は、多くの市場にショックをもたらしました。その一つが、債券市場です。

 シリコンバレー銀行の破綻をきっかけに広がった金融不安は、お金をより安全な米国債に向かわせ、米債金利の急低下(価格は急上昇)に繋がりました

 FRBの大幅な利上げというトレンドに追随し米債先物を売っていたヘッジファンドなどのCTA(投資家から資金を預かり運用する会社、商品投資顧問業者)は、米債金利の急低下により歴史的な損失を被ったと言われています。

 大きな損失を被ったCTAが損失を補うため、手持ちの株や商品のポジションを解消することが予想されます。これが新たな売りに繋がる可能性があります。

お金はどこに向かう?

お金はどこに向かう? | PayPay証券
お金はどこに向かう?

 今回の金融不安の中、上昇しているものもあります。特に目立っているものは、ナスダック総合株価指数と金(ゴールド)です。

 ナスダック総合株価指数は、金利の低下を受けて、上昇しています。ナスダック総合株価指数の採用銘柄は、IT企業を中心に多くの成長株が含まれています。金利の低下は、成長株にとって好材料となります。
 今後、金利の低下傾向が強まるなら、成長株には追い風になりそうです。

 一方、金が買われているのは、金利の低下に加えて、実物資産への逃避があります。
 債券や株は、政府や企業、発行体の信用がなければ、ただの紙です。しかし、ゴールド(金)はそのもの自体に価値があります。金融不安により、実物資産であり、かつ換金性の高い金に資金が集まっているのでしょう。

 個人的には、ゴールド(金)価格(ドル建て)は、今回の金融不安の先行指標になると考えており、金の上昇が一服すれば、今回の金融不安も後退する可能性がありそうです。

記事作成日:2023年3月20日

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